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【2】聖女 うばわれる
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「ってか、前回のゴーシェが闇落ち早すぎただけだよね。
いきなり『僕は孤独だー』とか言い出したかと思ったら魔王化するんだもん。びっくりしたよ。
遅れてきた思春期だよね」
「ああっ! やめてくださいっ! やめてくださいっ!」
わたしのセリフにぬいぐるみが両手で耳を塞ぐ。……その姿だと、耳、無いけどな……。
「僕は言葉責めも大歓迎ですけれど、そういう精神を根本からえぐって生きる気力を奪っていく攻撃はお断りですっ!」
「ごめんごめん。また闇落ちしても困るから気をつけるね」
「ちょっとぉ!」
にやにやしながらからかえば、ぬいぐるみはじゃっかん涙目で抗議した。
それから頭に置かれた指をぎゅっと握って、ぽぽっと頬を染める。
「そ、そのぉ……またちゅっとしてもらえれば、僕もっとお役に立てるようになると思うんですけれど」
え。
「いやですけど。」
「な、なんでですか!? なんでですか!」
「だって、呪いが解ける訳じゃなくて、一時的に戻るだけみたいじゃない。ぬいぐるみとして面倒みてあげるから、根本的に呪いを解いてくれる『真実の愛のキス』をしてくれる人をみつけなさい」
その言葉に、ぬいぐるみは雷に打たれたようにその身を震わせた。
「ひ、ひどいですっ! 僕はこんなにルチルさんをお慕いしているのに、言うに事書いて『他の人に愛されろ』って!」
「い、いやだってさ……」
「僕、努力します! あなたに愛されるようにがんばりますから!」
わたしの手首にひしっと抱きついて、フェルトの目をうるうるさせるぬいぐるみ。
ぐ……っ!
こういう時に人形ってずるい……!
「というか……封印される前にゴーシェとそういう雰囲気だった事って無かったと思うんだけど……」
「そ、それはそのぉ……。
僕が魔王の魂を目覚めさせた時に、ルチルさん速攻で顔面に跳び蹴り入れてきたじゃないですか」
「え、あ、うん……。そ、そんな事もあったかもしんない」
「あの靴の裏に、僕は初めて人の愛を感じたんです!」
「おかしいよ! お前はよ!」
握られていた手を引っこ抜いて、思わずわたしは叫んだ。
しかしぬいぐるみは怯まない。
「さらにそのあとの頬をとらえた拳で、僕は完全に恋に落ちてしまったんです!」
「ヘンタイの快楽ぅ! それはぁ!」
苦虫を噛み潰した顔になってしまう。
どん引きです……魔王サマ……。
「もちろん愛していただければ僥倖ですが、嫌われても罵られても僕は幸せですので」
ゾッとする告白を笑顔でするんじゃないよ……。
と、その時である。
「――お前らぁ! 神聖な御堂でイチャついてんじゃねーぞ!」
背後の扉がばーんっと開いたかと思うと、二十歳ほどの青年が顔を覗かせた。
いきなり『僕は孤独だー』とか言い出したかと思ったら魔王化するんだもん。びっくりしたよ。
遅れてきた思春期だよね」
「ああっ! やめてくださいっ! やめてくださいっ!」
わたしのセリフにぬいぐるみが両手で耳を塞ぐ。……その姿だと、耳、無いけどな……。
「僕は言葉責めも大歓迎ですけれど、そういう精神を根本からえぐって生きる気力を奪っていく攻撃はお断りですっ!」
「ごめんごめん。また闇落ちしても困るから気をつけるね」
「ちょっとぉ!」
にやにやしながらからかえば、ぬいぐるみはじゃっかん涙目で抗議した。
それから頭に置かれた指をぎゅっと握って、ぽぽっと頬を染める。
「そ、そのぉ……またちゅっとしてもらえれば、僕もっとお役に立てるようになると思うんですけれど」
え。
「いやですけど。」
「な、なんでですか!? なんでですか!」
「だって、呪いが解ける訳じゃなくて、一時的に戻るだけみたいじゃない。ぬいぐるみとして面倒みてあげるから、根本的に呪いを解いてくれる『真実の愛のキス』をしてくれる人をみつけなさい」
その言葉に、ぬいぐるみは雷に打たれたようにその身を震わせた。
「ひ、ひどいですっ! 僕はこんなにルチルさんをお慕いしているのに、言うに事書いて『他の人に愛されろ』って!」
「い、いやだってさ……」
「僕、努力します! あなたに愛されるようにがんばりますから!」
わたしの手首にひしっと抱きついて、フェルトの目をうるうるさせるぬいぐるみ。
ぐ……っ!
こういう時に人形ってずるい……!
「というか……封印される前にゴーシェとそういう雰囲気だった事って無かったと思うんだけど……」
「そ、それはそのぉ……。
僕が魔王の魂を目覚めさせた時に、ルチルさん速攻で顔面に跳び蹴り入れてきたじゃないですか」
「え、あ、うん……。そ、そんな事もあったかもしんない」
「あの靴の裏に、僕は初めて人の愛を感じたんです!」
「おかしいよ! お前はよ!」
握られていた手を引っこ抜いて、思わずわたしは叫んだ。
しかしぬいぐるみは怯まない。
「さらにそのあとの頬をとらえた拳で、僕は完全に恋に落ちてしまったんです!」
「ヘンタイの快楽ぅ! それはぁ!」
苦虫を噛み潰した顔になってしまう。
どん引きです……魔王サマ……。
「もちろん愛していただければ僥倖ですが、嫌われても罵られても僕は幸せですので」
ゾッとする告白を笑顔でするんじゃないよ……。
と、その時である。
「――お前らぁ! 神聖な御堂でイチャついてんじゃねーぞ!」
背後の扉がばーんっと開いたかと思うと、二十歳ほどの青年が顔を覗かせた。
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