38 / 54
【7】聖女 家を借りる
5
しおりを挟む
件の家は、町の外れにある『連理の森』と『惑いの森』の、まさに境界線上にあった。
二つの森の間には『羽衣川』と呼ばれる、幅三メートルほどの緩やかな流れの小川があり。その上にはアーチ状の小さな木の橋が架かっていた。
「あの『境橋』を越えると『惑いの森』よ。気をつけてね」
アーチ橋を指さしてモルガナさんが言う。
橋のたもとには、木製の立て看板があった。おそらく【『惑いの森』へ立ち入るべからず】と注意書きがされていたのであろう。しかし長年風雨に晒された結果、最早その役目を果たしてはいなかった。
小川の手前、左手に、森と一体化しつつあるぼろぼろの家があった。
壁には蔦が生い茂り、屋根には苔が生えている。さらに奇跡的な偶然で雨樋や窓枠に根を下ろした雑草が、小さな黄色い花と共にぴょこぴょこ顔を出していた。
家の周りには、前世は柵だったと思われる木片が数枚残っている。
どこからが森でどこからが庭なのか区別が付かない。
そうモルガナさんに告げると、彼女は肩をすくめた。
「連理の森、全部よ」
「ぜんぶ!?」
「畑や牧場にしようにも、はぐれた魔物や『天使』が惑いの森からちょくちょく出てくるから、危なくって手つかずのまま放置されてるのよ。
もしここに住んで手を入れてくれるなら、森林レンジャーみたいな管理人として、町からお給料が出るわよ。まあ、微々たる物だけど」
それが言ってた「住んでもらうならこっちがお金を払う」って話しかぁ。
二つの森の間には『羽衣川』と呼ばれる、幅三メートルほどの緩やかな流れの小川があり。その上にはアーチ状の小さな木の橋が架かっていた。
「あの『境橋』を越えると『惑いの森』よ。気をつけてね」
アーチ橋を指さしてモルガナさんが言う。
橋のたもとには、木製の立て看板があった。おそらく【『惑いの森』へ立ち入るべからず】と注意書きがされていたのであろう。しかし長年風雨に晒された結果、最早その役目を果たしてはいなかった。
小川の手前、左手に、森と一体化しつつあるぼろぼろの家があった。
壁には蔦が生い茂り、屋根には苔が生えている。さらに奇跡的な偶然で雨樋や窓枠に根を下ろした雑草が、小さな黄色い花と共にぴょこぴょこ顔を出していた。
家の周りには、前世は柵だったと思われる木片が数枚残っている。
どこからが森でどこからが庭なのか区別が付かない。
そうモルガナさんに告げると、彼女は肩をすくめた。
「連理の森、全部よ」
「ぜんぶ!?」
「畑や牧場にしようにも、はぐれた魔物や『天使』が惑いの森からちょくちょく出てくるから、危なくって手つかずのまま放置されてるのよ。
もしここに住んで手を入れてくれるなら、森林レンジャーみたいな管理人として、町からお給料が出るわよ。まあ、微々たる物だけど」
それが言ってた「住んでもらうならこっちがお金を払う」って話しかぁ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる