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【8】聖女 家をリフォームする

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 う、あ、い、

「いいいきなりはやめてよっ! びびっくりするでしょっ!」

 ぐいっと彼の体を両手で押して、顔を背ける。
 カァァっと耳が熱くなっていくのが分かる。

 ううぅぁ……顔赤くなってない……!? 気付かれてないかな、これ――……。

 ちらりと彼の顔を盗み見ると、何故か相手は真顔だった。

 え……なんで、

「こわ……」

 思わず呟けば、ゴーシェは左手で自分の口を押さえばっと顔を逸らした。

「……す、すみません……! ……誘ってるのかと思った……」

 さそ……なん、

「さ、さそってないよ!?」
「分かってます! だからすみませんって!」

 言いつつ彼は、わたしの腰に回した手をぐっと自分の方に引き寄せる。

 え、え、ちょ、

「まってまって……! な、なんで――……、」
「なんでって……防御魔法一回使ったら無くなる程度の魔力供給だったでしょう」

 そ、それは……そうかも、だけど……。

「家も庭も整えるなら、せめてもう少し魔力を頂かなければ」

 にっこりと。
 紅い瞳が三日月形に歪む。

 う、あ……。

 直視できなくて目を逸らす。

「で、でも……ここ外だし……」
「……え? 外じゃなかったらシテいいんですか? もっと? いろいろと?」
「言ってない! そうじゃない!
 ……そうじゃないけど――……」

 ううぅぅ……

 胸の前で両手を握りしめる。
 わたしは覚悟を決めて目をぎゅっとつむった。
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