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【9】聖女 魔女になる

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 家が出来てから四日目の朝が来た。

 部屋の中には暮らしていくのに最低限必要な家具が運び込まれていた。具体的に言うと、ベットとテーブルにイスが二脚。それと小さな飾り棚が一つだ。

 キッチンには薬缶と、マグカップが二つ。ひとつには走るユニコーンが。もう一つには眠る黒ネコが描かれている。

 もっと色々と必要な物、欲しい物はあるのだがそろそろ手持ちが心許ない。

 大物の家具は質屋などで安価で手に入れたのだが――……、

「生活するってお金がかかるなぁ……」

 かまどに薪を入れて魔術で火を付ける。
 薪は一日がかりで周囲の森で手に入れた物だ。
 風波刃ウインド・カッターで木を切り倒して小さく割って、浮遊ホバリングを掛けて運び、一日熱風を当て続けて乾燥させた。

 ……もうしばらく風の魔術は使いたくない

 庭にウッド・ゴーレムの応用で薪棚も作った。そこにまだ大量にあるから、後二、三ヶ月は保つだろう。

「おはようございます……」

 目をこすりながらぽてぽてと、ぬいぐるみが起きてきた。

「おはようゴーシェ。お茶飲む?」
「いただきますぅ……」

 かまどの横に用意した水瓶から、片手鍋に水を汲む。
 水瓶の底には小さな宝珠オーブが沈んでいる。もともとはわたしが身につけていた七つの内の一つだ。

 宝珠オーブの魔力増幅の魔術式を、水生成に書き替えて使用している。これで、使った分だけ清水が湧き出る魔法の水瓶が出来上がった。

 井戸を掘るより簡単だったし、何よりわたし自身の魔力が魔王のせいでオーバーフロー気味だったから。
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