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【9】聖女 魔女になる
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家をリフォームしてもらった後、わたしはかたくなに魔力供給を拒否した。
……わたしの心臓がもう保たないと思ったから。
で、敷地に結界を張るのにチマチマ自分で魔術式を組んで、一日がかりで完成させたのだ。
でも、不可抗力とは言えゴーシェの魔力を奪ってしまったのは事実だし、
「ゴーシェにもなるだけ楽しく毎日を送って欲しいんだよ」
趣味だった魔道具の研究・開発が思うように出来ないというのは、なかなかにストレスだろう。
百年間のブランクを埋めて、早く現代の技術に追いつきたいだろうし……。
「え、じゃ、じゃぁ――……、」
ぬいぐるみがゴクリと唾を飲み込んでこちらににじり寄ってくる。
「お願いします……!」
「待って待って!」
それを片手で遮った。
「わ、わたしがするから、ゴーシェは何もしないで!」
そのセリフに、
「ええぇぇ!? そんなの……ほんとに!? いいんですか!? ありがとうございます! お願いします!」
ぬいぐるみは歓喜の声を上げると、テーブルの上に大の字になった。
あっれ~……? これなんか間違ったかな~……。
そうは思っても、もう後には引けない。
わたしは両手でぬいぐるみを抱き上げると、顔を近づけ――……、
「……目ぇ閉じて!!」
「あ。はい」
う゛う゛う゛……これは人形これは人形……。
恥ずかしくないっ……! 心臓、ドキドキするなっ……!
ばれないようにこっそり深呼吸。
水に潜る前のようにぎゅっと目をつむると、一気に顔にぬいぐるみを押しつけた。
……わたしの心臓がもう保たないと思ったから。
で、敷地に結界を張るのにチマチマ自分で魔術式を組んで、一日がかりで完成させたのだ。
でも、不可抗力とは言えゴーシェの魔力を奪ってしまったのは事実だし、
「ゴーシェにもなるだけ楽しく毎日を送って欲しいんだよ」
趣味だった魔道具の研究・開発が思うように出来ないというのは、なかなかにストレスだろう。
百年間のブランクを埋めて、早く現代の技術に追いつきたいだろうし……。
「え、じゃ、じゃぁ――……、」
ぬいぐるみがゴクリと唾を飲み込んでこちらににじり寄ってくる。
「お願いします……!」
「待って待って!」
それを片手で遮った。
「わ、わたしがするから、ゴーシェは何もしないで!」
そのセリフに、
「ええぇぇ!? そんなの……ほんとに!? いいんですか!? ありがとうございます! お願いします!」
ぬいぐるみは歓喜の声を上げると、テーブルの上に大の字になった。
あっれ~……? これなんか間違ったかな~……。
そうは思っても、もう後には引けない。
わたしは両手でぬいぐるみを抱き上げると、顔を近づけ――……、
「……目ぇ閉じて!!」
「あ。はい」
う゛う゛う゛……これは人形これは人形……。
恥ずかしくないっ……! 心臓、ドキドキするなっ……!
ばれないようにこっそり深呼吸。
水に潜る前のようにぎゅっと目をつむると、一気に顔にぬいぐるみを押しつけた。
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