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【9】聖女 魔女になる

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「一昨日の晩、境界にあった廃屋に近づいた冒険者が、化け物みたいな声を聞いたって。同時にそれまで晴れてたのに空に雷鳴がとどろいたって。
 何でも『ダンジョンに潜ってた、たった一日の間に、それまで化け物屋敷みたいだった所が豪邸に変わってたんだー』って」

 いや、豪邸ではないだろう。

「で、改めて昨日の昼間見に行ったら、今度は家そのものが跡形もなく消えてたって。
 大方ルチルっちが何かしたんだろうとは思ったけど、『消えた』ってのはちょっと気になってさ。それで様子を見に来たんだよね。
 でも別に、消えてないじゃんねー。あ、様子はだいぶん変わってるけど」

 けらけら笑うジェイドの言葉に、わたしは頭を抱えた。

「まって。ちょっと説明させて欲しい……」

 そう言って彼を促し、三人で外に出る。

 四日前とは違い、家と庭の周りを、羽衣川から引いた水路がまるで堀のようにぐるっと囲んでいた。

「一昨日の晩不審者に――あ、その時は不審者だと思ったんだけど、とにかく知らない人にドアをガチャガチャされてさ」

 わたしの言葉に後ろでゴーシェがうんうんと頷く。

「びっくりしたし怖かったから、何とか追い払おうと思って、風の魔術で声変えて『出てけ~』ってやったんだよね。それでも出て行かなかったから、脅しで近くに雷の魔術を落した……」

 わたしが指さす先の地面には、まだ黒いコゲ後が残っていた。

「で、こんな人気ひとけのないところに急に家が出来たら、興味本位で覗きに来る人たちがいるかもしれないと思って、結界を張ったんだ」

 水路は、その結界の範囲を定めるのに使った。
 堀からこちら側は、完全にわたしのテリトリーだ。

「基本的には、わたしとゴーシェ以外は結界の中に入れないし、外からは見えもしない。
 例外はお友達登録した人――これは今のところジェイドとモルガナさんね。
 あと、命の危険を感じてる生き物」

 ……さすがに『朝起きたら結界のすぐ外で、冒険者が腹から血を流して死んでいた』みたいな状況になったら、寝覚めが悪そうだから。

「それと、結界の中で他の生き物に害意を抱いたら、その瞬間に結界の外に飛ばされる仕様になってるから、ウチでケンカはしないでね」
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