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眩しすぎて *sideラシェル①
お騒がせアリスが退学し、学園に平和が訪れた。
ラシェルはオズワルドを見習って、侯爵家のことや側近関係のこと以外ではルーシーと過ごすようにしていた。
学園生活も残り半年を切り、ルーシーと会おうと思ってすぐに会えるのは今だけだと思うと、すべてのことが眩しくて焦燥感を覚える。
ルーシーと過ごす日々は顔がにやけるほど気持ちが高揚し、一日が終わるとすぐに会いたくなって、次の日が待ち遠しい。自分でもびっくりするほど浮かれている。
いつもより授業が早く終わった放課後、誰にも邪魔をされない屋上にやってきていた。
ベンチに並び、木漏れ日を感じながら二人っきりの時間はかけがえのないものだ。
自分の手の中にすっぽり収まる、ルーシーの柔らかな手に指をしっかり絡めながら、ラシェルは小さなつむじを眺めた。
髪は肩下まで伸び、切るか伸ばすか迷っていると言っていたが、ルーシーを形成するもの、ルーシーがそう決めるのならどちらもきっといい。
「ラシェル様。そんなに見られると照れるのですが」
じっと見つめていると、うっすらそばかすが散っている頬をピンクに染めてルーシーが見上げてくる。
そのこげ茶の瞳に自分が映っているのを確認し、ラシェルは目を細め笑みを深めた。
「つむじが可愛いなって」
「……っ。今日はつむじですか? ラシェル様は毎日なにか褒めてくれますが、付き合っているからといって褒めなければならないわけではないですよ」
ルーシーが苦笑し、それから仕方がないと穏やかに笑みを浮かべる。
一つひとつ、自分のすることを受け入れてもらっていると思える彼女の表情に胸がきゅんとする。
ラシェルは、繋ぐことを許されている手の指に力を込めた。もっともっとルーシーのことを知りたい。
離されることがないと思えるほどの確かなものが欲しくて、許されることを確認しながら、少しずつできることを増やすことに余念がなかった。
「褒めるためではなくて、俺がそう思っているから口にしたまでだよ。ルーシーの一部だと思うとどれも可愛らしくて」
「うっ。なんでそんなにさらっと言えるんですか。ラシェル様の目は雲ってるんじゃないかってくらい、私がどう映っているのか疑問です」
ルーシーは照れながらも、ちらりと繋いでいる手ががっちり絡んでいることを確認し苦笑する。
二人きりになると少しでもくっついていたいラシェルの気持ちを理解し、好きなようにさせてくれている。
「見たままだよ」
「うーん。それが信用できないというか」
そこでルーシーはじっとラシェルを見つめ、小さく笑う。
光が差し込んだこげ茶の瞳には、慈しむような優しさが見える。
「信用?」
「どう見えるかは本人じゃないからわからないですが、私は客観的に自分の容姿を理解しているつもりなので、親しい人以外に褒められるのは慣れてなくてそわっとします」
ラシェルが過去遊んでいたことを口には出さないが、その事実が言葉の受け止め方を変えているのではと思うのは穿った見方ではないはずだ。
その上で、気遣われ、信用に結びつかない現状は歯がゆい。
あと、『親しい人』の中に、まだ自分が入れていないことが地味に傷つく。
身内込みの親しい人だというのはわかるし、自分たちの付き合いはまだ浅い。確かに自分たちはこれからなのだけれど、ならいつになったらルーシーにとっての親しい人の中に入れてもらえるのだろうか。
それを踏まえて、過去を知った上で受け入れてくれていることは奇跡だとさえ思っている。
だけど、ルーシーの許容は嬉しいのに、自分の過去を悔やんでも仕方がないのに悔やむ気持ちは一向に薄れず、どこか寂しさを勝手に感じてしまう。
――不甲斐ない。
ラシェルは痛む胸を無視して、それでもとルーシーをまじまじと見つめた。
自分が仕出かしたことも含めしんどいなと思うことはあるけれど、それ以上にルーシーがいることは心身ともに包み込むようなものは確かにあって、大事にしたいと思える存在が自分にいること自体かけがえのないものだ。
こんなことで一喜一憂するのではなく、もっとルーシーとの時間を大事にしたい。
許容されていること自体はやはり嬉しくて、早くルーシーが自分を好きになればいいのにと願わずにはいられない。
もっと、自分だけしか見ることのできない可愛い反応が見たい。
なにより、ルーシーを前にすると湧き上がる伝えたい思いがありすぎて黙っていられない。
「うーん。ルーシーが望むならそうしたいのだけど、女性をこんなに愛おしくて好きだと思うのが初めてで、さっきみたいに聞かれたら思ったことを言っちゃうし。これはルーシーが可愛いのも悪いんだと思う」
「……照れずに言わないでください。こっちが恥ずかしいです」
私は平凡だって自覚あるのに、とぶつぶつ言っているが、本人も自覚している通り、顔立ちは派手な部類ではない。
それでも、ラシェルにはルーシーだけが特別だ。
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