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第一部 第二章 ひっそり目立たずが目標です
三王子が揃いました②
しおりを挟む「なんでエリーの時にだけ壊れるということになるの? 直談判しても変わらないと思うけど。もし、エリーが下のクラスになるなら僕も一緒に行く」
ルイが嫌というわけじゃないけど、ルイも一緒にクラスを下げたら余計に目立ちそうである。
それはやめてほしい。
「なら、俺も」
私はぎょっと目を見開いた。
ルイは昔からの付き合いだからまだわかるが、第二王子まで参戦してくると話がさらに変わってくる。
「サミュエルは関係ないでしょう?」
「別にいいだろ。どこにいようがやることは変わらない。なら、ルイがいる教室のほうが楽しそうだ」
「はあ。サミュエルはそういうところあるよね」
ルイが代弁するように声を上げたが、最後は溜め息をつき諦めたような声を出した。
――ルイさんや、しょうがないねとばかりだけど、そもそも同行決定してませんからね?
思いつきもことごとく潰されていくような現状に、こっちが溜め息をつきたい気分だ。
もし、クラスを変わることができたとしてもこの二人がくっついてきたら、あまり変わらない気がする。
ルイは優しげな雰囲気ではあるが、決めたことには有言実行の人なのでやると言ったらやる。
実行されてしまった日には、王子二人を最高クラスから下げた我が儘令嬢のレッテルが貼られることになるだろう。
だろうではなくて、絶対、貼られる。
だって、ルイの父親はこの王立学園の最高責任者である。
王族という立場で魔法省のトップである彼の息子が、実力があるのに最高クラスではないなんて。
それこそ、将来ある王子を誑かしたと言って王族が怒ってくるかもしれない。誑かし罪でそれこそ悪役令嬢のできあがりだ。
主役から悪役令嬢に路線変更なんて、何もいいことがなさすぎる。
ぶるぶると首を振る。そんな自ら王家に絡むようなことは回避だ。そんな想像をして冷や汗たらたら、私は思いつきを断念することにした。
「ああ~、やっぱりここで頑張ることにします」
「それがいいと思うよ。上のクラスのほうが魔法の上達も早いと思うし」
――なら、なんで一緒に行こうとしたのよ!?
何だか弄ばれている感じがしてもやもやする。
柔らかな空気につい騙され流されてしまうが、ルイは頭がいい。きっとどう言えば私が撤回するのかわかっていたのだ。
「俺はお前らがいればどっちでもいい」
そして、こちらは素直というか、単純だ。
むしろ、そのわかりやすさはナイスである。そう思って内心でぐぅと親指を立てていたら、言葉に引っかかりを覚え、あれっと首を傾げた。
──んっ? お前ら?
いつのまにか私もカウントされていた。
驚きだ。なんてハイペース。
出会いは鬼ごっこから始まり、いつの間に懐に?
やっぱり、あれかな? 武道派だから汗を流した分だけ気持ちが繋がる的な?
よくわからないが、私が従兄弟のルイの友人ということと、謝罪する事態になってそれも水に流したことから、サミュエルの壁が取り払われたのかもしれない。
第二王子、やっぱり単純。……げふん。根はいい人そうだ。
いまいちサミュエルの基準が理解しにくいし、彼に忘れろとは言ったけれど、ちょっと魔法のこととか、生足とか、マズイところ見られているので友好的なのはありがたいと思っておく。
ただ、少しばかり心配になった。
「自分の進路は自分で決めないといけないんですよ?」
思わず、相手が高貴な方だというのも忘れて二人に告げてみる。
私は私の考えであれこれ発言しているのであって、それに付き合う義理は彼らにない。
むしろ、振り返らず輝かし意未来へ突っ走ってほしい。そう思って告げたが、返ってきた言葉は明快だ。
「当たり前じゃない」
「何を当然のことを」
いつもの爽やかな笑顔を向けるルイと、ふんと鼻をならしながらも真顔で頷くサミュエル。
本当に大丈夫かな? 迷いのない答えに返って彼らが心配だ。
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