詰みたくないので奮闘します~ひっそりしたいのに周囲が放っておいてくれません~

橋本彩里(Ayari)

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第一部 第五章 終わりの始まり

天使な双子②

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 シモンも弟たちが可愛いのか、ふっと小さく諦めたように息をつくと、身体の方向を動かして彼らを紹介してくれる。

「だからと言って……。まあ、来てしまったものは仕方がないですが。彼女は王立学園に通い同じクラスとなったエリザベス・テレゼア公爵令嬢です。エリザベス嬢。彼らは私の弟でジャックとエドガーです」

 ただの同級生。誰もあなたたちのお兄さんを獲ろうなんてしてないんだよーと安心させるために、私は微笑むと小さく会釈をした。
 年下の子がいるというだけで、気持ちはぐっとお姉さん気分で余裕が出る感じがする。

「エリザベス・テレゼアです。よろしくお願いします」
「ああ、あなたがエリザベス様ですね。ずっと気になっていたので、お会いできて嬉しいです」
「ジャックってば先に自ら名乗らないと。紹介があった通り、彼がジャックで、僕はエドガーと申します。よろしくお願いします」
「そうだったー。ジャックです。よろしくお願いします」

 ふわふわきらきらと、双子は同時ににこっと笑みを浮かべる。愛くるしい顔で人懐っこい微笑を向けられて、本来の目的を忘れそうだ。
 はぁぁぁーと見惚れてしまう。私にとって、この二人が王子たちの中で一番強敵かもしれない。可愛くお願いされたら断れる気がしない。

 今日ここへ来ることは、少しばかり憂鬱であった。
 王族のレベルを間近で知れるのはなかなかない機会で貴重だとは思うのだけど、何せ自分の魔力も知りたいと思われている中で見せるのはやはり大事だと感じてしまう。
 できることなら、今日は大雨が降るとかして延期や中止にならないかなって、昨晩は窓にぎっしりてるてる坊主を吊るしたくらいだった。

 けれども、その効果もなく、今朝は目を開けたと同時に降り注ぐ太陽の光が入ってきて、しばらく布団に潜り込んでふて寝したものだ。
 だけど、そんなに経たずして起こしにきたペイズリーに最後は無理矢理起こされ、しぶしぶベッドを出ることになった。
 それでも、しばらくお腹が痛い、頭が痛いとごねて何とかならないかと試みたが、ことごとくペイズリーに嘘を見破られ阻止された。

 そして、不審そうにてるてる坊主を見たペイズリーに改めてそれらを見ると、重大なことに気づき私はその場で崩れ落ちた。
 雨を降らすよう願うならば逆さに吊らさなければならないのに、普通に吊したのでまったく逆効果だった。
 うっかり晴天を願っていたことに、がっくりと肩を落としたのは言うまでもない。

 昨晩から今朝にかけてそんな往生際の悪いことをしていた私であるが、彼らも混ざるというのなら気持ちを入れ替え、お姉さんちょっと頑張ってみようかなとやる気が出てくる。
 ふふふっ、と笑む私の姿は華麗ではあるが、実際は下心でいっぱいであった。

 私のほうが双子より四つ上。姉に与えられるばかりの愛情が溜まりに溜まって、たまには愛でる立場になってみたい。
 物語や可愛いものを堪能したいのだ。そして、できたら彼らに少しでもよく思われて慕ってほしい。なーんて、よこしまな気持ちをしっかり芽生えさせている。

 癒やし歓迎。天使大歓迎~。
 これは転生を繰り返す私のご褒美だ。王子というフラグは心配であるが、この天使たちで多少は精神的にも緩和されるよ。やっほーい。

 確か、ジャックの魔法属性は土で、エドガーが緑だったはずだ。彼らが揃うと、王族の水、火、風、土、緑が揃うことになる。
 王族の魔力量は桁違いで魔法を扱うのが上手いと聞いている。
 見事にメインの属性がここにそろったので、私の知る以外に活用方法や合わせ方があれば知りたい。
 そういえば、ユーグの属性何なのだろうか。なんであれ、とても器用に使いそうである。

 ここまできたら、吸収すべきことは吸収しようと、いざという時に何がどう役立つかなんてわからないので、前向きに行こうと私は決めた。
 うんうんと一人で考え納得して、天使の存在に癒されながら魔力合わせに取り組む。
 友人であるルイとサミュエルがそれとなくサポートを入れてくれ、シモンとユーグの魔法もしっかり見ることができ、結果、有意義な時間となった。

 やっぱり、この国のトップに君臨する人たちだけあって、威力も精度も学園の中ではずば抜けていた。
 王子たちの魔法仕様はすでに確率されており、掛け合いかたもいろいろで勉強になった。ユーグも幼い頃からシモンとともにいるということだったので、どれもこれも高レベルだ。

 ちなみに、ユーグの魔法属性は火であった。
 これはちょっと意外。彼が仕えるシモンと同じ水か風のような気がしていたのだけど、サミュエルと同じだった。

 転生を繰り返してきたけれど、王族の魔法を間近で見ることはなかったのでどれも新鮮なことであった。
 魔法のさらなる可能性に胸を打たれながら魔力の放出を繰り返し、さらに精度を上げることもでき満足である。
 双子たちのおかげで、私は意気揚々とこの場を楽しんだ。


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