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第一部 第五章 終わりの始まり
side双子 いたずらな天使③
しおりを挟むこの初っ端のやり取りから、もしかしたら無駄になるかもと思いながらも双子は頑張った。
あれこれ虫や爬虫類を捕まえては見せてみたが、どれもこれも嫌がるどころかことごとく喜ばれる始末。
──一体、何に驚くんだ?
しかも、次はどんな? とばかりに期待のこもった眼差しで待たれる。
最後のほうは本来の目的も忘れて、どちらがエリザベスが驚くような生き物を見つけられるかの勝負になっていた。
生き物だ。もう、種類に限らずいくべきだと二人は駆けずり回った。
「はあ、はあっ」
「……疲れた」
ジャックとエドガーは息も切れ切れになり、ぐったりとそれぞれ捕まえてきたものをエリザベスに差し出した。
これならどうだとばかりに選んだ生き物は、この辺りにしか生息しないと言われる、キュウと呼ばれるやたらもふもふしたボールみたいなキュウと鳴くと生物と、リンリンと呼ばれるその名の通り、リンリンと鳴く羽がある生物である。
キュウはハムスターみたいで、リンリンは小鳥のようだけど、実際は何の生き物かは成長しないとわからない。
とにかく、その生物たちはすばしっこく、どちらも手の上に乗るくらいの小ささで捕まえるのに苦労した。その分、レアものだ。
これなら驚くだろうと、二人は期待のこもった眼差しを向けた。
すると、予想通りというか、それ以上の反応。
目の前でエリザベスの顔が見る見る蕩けていき、ぐいっと顔を近づけてふわふわっと微笑んだ。
その近さに、思わずぼっと二人同時に顔が赤くなる。
自分たちから仕掛けて近づくことはあっても、相手からは近づけさせたことがないため免疫がない。
自分たちが意図的に出す笑顔ではなく、心からのものだとわかるその蕩けた笑顔にすごく満足する。
あれっ、目的が変わってやしないかと思いながらも満たされた。
「「驚いた?」」
「うん。すっごくびっくりしました。とっても可愛いです。初めて見ました!」
触るかどうかを聞く前に、キュウはコロコロ転がり、リンリンはパタパタとエリザベスのもとへとまるで引き寄せられるように彼女の手の平と肩の上に乗った。
「くぅぅぅっ、可愛い~。どうしよう。可愛いですぅ。なんて可愛すぎる生き物なの!?」
興奮したように手と肩に乗ってきたキュウとリンリンを、エリザベスは指で優しく撫でまくる。
二匹は満足したように、キュウ、リンリンと甘えた声で鳴いた。
──面白くない。
その様子を二人は唖然としながら長め、同時にむっと眉間を寄せた。
捕獲するのにすごく苦労したのにとか、王族にしか懐かないと言われているのにとか、僕らでさえ面倒くさいなとばかりに捕まえられてやったんだぞと偉そうな態度をしていたのにとか、そういうのもあるが……。
ここで出会ってからずっと、エリザベスの瞳は自分たちをきらきらとした目で見ていたのに、今はその双眸は二匹に向かっている。
可愛いものが好きそうだから、嫌がるものではなくて気づかぬうちに可愛いものを見せて驚かせたいと思って捕まえたものを、興奮するように愛でているのが気に食わない。
その瞳は自分たちを見ていないとつまらない。そう思ってしまった。
ジャックとエドガーは視線を合わせると、小動物を愛でて自分達の様子に気づかないエリザベスの名前を同時に呼んでいた。
「「エリザベス」」
「丸っこいのがキュウ」
「小鳥のようなのはリンリン」
「「ここでしか生息していないとされる動物で、滅多に見れないものだよ」」
同時ににこっと笑って告げると、すぐにこちらに向けられ戻ってきた菫色の双眸に自分たちが映し出され満足する。
「まあ、そうなんですか!? そんな貴重な動物を捕まえることができるなんてさすがです。すごいですね! 私は今すごーく幸せです」
「エリザベスは可愛いものが好き?」
「はい。大好きです」
うんうん、と頷くエリザベス。
確かにカエルも愛でてはいたが、キュウとリンリンとの出会いは段違いで喜んでいるのがわかる。
「そう。なら良かった」
「頑張って捕まえた甲斐がありました」
双子はほくほくと顔を綻ばせた。
「二人ともありがとうございます。見せていただけてとっても嬉しいです」
「だって、エリザベスの喜ぶ顔が見たかったんだもの」
「そうだね。嬉しそうで良かったです。でも、二匹ばかり見るのではなくて僕たちも頑張ったと褒めてほしいな」
必殺、甘え光線を放ちながら同時にエリザベスを見ると、彼女は「はうっ」とわずかに後ろに仰け反り、続いてはんなりと花が咲き乱れるような笑顔を浮かべる。
白く細い腕が伸びて、柔らかな指が二人の頭の上に乗る。すっと髪をすくように優しく撫でられ、二人はこそばゆい思いで目を細めた。
だけど、二三回往復したところで止まる。
エリザベスが「すみません。失礼なことを」と慌てて手を引っ込めたので、二人して「「もっと」」とねだっていた。
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