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第二部 第四章 忍び寄る影
side双子王子 恐怖の夜④
しおりを挟むよくエリザベスの肩に乗って、どこに行くにもエリザベスがいるとついて回っていたリンリンもちょこっと頭に光の当たり具合で色が変わって見える綺麗な羽がついていた。
いきなり立派になりすぎて、鳴き声を聴かなかったらわからなかった。
「それで、こんな夜中にどうしたの? もしかして、ジャックのほうに行ったのはキュウ?」
尋ねると、こくんと頷くように頭を下げる。
なるほど。危害は加えられないようだけど、それぞれを見つけた自分たちのところに来たということは何か意味があるのだろう。
「じゃ」
これはいろいろ質問して何か要望あるのか聞かねばと口を開いたその時、リンリンは前に一歩近寄ってきて油断していたエドガーをツンツンとつつきだした。
そこに、隣からジャックが駆け込んでくる。
「エドガー。すっごいおかしなことになってる。助けて」
「わかってる! えっ? それがキュウ?」
地味な痛さに涙目になりながら、侵入者に目を見開く。
こちらも想像以上の成長具合だ。成長というよりは個体が違うと言われるほうが納得する。
「そうそう。尻尾とかおかしいよね? キュウって言われても、はっ? って感じだよね。もう僕一人では処理仕切れない」
「まあ、信じられない変化だね。大きさもだけど」
ジャックが慌てるのもわかる。
「そうなんだよ。そっちはもしかしてリンリン?」
「そう。こっちもえらく大きくなったみたいで」
「へぇー」
「というか、なんで、うわっ。ちょっ、痛いって」
白虎に追いかけられたジャックが助けを求めるようにエドガーを見ながら話しかけてくるが、こちらはこちらでつつかれだしたところだ。
後ろの白虎。あれがキュウ? と似ても似つかなにキュウの姿を思い浮かべながら、迫り来る彼らの気迫に押され思わずエドガーはジャックたちから逃げる。
すると、ツンツンとリンリンが追いかけてくる。
「うぎゃぁぁぁー、こっちくるなー」
「はぁ? なんで追いかけてくるの? 痛い、痛い痛い」
テシテシテシテシ
ツンツンツンツン
しばらく部屋で追いかけっこをしていたが、追いかけてはくるがツンツンとテシテシ以外の危害は加えないようなので、二人は視線を合わせ意を決してその場に停止した。
すでに地味な被害は受けているが、危害ではないはずだ。そう信じて向き合う。
「もう、怖いからやめて。話があるなら聞くから」
「そうだよ。痛いしやめて。何か言いたいことがあるんだろう?」
そう告げると、キュウは逃げるなと二人に尻尾を巻きつけて、リンリンが後ろを向いてふりふりとお尻を振りだした。
「…………」
「…………」
今度は尻ダンス。
何がしたいのかと怪訝な表情をしていると、護衛の一人がもしかしてと口を開いた。
「その尾の色を見ろということですか?」
護衛たちは侵入者が伝説の聖獣の可能性もあるとみて、行く末を見守っていた。
大きな生き物は殿下を慕ってやってきたようだと判断したので、警戒を解かないままおかしな行動の連続に戸惑っていたが、ふと、リンリンの尻尾の綺麗な色味に思い立った。
「もしかしてエリザベス?」
「えっ? そういえば、瞳の色と一緒だ」
美しい紫の瞳と同じ、尾の先はエリザベスと同じ色味をまとっていた。
二人がそれに気づくと、リンリンは正解とばかりにきゅっとお尻を上げて見せた。そして、ばさっと羽を広げると、乗れと足を折った。
その横で、キュウも伏せするように背中を見せる。
「もしかして、エリザベスに何かあった?」
「そうなの?」
尋ねると、『キュウ』『リン』と二匹は鳴く。
そもそも、二匹はエリザベスがいる時以外姿を見せない。そんな彼らが彼女がいないのに姿を現したことが答えではないか。
そこまで考えると二人の決断は早かった。
「エドガー」
「ジャック」
「「行こう」」
そうやって、二人は二匹に連れられるまま学園へと向かうと、兄のシモン、ルイ、サミュエルたちと合流して、拉致されたエリザベスのもとに駆けつけた。
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