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赤と青の遊戯
38.雨と赤
しおりを挟むざあざあと雨が降り続ける。
話を聞きつけたマリアンヌが途中乱入し、双子のマリアンヌ接待に巻き込まれ、気づけば私はベアティとシリルと離れ、兄のミイルズと二人きりになっていた。
双子と関わると濡れる運命にあるのだろうか。
さすがに自然相手ではベアティとシリルも太刀打ちできず、そもそも彼らはここにいないので私は全身びしょ濡れだ。
常備されていたタオルを受け取り、髪を拭きながら窓の外を眺める。
いっこうに止む気配のない雨に嘆息すると、私と同じように窓の外を眺めていたミイルズが眉尻を下げた。
「エレナちゃん、ごめんね」
「いえ。これは不可抗力ですから」
そう答えながら、今頃焦っているだろう二人を思い小さく息をついた。
「雨、なかなかやみませんね」
「じきに迎えがくるだろうけど、ひどい目に遭ったよね~」
「急に降り出しましたからね。ほかの皆さんも無事雨宿りできているといいのですが」
私たちは一番近くにあった小屋に避難し、雨が通り過ぎる、もしくは迎えがくるのを待っていた。
外はすっかり暗くなり、なぶるような雨で外は周囲を見渡せないほど視界が悪かった。先ほどよりもいっそう激しく、地面に叩きつけるような雨音に溜め息が出る。
一度そばを離れたミイルズが、新たなタオルを渡しながら私の横に立った。
「これを」
「ありがとうございます」
濡れて重くなったタオルと交換で新しい物を受け取り再び拭いていると、窓越しにミイルズと視線が合う。
彼は雑に拭き、タオルを首にかけた状態だ。
「僕たちのせいで本当にごめんね。ベアティとシリルは今頃君と離れて気が気じゃないだろうね~」
「そう、ですね。確かにとても心配しているとは思いますが、伯爵家の敷地なので安全は確保されていますし大丈夫だと思います」
そばで守ると意気込んでいたのに申し訳ないとは思うが、それこそ不可抗力だ。
最初はそばにいたはずなのだが、気づけばあれよあれよと離され、急に降ってきた大雨のせいで今一緒にいることができていない。
思うところはあるが、天候までをも彼らのせいにするつもりはない。
獣が出るなどの、危険な場所ではない。
雨がやめば帰ればいいだけだし、それまでに伯爵家の人たちがここに迎えにくるだろうとわかっているため、私のほうは別に問題はない。
どちらかといえば、マリアンヌにまとわりつかれた彼らの精神状態が心配だ。
彼らがどれだけ素っ気ない態度を取っても、恥ずかしいのね、身分など関係ないのよ、となぜかポジティブ上から目線で通じない。
見かねて私もフォローに入るが、数回しか会っていないのにどうやらあまり好かれていないようで私の話を聞いてくれない。
死に戻り前に容姿のことも触れていたし、マリアンヌにとっては私の存在自体が気に食わないのだろう。
自分本位の人であることはわかっていたが、あれほど空気が読めない人だとは思いもしなかった。
どれだけこちらの気持を伝えても、マリアンヌのいいようにしか解釈しないので徒労に終わる。
――ひどさが増していない?
思い出してもむかむかする。
崇拝者ばかりの死に戻り前と違うためか、マリアンヌをサポートする人がいないとめちゃくちゃだ。
そのサポートする人たちの中にかつて自分が入っていたことが情けなく、明らかに狙われている二人を思うと胸がじくじくする。
そこで、直接ミイルズのほうを見た。
濡れた赤髪を鬱陶しそうにかきあげたミイルズの瞳は、赤とオレンジが交ざった美しい夕日のような瞳をしていた。
弟のアベラルドと並ぶとつい髪色で対比するので頭に視線がいきがちだが、その色はとても美しい。
まじまじと見るのは初めてで、真正面から捉えるとその瞳に吸い寄せられる。
死に戻り前、気づいた頃には彼らの顔は黒い靄で隠され見えなくなっていた。それがいつからだったか覚えていないが、今後靄がかかるようなことが起こるのだろうか。
――もしかして、先ほど言いかけていた『何か』が関わっている?
仲の良い弟と対立してまで、言おうとしていた何か。
マリアンヌの機嫌を取ろうとする動き、回復ポーションを渡したときに見せた反応。効果を感じられれば、私に頼みごとをしたい様子だった。
本来なら、マリアンヌ側にいる彼らに深く関わることは避けるべきだ。
だが、ベアティとシリルの過去からの今、死に戻り前の彼らの状態、双子の様子から放っておくには引っかかる。
――距離を置いておきたいのにな……。
どうしても気になるのだから仕方がない。
多分、ミイルズが話したそうに、つまり頼ろうとしていたことが、突き放せない原因になっているのだろう。
ベアティたちにまた甘いと怒られるかもしれないと苦笑しながら、私はミイルズに話しかけた。
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