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赤と青の遊戯
39.双子の企み
しおりを挟む「ミイルズ様、先ほどの話ですが回復ポーションの効果次第で話があるとのことでしたが……」
「そうだね。僕としては聞いてほしいと思っているのだけど」
ポーションは確かに一定の効果は見込まれる。だが、万能というわけではない。
双子がどれだけの効果を期待しているのかわからないので、どう転ぶか見えない話だ。
「アベラルド様は反対のご様子でしたね」
その事に触れると、ゆっくりと伏せたミイルズの瞳が翳っていく。
「話を持っていくときはちゃんと説得しておく。だから、その時がくればお願いしてもいいだろうか?」
だが、そう宣言する時には強い意思のこもった光が宿っていた。
その思いが切実であるのが伝わってくる。
「それは、私ではないとダメなのでしょうか?」
「エレナ嬢なら可能性があると僕は思っている」
可能性という言葉から、やはり回復スキルが目当てではないだろうかと思われた。
スキルも幅があるので、皆が同じような効果を発揮するわけではない。すべての怪我や病気が完治するわけでもない。
それでも緩和されることも見込まれ、誰もが高いお金を払ってでも高レベルの回復持ちに見てもらいたがる。
マリアンヌは回復スキル持ちとして有名だ。
単純にマリアンヌと波長が合うから、好いているからという理由もあるだろうが、もしその恩恵を得たくマリアンヌの機嫌を取っているのだとすれば話は変わってくる。
一方、私のほうは実力を知らないものの噂は届いており、藁にも縋りたい彼らは私の実力がどれ程のものか探っていたとしたら?
私たちへの水かけもその後の水晶、そして今回の誘いも彼らの私の品定めとアピール。
そう思うと、一見ちぐはぐな行動にも筋が通る。
私の能力の見極めや、やり方は決してよくはないが私たちが信用できるかも試していたのではないか。
私は夕日のようにどこか切なくなるような澄んだ瞳をじっと見つめ、小さく息をついた。
「悪戯や嘘などつかず、ミイルズ様たちが私に聞いてほしいと思うのでしたらその時はお話をお伺します」
「本当に?」
「ええ。事情がおありのようですし、考えた上で必要だと判断されたのでしたらその後の保証は致しませんが話を聞くことは拒みません。ただし、もう二度と前回や今日みたいなことがあれば、私は聞く気はありません」
ポーションや普通の回復スキルでは治癒できないほど重い病に苦しんでいる人物が、彼らの周囲にいるのかもしれない。
彼らの周辺で困ったことがあるような話は聞いたことはないが、死に戻り前も隠していたのかもしれない。
彼らがマリアンヌを頼るのか、私を頼るのか、または別の手段を頼るのかはわからない。
だが、私は私の大事なものを奪う相手には協力をしたくないし、誠意には誠意で応えたい。
歩み寄るのはここまでで、後は相手次第。
家族や領地、そしてベアティやシリルのこともあって、今の私はわりと考えることやすることは多い。
それ以上は寄り添う義務も彼らを優先する理由もないので、私はそれだけを伝えた。
「領地のことだけでなく、二人も大事に思っているんだね」
私が何を言いたいか伝わったようだ。
「ここまで共に過ごしてきた時間がありますから」
「少し羨ましいな。彼らがエレナちゃんをどれほど大事にしているか、初対面の時からの威嚇ですぐにわかったからね。僕たちはやり方を失敗した。本当、ごめん」
気づけば、間延びした語尾ではなく話をするミイルズ。
すっと伸びてきた手に前髪に伝った雫を弾かれたその瞬間、扉がものすごい勢いで開いた。
「エレナ様!?」
「エレナお嬢様。無事ですか?」
飛び込んできたベアティとシリルに目を見開き固まると、私に視界を止めたベアティがかき抱くように抱きしめてきた。
「エレナお嬢様と離れた後、ベアティの様子がいつもと変わって。本当に無事でよかった。僕だけじゃベアティを制御できない」
私の名を呼んだきり無言で腕ごとぎゅむうとベアティに抱きしめられた私の手を掴みながら、シリルが眉尻を下げて説明する。
「ベアティ……」
「……」
名を呼ぶと、何も言わずにさらにぎゅっと腕に力を入れられた。
ベアティの逸る鼓動と尋常ではない震えに、シリルからベアティに視線を映そうしたが見るなとばかりにまた力をこめられた。
――何があったの?
心配されているとはわかっていたが、また過保護度が増すだとか、苦言があるとかその程度だと思っていた。
戸惑って周囲に視線を走らせると、ひどく憔悴しきったアベラルドの姿が目に入った。
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