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朝焼けの女神④
しおりを挟む朝焼けの女神、④
過ぎてしまった恋
湯船から上がり髪の毛を乾かす前にフロントに電話してこの夜泊まることを伝えた。
「宿泊プランの変更をお願いしたいのですが、私ですか?私は斎藤文子です。そうです1103号室の。
デイユースで使わせて貰ってるのですがこのまま一泊させて貰っても良いでしょうか?」
都会には帰りたく無い。
帰りの電車は明日の夕方の予定だったので今日帰るのは少し変な気がする。以外にこの部屋は広くて落ち着く。
「そうですか、部屋は変えなくて良いですこの部屋のままで」
フロントは事務的に返事をしていたが、快く明日のチェックアウトを承諾してくれた。
「さてとのんびり行きますか」
部屋の電話を優しく置いて頭にタオルを巻きもう一度ベットに大の字で寝そべった。
白いシーツの上で寝ながら窓の外を見ると小さくお城が見える。
「お城もいいな。少し歩いて行ってみようかな、戻りながら食事の出来る店を探そう」
そう思いながら眠りに落ちそうだ、昨夜は興奮してあまり寝てないのだ。
思い浮かぶのはあの日の事だ。
「そうかお城は太郎が好きだったからな」
その日は文子の家に大学時代の男友達の上杉太郎が遊びに来る日だった。
文子はヨガのインストラクターで夜のクラスを終えて、2人分の食材を買った。
スーパーに寄って買い物を済ませて家に戻る途中に太郎から連絡が入った。
「10時ぐらい」に来るそうだ。少し待たせる事になるかもそう返信してスマートフォンを閉じた。
上杉太郎は斎藤文子の家の近くにコインパーキングを見つけて停め、車の中でスマートフォンを触っている。
文子がインドから帰って来てから初めて会う、さすがに緊張する。
しっかりとパーキングにシフトを入れて文子に近くにいると連絡を送った。
文子は帰宅途中の様で、家に着き片付けたら連絡すると返信が来た。文子がインドから帰って来て初めて会うのが彼女の部屋とは。
三年前までは恋人同士だった事が気になる。
街中のレストランで会う様に伝えたが、騒がしいのが嫌だし、簡単なインド料理を食べて欲しいと返事が来た。
文子が就職先で人間関係が上手くいかず二年で退職したのがきっかけで、仕事も探さず、太るからと言って、暇つぶしにヨガを始めた。
もともと身体が柔らかく色々なポーズが簡単に出来てしまう文子は、すっかりハマってしまい、「本格的に学びたの」って、インドに1人で旅に出て行くと言い出した。もちろん文子の家族にもお願いして、一緒に止めたが一向に聞く耳を持たず旅立ってしまった。
そうなる兆しはあった、ある日わざわざ雑誌をカバンに入れて持って来て、2人で会った居酒屋で広げて見せて来た。
「ここ見て欲しいの、ヨガの尊師がいるらしいのよ」
太郎は見たが何も感じない。
「標高が高そうな大きな石が転がる綺麗な川って事ぐらいだなって思うけど?何?」
「エネルギーを感じない?川にもこの転がる石に」
文子はどちらかと言えば積極的では無く押されてしまうとそのままにしてしまう性格で見ている方がヤキモキしてしまうタイプ。
それが原因で会社の人間関係が上手く行かなかった。どっちも付かずの立場が原因で、会社の中の雌の群れから外れてしまったようだ。
雑誌を手にして文子は言った。
「写真を見ると「来い」って呼ばれてる気がするの、なんだろう魂の故郷みたいな感じで...」
思い込む様に写真を見ている文子を、気のせいだと反対すればするほど、キラキラと光る目をして見つめ返してくる。
「英語が公用語の一つのインドだから」って簡単に言って、荷物も余り持たずに旅だってしまった。
長く帰らないと思ったら、ヒマラヤ山脈のふもとガンジス川の支流にある村のヨガ指導者の元に修行に入ってしまった。
文子の家族も心配されてたが、忘れた頃に届く絵葉書が家族を安心させている。
残された太郎は唖然とした。時々来る絵葉書を頼りに待っている訳にも行かない。太郎は勤め先で知り合った女と付き合い結婚の約束をした。先に子どもが出来た事がきっかけで簡単な式をあげて結婚した。仲良く一緒に暮らしている。今は出産前の母子の事を考えて、太郎の妻は実家に帰っている。
そうとも知らずに、文子は三年経った今年の春にふらっと日本に帰って来た。
今はヨガ教室のインストラクターになって生計を立てている。
文子から連絡は無かったが間に入る友人からスマートフォンの番号を聞いた。
「俺だよ、太郎だよ、覚えている?」
我慢出来ずに、仕事が終わるだろう18時ぐらいに電話してしまった。
「ああ太郎よね、久しぶりね懐かしいわ。ごめんこれからレッスンなのよ、会いたいと思っていたの。連絡ありがとう。ご飯一緒に食べようよ。話したい事あるし」
「これもお導きよね、今日が少しレッスンが早く終わる日なのよ、今夜はどうかな?」
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