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サキュバス参上!
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植上隆史《うえかみたかし》の前には、戦いによって破れた服がはだけ、傷だらけの女が居た。
ベッドを占領している女は、恍惚とした表情でこちらに来るよう手招きをする。
「助けてくれたお礼に良い事してあげる」
「良い事って?」
植上が聞き返すと女は手でオッケーサインを作り、何かを舐めるように舌を出した。
「私、サキュバスなの。あなたに蕩けるような快楽を……」
「あぁ、僕、処女厨だからサキュバスとか無理なんで」
「は?」
二人の間には沈黙が流れた。
先の未来、科学技術が発展し、超常現象は解明されて無くなるかと思われた頃。学者達を悩ます存在が現れた。
政府は日本で言う妖怪、亜人、天使や悪魔の存在を公に認め「あやかし」と呼んだ。
数こそは少ないものの、実在する彼ら、彼女らに、人間は興味津々である。
そしてこれは、『あやかし』達の存在を一般人が知り、しばらくたった頃の物語。
「なーんで天使に追いかけられなきゃいけないのよー!!!」
日本のとある田舎町。上空を飛ぶのは西洋の悪魔のような格好をした女だ。長い茶髪をたなびかせている。
「あなたは男性を拐《かどわ》かし過ぎです!! それに私の担当の子にまで手を出して!!!」
追いかけるのは白い翼の生えた小柄な女。天使のような出で立ち……、と言うより天使そのものだった。
「ちょっとつまみ食いしただけじゃーん!!」
「今日という今日は許しません!!!」
悪魔のような格好をした女はサキュバスで、天使達から猛攻撃を受け、逃げている所だ。
「目標を捉えました」
少し遠くで別の天使が弓を引く。放たれた光の矢はサキュバスの羽を貫いた。
「やばっ!!」
サキュバスはグルグルと回転しながら森の中へと落ちていく。地面に激突して、そのまま気を失ってしまった。
植上隆史《うえかみたかし》は呆然としていた。
やっと建てた、かなり立派なマイホームの屋根には穴が空き、空から女が降ってきた。そんでもってベッドの上に倒れている。
「は?」
やたら肌の露出が多い女は死んでいるのかと思ったが、苦しそうに呻いている。
背中に生えている真っ黒な羽を見るに、「あやかし」だろうか。
これは警察か救急車かどっちだと悩む植上の前で女は立ち上がろうとし、また崩れ落ちる。
「ちょっ、大丈夫ですか!? 救急車呼びますね!!」
それを聞いて女は待ったをかける。
「救急車はやめて!! お願い……」
植上はお願いと言われてもと思ったが、何か事情があるのかと思った。
「ごめん、体は大丈夫なんだけど、頭打ったみたいでボーッとしてて……」
「何でこんな事に……」
植上が尋ねると女は答えた。
「天使に……、追われてて、私ダメ……、捕まったら……」
そのまま女は気を失ってしまった。息はしているので死んではないだろう。
今度は家のインターフォンが鳴る。一度に色々なことが起きすぎて植上の頭は追いついていかなかった。
インターフォンは何度も鳴る。仕方がないので女をそのままにして玄関へ向かう。
ガチャリとドアを開けると、そこには白い羽が生え、頭には光る輪っか。
見たことがないような、整った顔立ちの金髪少女が立っていた。
「夜分遅くに申し訳ありません。この辺りでサキュバスを見かけませんでしたか?」
サキュバス……、心当たりしか無い。さっきのあの女かと植上は理解した。
「いえ、わかりませんね」
自分でも何故か分からないが、つい嘘をつく。
「そうですか……、失礼しました」
残念そうに少女は去る。ふぅーっと息を吐いて植上は部屋へと戻った。
人の気も知らずに、サキュバスと思われる女は眠っている。腕や足に傷があったので、救急箱を持ってきた。
「人間と同じ手当てで良いんかな?」
消毒液を染み込ませた脱脂綿で傷口を拭く。女はそれでも目覚める気配が無い。30分近く時間を掛けて目に見える範囲の傷の手当てをしてやった。
植上は「何かヤバい事に巻き込まれたんじゃないか」と思っていたが、目の前で倒れている人……、いや、サキュバスを放っておくわけにもいかず、そっと毛布を掛けて近くの椅子に座った。
しばらくすると、サキュバスはもぞもぞと目を覚まし、ボーっとした顔で植上を見つめている。
「おはよう」
いまいち自分の状況を理解できていなかったが、ベッドに横たわっていたことに気付き、次に自分の体を見る。
傷の手当をされており、不器用だが傷は絆創膏やらガーゼやらが貼られていた。
「あなたが助けてくれたの?」
サキュバスが言うと植上は頷いた。
「まぁ、そうだね」
するとサキュバスはクスクスと笑い出す。
「ありがとっ」
はにかんだ笑顔を向け、次の瞬間にはその顔は妖艶になった。
植上のベッドを占領しているサキュバスは、恍惚とした表情でこちらに来るよう手招きをする。
「助けてくれたお礼に良い事してあげる」
「良い事って?」
植上が聞き返すと女は手でオッケーサインを作り、何かを舐めるように舌を出した。
「私、サキュバスなの。あなたに蕩けるような快楽を……」
「あぁ、僕、処女厨だからサキュバスとか無理なんで」
「は?」
二人の間には沈黙が流れる。
ベッドを占領している女は、恍惚とした表情でこちらに来るよう手招きをする。
「助けてくれたお礼に良い事してあげる」
「良い事って?」
植上が聞き返すと女は手でオッケーサインを作り、何かを舐めるように舌を出した。
「私、サキュバスなの。あなたに蕩けるような快楽を……」
「あぁ、僕、処女厨だからサキュバスとか無理なんで」
「は?」
二人の間には沈黙が流れた。
先の未来、科学技術が発展し、超常現象は解明されて無くなるかと思われた頃。学者達を悩ます存在が現れた。
政府は日本で言う妖怪、亜人、天使や悪魔の存在を公に認め「あやかし」と呼んだ。
数こそは少ないものの、実在する彼ら、彼女らに、人間は興味津々である。
そしてこれは、『あやかし』達の存在を一般人が知り、しばらくたった頃の物語。
「なーんで天使に追いかけられなきゃいけないのよー!!!」
日本のとある田舎町。上空を飛ぶのは西洋の悪魔のような格好をした女だ。長い茶髪をたなびかせている。
「あなたは男性を拐《かどわ》かし過ぎです!! それに私の担当の子にまで手を出して!!!」
追いかけるのは白い翼の生えた小柄な女。天使のような出で立ち……、と言うより天使そのものだった。
「ちょっとつまみ食いしただけじゃーん!!」
「今日という今日は許しません!!!」
悪魔のような格好をした女はサキュバスで、天使達から猛攻撃を受け、逃げている所だ。
「目標を捉えました」
少し遠くで別の天使が弓を引く。放たれた光の矢はサキュバスの羽を貫いた。
「やばっ!!」
サキュバスはグルグルと回転しながら森の中へと落ちていく。地面に激突して、そのまま気を失ってしまった。
植上隆史《うえかみたかし》は呆然としていた。
やっと建てた、かなり立派なマイホームの屋根には穴が空き、空から女が降ってきた。そんでもってベッドの上に倒れている。
「は?」
やたら肌の露出が多い女は死んでいるのかと思ったが、苦しそうに呻いている。
背中に生えている真っ黒な羽を見るに、「あやかし」だろうか。
これは警察か救急車かどっちだと悩む植上の前で女は立ち上がろうとし、また崩れ落ちる。
「ちょっ、大丈夫ですか!? 救急車呼びますね!!」
それを聞いて女は待ったをかける。
「救急車はやめて!! お願い……」
植上はお願いと言われてもと思ったが、何か事情があるのかと思った。
「ごめん、体は大丈夫なんだけど、頭打ったみたいでボーッとしてて……」
「何でこんな事に……」
植上が尋ねると女は答えた。
「天使に……、追われてて、私ダメ……、捕まったら……」
そのまま女は気を失ってしまった。息はしているので死んではないだろう。
今度は家のインターフォンが鳴る。一度に色々なことが起きすぎて植上の頭は追いついていかなかった。
インターフォンは何度も鳴る。仕方がないので女をそのままにして玄関へ向かう。
ガチャリとドアを開けると、そこには白い羽が生え、頭には光る輪っか。
見たことがないような、整った顔立ちの金髪少女が立っていた。
「夜分遅くに申し訳ありません。この辺りでサキュバスを見かけませんでしたか?」
サキュバス……、心当たりしか無い。さっきのあの女かと植上は理解した。
「いえ、わかりませんね」
自分でも何故か分からないが、つい嘘をつく。
「そうですか……、失礼しました」
残念そうに少女は去る。ふぅーっと息を吐いて植上は部屋へと戻った。
人の気も知らずに、サキュバスと思われる女は眠っている。腕や足に傷があったので、救急箱を持ってきた。
「人間と同じ手当てで良いんかな?」
消毒液を染み込ませた脱脂綿で傷口を拭く。女はそれでも目覚める気配が無い。30分近く時間を掛けて目に見える範囲の傷の手当てをしてやった。
植上は「何かヤバい事に巻き込まれたんじゃないか」と思っていたが、目の前で倒れている人……、いや、サキュバスを放っておくわけにもいかず、そっと毛布を掛けて近くの椅子に座った。
しばらくすると、サキュバスはもぞもぞと目を覚まし、ボーっとした顔で植上を見つめている。
「おはよう」
いまいち自分の状況を理解できていなかったが、ベッドに横たわっていたことに気付き、次に自分の体を見る。
傷の手当をされており、不器用だが傷は絆創膏やらガーゼやらが貼られていた。
「あなたが助けてくれたの?」
サキュバスが言うと植上は頷いた。
「まぁ、そうだね」
するとサキュバスはクスクスと笑い出す。
「ありがとっ」
はにかんだ笑顔を向け、次の瞬間にはその顔は妖艶になった。
植上のベッドを占領しているサキュバスは、恍惚とした表情でこちらに来るよう手招きをする。
「助けてくれたお礼に良い事してあげる」
「良い事って?」
植上が聞き返すと女は手でオッケーサインを作り、何かを舐めるように舌を出した。
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