サキュバス来たけど、処女厨なので興味ありません

まっど↑きみはる

文字の大きさ
1 / 5

サキュバス参上!

しおりを挟む
 植上隆史《うえかみたかし》の前には、戦いによって破れた服がはだけ、傷だらけの女が居た。

 ベッドを占領している女は、恍惚とした表情でこちらに来るよう手招きをする。

「助けてくれたお礼に良い事してあげる」

「良い事って?」

 植上が聞き返すと女は手でオッケーサインを作り、何かを舐めるように舌を出した。

「私、サキュバスなの。あなたに蕩けるような快楽を……」

「あぁ、僕、処女厨だからサキュバスとか無理なんで」

「は?」

 二人の間には沈黙が流れた。



 先の未来、科学技術が発展し、超常現象は解明されて無くなるかと思われた頃。学者達を悩ます存在が現れた。

 政府は日本で言う妖怪、亜人、天使や悪魔の存在を公に認め「あやかし」と呼んだ。

 数こそは少ないものの、実在する彼ら、彼女らに、人間は興味津々である。

 そしてこれは、『あやかし』達の存在を一般人が知り、しばらくたった頃の物語。



「なーんで天使に追いかけられなきゃいけないのよー!!!」

 日本のとある田舎町。上空を飛ぶのは西洋の悪魔のような格好をした女だ。長い茶髪をたなびかせている。

「あなたは男性を拐《かどわ》かし過ぎです!! それに私の担当の子にまで手を出して!!!」

 追いかけるのは白い翼の生えた小柄な女。天使のような出で立ち……、と言うより天使そのものだった。

「ちょっとつまみ食いしただけじゃーん!!」

「今日という今日は許しません!!!」

 悪魔のような格好をした女はサキュバスで、天使達から猛攻撃を受け、逃げている所だ。

「目標を捉えました」

 少し遠くで別の天使が弓を引く。放たれた光の矢はサキュバスの羽を貫いた。

「やばっ!!」

 サキュバスはグルグルと回転しながら森の中へと落ちていく。地面に激突して、そのまま気を失ってしまった。



 植上隆史《うえかみたかし》は呆然としていた。

 やっと建てた、かなり立派なマイホームの屋根には穴が空き、空から女が降ってきた。そんでもってベッドの上に倒れている。

「は?」

 やたら肌の露出が多い女は死んでいるのかと思ったが、苦しそうに呻いている。

 背中に生えている真っ黒な羽を見るに、「あやかし」だろうか。

 これは警察か救急車かどっちだと悩む植上の前で女は立ち上がろうとし、また崩れ落ちる。

「ちょっ、大丈夫ですか!? 救急車呼びますね!!」

 それを聞いて女は待ったをかける。

「救急車はやめて!! お願い……」

 植上はお願いと言われてもと思ったが、何か事情があるのかと思った。

「ごめん、体は大丈夫なんだけど、頭打ったみたいでボーッとしてて……」

「何でこんな事に……」

 植上が尋ねると女は答えた。

「天使に……、追われてて、私ダメ……、捕まったら……」

 そのまま女は気を失ってしまった。息はしているので死んではないだろう。

 今度は家のインターフォンが鳴る。一度に色々なことが起きすぎて植上の頭は追いついていかなかった。

 インターフォンは何度も鳴る。仕方がないので女をそのままにして玄関へ向かう。

 ガチャリとドアを開けると、そこには白い羽が生え、頭には光る輪っか。

 見たことがないような、整った顔立ちの金髪少女が立っていた。

「夜分遅くに申し訳ありません。この辺りでサキュバスを見かけませんでしたか?」

 サキュバス……、心当たりしか無い。さっきのあの女かと植上は理解した。

「いえ、わかりませんね」

 自分でも何故か分からないが、つい嘘をつく。

「そうですか……、失礼しました」

 残念そうに少女は去る。ふぅーっと息を吐いて植上は部屋へと戻った。

 人の気も知らずに、サキュバスと思われる女は眠っている。腕や足に傷があったので、救急箱を持ってきた。

「人間と同じ手当てで良いんかな?」

 消毒液を染み込ませた脱脂綿で傷口を拭く。女はそれでも目覚める気配が無い。30分近く時間を掛けて目に見える範囲の傷の手当てをしてやった。

 植上は「何かヤバい事に巻き込まれたんじゃないか」と思っていたが、目の前で倒れている人……、いや、サキュバスを放っておくわけにもいかず、そっと毛布を掛けて近くの椅子に座った。

 しばらくすると、サキュバスはもぞもぞと目を覚まし、ボーっとした顔で植上を見つめている。

「おはよう」

 いまいち自分の状況を理解できていなかったが、ベッドに横たわっていたことに気付き、次に自分の体を見る。

 傷の手当をされており、不器用だが傷は絆創膏やらガーゼやらが貼られていた。

「あなたが助けてくれたの?」

 サキュバスが言うと植上は頷いた。

「まぁ、そうだね」

 するとサキュバスはクスクスと笑い出す。

「ありがとっ」

 はにかんだ笑顔を向け、次の瞬間にはその顔は妖艶になった。

 植上のベッドを占領しているサキュバスは、恍惚とした表情でこちらに来るよう手招きをする。

「助けてくれたお礼に良い事してあげる」

「良い事って?」

 植上が聞き返すと女は手でオッケーサインを作り、何かを舐めるように舌を出した。

「私、サキュバスなの。あなたに蕩けるような快楽を……」

「あぁ、僕、処女厨だからサキュバスとか無理なんで」

「は?」

 二人の間には沈黙が流れる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

私の推し(兄)が私のパンツを盗んでました!?

ミクリ21
恋愛
お兄ちゃん! それ私のパンツだから!?

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...