5 / 11
第五章
美しく完璧な執事は、恋人に永遠の愛を誓う
しおりを挟む
今宵が月夜で良かった。明るい庭を見て、陽太は心底ホッとした。広い広い平野家の庭。今でこそどこに何があるかわかるが、最初のうちは1人で歩く度に迷子になったものだ。その庭を、陽太は既に1時間近く四つん這いの状態で探しものをしている。
「あった!」
思わず叫んでしまってから、陽太は慌てて両手で口を塞ぐ。周囲をキョロキョロと見回し、ホッと胸を撫で下ろした。聡真も智樹も今はぐっすり眠っている。陽太の声で起こしてはならない。陽太は、発見した小さな花を大事に大事に摘む。
(智樹。喜んでくれるかな)
亜麻色の髪と瞳をした智樹の美しい顔を思い出し、陽太は知らず頬を染めた。黙っていると冷徹に見える智樹だが、陽太に対してはいつも蕩けるような笑顔をくれる。大好きな大好きな陽太の恋人。
(恋人、か)
半年以上前。陽太は、着の身着のままでこの屋敷に辿り着いた。聡真や智樹に優しく迎えられ、食べたこともないご馳走や、暖かな服や布団を与えてもらった。それだけではない。悪夢に怯える陽太を、智樹は優しく抱き締めてくれた。愛していると囁き、身体で想いを表してくれた。
(俺なんかの、どこがいいんだろう)
わからないが、智樹は毎晩のように愛してくれる。傷だらけの身体を、綺麗だと言ってくれた。
「難しいなぁ」
たどたどしい指で、陽太は賢明に花を編んでいく。すぐに失敗してしまっては、また同じ動作を繰り返した。そもそも不器用な陽太には、花で指輪を作るなど無理に近いのだ。
(こんなんじゃ、喜んでもらえない)
智樹が持っているものはすべて高級品ばかりだ。燕尾服も、筆記用具も、懐中時計も。陽太が見たこともないようなものばかりだった。こんなものを喜んでくれるとは思えなかった。でも、陽太はなんらかの形で自分の気持ちを表現したかったのだ。
(智樹になら、もっと素敵な人がいるのに…)
平野家の執事となるべく、智樹はこれまで厳しい鍛錬を積んできたらしい。喜怒哀楽を出す事がないため、周囲からは機械仕掛けのようだとも言われている。聡真以外には心を開かない孤高の存在。その智樹が、陽太にだけは心を許してくれる。
誰かの事を思ってドキドキしたり切なくなるなんて、これまでの陽太には知らなかった感情だ。誰かを愛する事が、こんなにも幸せな気持ちになるのだと智樹が教えてくれた。
「できた」
小さな小さな花の指輪。陽太は、これを智樹にあげたかったのだ。
きっかけは、漢字の勉強にと聡真がくれた絵本だ。そこで、初めて指輪というものを知った。
「智樹の指に入るかな」
完成した指輪を月にかざして、陽太が満足そうに目を細める。
絵本では、貧しい村娘が愛する男性のために花の指輪を贈るということが書かれていた。
『何もない私ですが。この真心を込めた指輪に永遠の愛を誓います』
少女の愛は男性に通じ、2人の愛は永遠に続いたのだそうだ。
(俺も、智樹とずっと一緒にいたい)
陽太にとって、この指輪は智樹への永遠の愛を誓うためのものなのだ。陽太は、壊れそうな小さな指輪を大切に抱えながら屋敷へと戻った。
そっと寝室に入り、智樹が寝ていることを確かめた。
(良かった。気づいてない)
寝顔も綺麗だなと、陽太は思わず見惚れてしまった。慌てて本来の目的を思い出す。
「朝になったら、きっと捨てられちゃうだろうけど」
智樹を起こさないように、そっと左手の薬指に指輪をはめる。白くて綺麗な指に、薄紫の花がよく似合っていた。陽太は安心したように、智樹の横で目を閉じた。ものの数分で、穏やかな寝息が聞こえてくる。
(何をしているのかと思えば)
陽太の寝息を確認し、智樹がゆっくりと目を開ける。夜中に自分の腕から陽太が抜け出した時から、ずっと起きていた。そして、庭先から聞こえる音にずっと耳を澄ましていたのだ。
(綺麗だな…)
自分の薬指にはめられた花の指輪を見た智樹が、少しだけ目元を和らげる。
(どうして、お前はこうもいちいち可愛いことをしてくれるのだろう)
そっと柔らかな黒髪に唇を押し当てると、夜風の冷たい香りがした。全身が冷えていたので、智樹は陽太を自分の胸へと抱き寄せた。無意識なのだろうが、陽太が嬉しそうに笑みを浮かべる。
(愛してる。言葉では足りないぐらい、愛している)
智樹は、陽太を好きになって、初めて自分にも人間らしい一面があったのだと気がついた。これまでの自分は、ただ聡真を守る事しか考えていなかった。それが自身の喜びだと、ずっと思ってきたのだ。
聡真の事は、今でも大切な主だ。地位など関係なく彼を守るだろう。だが、陽太は違う。陽太は、智樹が心から愛おしいと思える唯一の存在だ。
聡真を守るのは、自分以外でも構わない。だが、陽太の横にはいつも自分がいたい。誰にも、渡したくない。
翌朝。目が覚めた陽太は、自身の薬指を見て驚いた。そこには、まるで芸術品のように美しい花の指輪が飾られていたのだ。誰から贈られたものかなんて、考えなくてもわかる。まるで、永遠の愛を誓ってもらったようで、嬉しかった。
「ただいま帰りました」
玄関から明るい声が聞こえてくる。時刻は午前10時。時間はちゃんと守ったようだ。
「お帰り。ずいぶん急いで来たんだね」
智樹が微笑めば、陽太がポッと耳まで赤くなった。
あの日。花の指輪を互いに渡した時から、陽太はどこか様子がおかしい。目が合えば逃げていくし、唇を寄せれば顔を背ける。
「どうした?何かあったのか?」
「あ、ううんっ。なんでも、なんでもないよっ」
慌てたように陽太は自室に向かった。
(許すのではなかった)
最近、陽太は涼雅の店である『蜜月堂』を手伝いに行っている。陽太がどうしても手伝いたいと言うので行かせたのだが、それから様子が変なのだ。
智樹はパウンドケーキを切ると、小皿に綺麗に並べた。
そして、シワ1つない燕尾服を翻し、廊下の奥へと向かった。
「旦那様。お茶の時間です」
スッと音もなく戸を開けて、紅茶とパウンドケーキを入れる。
と、同時に1枚の紙が智樹の前へとゆっくり流れてくる。
『お前らしくない。
心が乱れているね。
気になるなら、陽太とよく話し合いなさい』
「…はい」
智樹は、そっと胸に手を当てた。陽太の気持ちがわからない。それだけで、こんなにも心細い気持ちになるなんて。
「昔の私からは想像もできないな」
智樹にとって、恋愛なんて考えたこともなかった。生まれながらに執事としての教育を受けて、感情など邪魔なものだと思ってきた。だが、陽太と会って変わった。陽太を愛しいと思えば思うほど、彼が欲しくなる。
「陽太」
夜。智樹は、寝たフリをしている陽太を布団ごと抱き締めた。
ビクッと陽太の身体が震える。
「な、何すんだよっ」
布団から出た陽太が見たのは、不安そうな智樹の顔だった。
「智樹?」
「こうしてないと、不安なんだ」
智樹が陽太を見つめる。とても、切ない瞳で…。
「お前が、私から離れていきそうで…。怖いんだ」
「え?」
それは、陽太が初めて見る智樹の顔だった。いつもの冷静さが嘘のように、とても儚げだった。
「大丈夫。俺は、どこにも行かないよ。大丈夫」
陽太が慰めるように智樹に口づける。最初は触れ合うだけだった唇が、やがて深くなっていった。
「ん…っ、んんっ、んっ」
その日。智樹の愛撫はいつもと違って、かなり激しかった。陽太は、恥ずかしさと不安から智樹にギュッとしがみついた。やがて、互いの熱が解き放たれる。
「怖かったか?」
深く繋がったまま、智樹が不安げに尋ねる。いささか性急過ぎたかと心配していれば、陽太がチュッと唇を重ねてきた。
「怖くないよ。智樹だから」
陽太の細い腕が首に絡み付く。
より、2人の身体が密着した。
「どんなに乱暴にされたって、怖くないよ」
健気に微笑む陽太に、智樹が切なげに眉を寄せる。
「すまない。少し、乱暴にしてしまった」
智樹は、これまで自分が抱えていた不安や苛立ちを素直に話した。
「涼雅のところに手伝いに行ってから、お前が変わった気がして…」
涼雅の名前を出した瞬間。陽太が慌てて首を左右に振る。
「違うよっ。ただ、指輪を…っ、あっ」
「指輪?」
「あ、いや、あの…」
「陽太」
智樹の声に、陽太はオズオズと話し始めた。
智樹からもらった花の指輪が、あまりにも嬉しかった。嬉しくて、誰かに自慢したくて『蜜月堂』へ行ったのだ。そこで、涼雅に見せたら…。
「へぇ。ブルースターか。よく花嫁さんのブーケに使われるな」
と言われたのだ。プロポーズされたのではと言われて急に恥ずかしくなったのだ。
「智樹が俺になんて、ありえないのに。急に、意識しちゃって」
真っ赤になって話す陽太がかわいくて、智樹は思わず強く抱き締めた。そして、その細く美しい薬指に口づける。
「涼雅の言葉は正しい。あの指輪は、婚約指輪として贈ったんだ」
「え?」
「ブルースターの花言葉には、幸福な愛というものがある。私は、お前を幸せにしたい」
智樹は、陽太の左手薬指にキスをした。
「そのうち、結婚指輪を用意する」
「と、智樹っ」
「その時は、受け取って欲しい」
それは、正真正銘プロポーズだった。陽太が、泣きそうな表情で頷く。
「うんっ」
智樹は再び陽太を押し倒すと、そのまま深く口づけた。躊躇いがちに背中に腕が回ったのを合図に、智樹は深くその身を沈めた。
「永遠に、愛している」
囁かれたその言葉に、陽太はこれ以上ないくらいの幸福を感じた。
2人が作った花の指輪はドライフラワーとされ、大切に飾られた。
「あった!」
思わず叫んでしまってから、陽太は慌てて両手で口を塞ぐ。周囲をキョロキョロと見回し、ホッと胸を撫で下ろした。聡真も智樹も今はぐっすり眠っている。陽太の声で起こしてはならない。陽太は、発見した小さな花を大事に大事に摘む。
(智樹。喜んでくれるかな)
亜麻色の髪と瞳をした智樹の美しい顔を思い出し、陽太は知らず頬を染めた。黙っていると冷徹に見える智樹だが、陽太に対してはいつも蕩けるような笑顔をくれる。大好きな大好きな陽太の恋人。
(恋人、か)
半年以上前。陽太は、着の身着のままでこの屋敷に辿り着いた。聡真や智樹に優しく迎えられ、食べたこともないご馳走や、暖かな服や布団を与えてもらった。それだけではない。悪夢に怯える陽太を、智樹は優しく抱き締めてくれた。愛していると囁き、身体で想いを表してくれた。
(俺なんかの、どこがいいんだろう)
わからないが、智樹は毎晩のように愛してくれる。傷だらけの身体を、綺麗だと言ってくれた。
「難しいなぁ」
たどたどしい指で、陽太は賢明に花を編んでいく。すぐに失敗してしまっては、また同じ動作を繰り返した。そもそも不器用な陽太には、花で指輪を作るなど無理に近いのだ。
(こんなんじゃ、喜んでもらえない)
智樹が持っているものはすべて高級品ばかりだ。燕尾服も、筆記用具も、懐中時計も。陽太が見たこともないようなものばかりだった。こんなものを喜んでくれるとは思えなかった。でも、陽太はなんらかの形で自分の気持ちを表現したかったのだ。
(智樹になら、もっと素敵な人がいるのに…)
平野家の執事となるべく、智樹はこれまで厳しい鍛錬を積んできたらしい。喜怒哀楽を出す事がないため、周囲からは機械仕掛けのようだとも言われている。聡真以外には心を開かない孤高の存在。その智樹が、陽太にだけは心を許してくれる。
誰かの事を思ってドキドキしたり切なくなるなんて、これまでの陽太には知らなかった感情だ。誰かを愛する事が、こんなにも幸せな気持ちになるのだと智樹が教えてくれた。
「できた」
小さな小さな花の指輪。陽太は、これを智樹にあげたかったのだ。
きっかけは、漢字の勉強にと聡真がくれた絵本だ。そこで、初めて指輪というものを知った。
「智樹の指に入るかな」
完成した指輪を月にかざして、陽太が満足そうに目を細める。
絵本では、貧しい村娘が愛する男性のために花の指輪を贈るということが書かれていた。
『何もない私ですが。この真心を込めた指輪に永遠の愛を誓います』
少女の愛は男性に通じ、2人の愛は永遠に続いたのだそうだ。
(俺も、智樹とずっと一緒にいたい)
陽太にとって、この指輪は智樹への永遠の愛を誓うためのものなのだ。陽太は、壊れそうな小さな指輪を大切に抱えながら屋敷へと戻った。
そっと寝室に入り、智樹が寝ていることを確かめた。
(良かった。気づいてない)
寝顔も綺麗だなと、陽太は思わず見惚れてしまった。慌てて本来の目的を思い出す。
「朝になったら、きっと捨てられちゃうだろうけど」
智樹を起こさないように、そっと左手の薬指に指輪をはめる。白くて綺麗な指に、薄紫の花がよく似合っていた。陽太は安心したように、智樹の横で目を閉じた。ものの数分で、穏やかな寝息が聞こえてくる。
(何をしているのかと思えば)
陽太の寝息を確認し、智樹がゆっくりと目を開ける。夜中に自分の腕から陽太が抜け出した時から、ずっと起きていた。そして、庭先から聞こえる音にずっと耳を澄ましていたのだ。
(綺麗だな…)
自分の薬指にはめられた花の指輪を見た智樹が、少しだけ目元を和らげる。
(どうして、お前はこうもいちいち可愛いことをしてくれるのだろう)
そっと柔らかな黒髪に唇を押し当てると、夜風の冷たい香りがした。全身が冷えていたので、智樹は陽太を自分の胸へと抱き寄せた。無意識なのだろうが、陽太が嬉しそうに笑みを浮かべる。
(愛してる。言葉では足りないぐらい、愛している)
智樹は、陽太を好きになって、初めて自分にも人間らしい一面があったのだと気がついた。これまでの自分は、ただ聡真を守る事しか考えていなかった。それが自身の喜びだと、ずっと思ってきたのだ。
聡真の事は、今でも大切な主だ。地位など関係なく彼を守るだろう。だが、陽太は違う。陽太は、智樹が心から愛おしいと思える唯一の存在だ。
聡真を守るのは、自分以外でも構わない。だが、陽太の横にはいつも自分がいたい。誰にも、渡したくない。
翌朝。目が覚めた陽太は、自身の薬指を見て驚いた。そこには、まるで芸術品のように美しい花の指輪が飾られていたのだ。誰から贈られたものかなんて、考えなくてもわかる。まるで、永遠の愛を誓ってもらったようで、嬉しかった。
「ただいま帰りました」
玄関から明るい声が聞こえてくる。時刻は午前10時。時間はちゃんと守ったようだ。
「お帰り。ずいぶん急いで来たんだね」
智樹が微笑めば、陽太がポッと耳まで赤くなった。
あの日。花の指輪を互いに渡した時から、陽太はどこか様子がおかしい。目が合えば逃げていくし、唇を寄せれば顔を背ける。
「どうした?何かあったのか?」
「あ、ううんっ。なんでも、なんでもないよっ」
慌てたように陽太は自室に向かった。
(許すのではなかった)
最近、陽太は涼雅の店である『蜜月堂』を手伝いに行っている。陽太がどうしても手伝いたいと言うので行かせたのだが、それから様子が変なのだ。
智樹はパウンドケーキを切ると、小皿に綺麗に並べた。
そして、シワ1つない燕尾服を翻し、廊下の奥へと向かった。
「旦那様。お茶の時間です」
スッと音もなく戸を開けて、紅茶とパウンドケーキを入れる。
と、同時に1枚の紙が智樹の前へとゆっくり流れてくる。
『お前らしくない。
心が乱れているね。
気になるなら、陽太とよく話し合いなさい』
「…はい」
智樹は、そっと胸に手を当てた。陽太の気持ちがわからない。それだけで、こんなにも心細い気持ちになるなんて。
「昔の私からは想像もできないな」
智樹にとって、恋愛なんて考えたこともなかった。生まれながらに執事としての教育を受けて、感情など邪魔なものだと思ってきた。だが、陽太と会って変わった。陽太を愛しいと思えば思うほど、彼が欲しくなる。
「陽太」
夜。智樹は、寝たフリをしている陽太を布団ごと抱き締めた。
ビクッと陽太の身体が震える。
「な、何すんだよっ」
布団から出た陽太が見たのは、不安そうな智樹の顔だった。
「智樹?」
「こうしてないと、不安なんだ」
智樹が陽太を見つめる。とても、切ない瞳で…。
「お前が、私から離れていきそうで…。怖いんだ」
「え?」
それは、陽太が初めて見る智樹の顔だった。いつもの冷静さが嘘のように、とても儚げだった。
「大丈夫。俺は、どこにも行かないよ。大丈夫」
陽太が慰めるように智樹に口づける。最初は触れ合うだけだった唇が、やがて深くなっていった。
「ん…っ、んんっ、んっ」
その日。智樹の愛撫はいつもと違って、かなり激しかった。陽太は、恥ずかしさと不安から智樹にギュッとしがみついた。やがて、互いの熱が解き放たれる。
「怖かったか?」
深く繋がったまま、智樹が不安げに尋ねる。いささか性急過ぎたかと心配していれば、陽太がチュッと唇を重ねてきた。
「怖くないよ。智樹だから」
陽太の細い腕が首に絡み付く。
より、2人の身体が密着した。
「どんなに乱暴にされたって、怖くないよ」
健気に微笑む陽太に、智樹が切なげに眉を寄せる。
「すまない。少し、乱暴にしてしまった」
智樹は、これまで自分が抱えていた不安や苛立ちを素直に話した。
「涼雅のところに手伝いに行ってから、お前が変わった気がして…」
涼雅の名前を出した瞬間。陽太が慌てて首を左右に振る。
「違うよっ。ただ、指輪を…っ、あっ」
「指輪?」
「あ、いや、あの…」
「陽太」
智樹の声に、陽太はオズオズと話し始めた。
智樹からもらった花の指輪が、あまりにも嬉しかった。嬉しくて、誰かに自慢したくて『蜜月堂』へ行ったのだ。そこで、涼雅に見せたら…。
「へぇ。ブルースターか。よく花嫁さんのブーケに使われるな」
と言われたのだ。プロポーズされたのではと言われて急に恥ずかしくなったのだ。
「智樹が俺になんて、ありえないのに。急に、意識しちゃって」
真っ赤になって話す陽太がかわいくて、智樹は思わず強く抱き締めた。そして、その細く美しい薬指に口づける。
「涼雅の言葉は正しい。あの指輪は、婚約指輪として贈ったんだ」
「え?」
「ブルースターの花言葉には、幸福な愛というものがある。私は、お前を幸せにしたい」
智樹は、陽太の左手薬指にキスをした。
「そのうち、結婚指輪を用意する」
「と、智樹っ」
「その時は、受け取って欲しい」
それは、正真正銘プロポーズだった。陽太が、泣きそうな表情で頷く。
「うんっ」
智樹は再び陽太を押し倒すと、そのまま深く口づけた。躊躇いがちに背中に腕が回ったのを合図に、智樹は深くその身を沈めた。
「永遠に、愛している」
囁かれたその言葉に、陽太はこれ以上ないくらいの幸福を感じた。
2人が作った花の指輪はドライフラワーとされ、大切に飾られた。
34
あなたにおすすめの小説
お兄ちゃんができた!!
くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。
お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。
「悠くんはえらい子だね。」
「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」
「ふふ、かわいいね。」
律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡
「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」
ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。
陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。
陽七 葵
BL
主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。
しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。
蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。
だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。
そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。
そこから物語は始まるのだが——。
実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。
素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます
なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。
そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。
「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」
脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……!
高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!?
借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。
冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!?
短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。
若旦那からの甘い誘惑
すいかちゃん
BL
使用人として、大きな屋敷で長年奉公してきた忠志。ある日、若旦那が1人で淫らな事をしているのを見てしまう。おまけに、その口からは自身の名が・・・。やがて、若旦那の縁談がまとまる。婚礼前夜。雨宿りをした納屋で、忠志は若旦那から1度だけでいいと甘く誘惑される。いけないとわかっていながら、忠志はその柔肌に指を・・・。
身分差で、誘い受けの話です。
第二話「雨宿りの秘密」
新婚の誠一郎は、妻に隠れて使用人の忠志と関係を続ける。
雨の夜だけの関係。だが、忠志は次第に独占欲に駆られ・・・。
冒頭は、誠一郎の妻の視点から始まります。
「これからも応援してます」と言おう思ったら誘拐された
あまさき
BL
国民的アイドル×リアコファン社会人
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
学生時代からずっと大好きな国民的アイドルのシャロンくん。デビューから一度たりともファンと直接交流してこなかった彼が、初めて握手会を開くことになったらしい。一名様限定の激レアチケットを手に入れてしまった僕は、感動の対面に胸を躍らせていると…
「あぁ、ずっと会いたかった俺の天使」
気付けば、僕の世界は180°変わってしまっていた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
初めましてです。お手柔らかにお願いします。
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
二日に一度を目安に更新しております
平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています
七瀬
BL
あらすじ
春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。
政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。
****
初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる