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姉の夫に恋しています
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彼は、いつもレモンの香りがした。彼に会いたくて、用もないのにカフェに通ったの。まさか、お姉ちゃんと結婚するのがあなただったなんて…。初恋は実らないってよく言うけど、こんなのってないよ。
「義兄さん。またこんなに散らかして」
私が小言を言うと、布団の中からモゾモゾと義兄が顔を出してきた。寝ぼけ眼に、ボサボサの髪型。ボタンをかけ違えたパジャマ。なぜ、こんなにも寝起きの顔がだらしないのだろう。そして、なぜその顔に私はドキドキしているのだろう。私は、わざとぶっきらぼうに言いながら脱ぎ散らかしてある服を集めた。
「食器はその日のうちに洗っておいてって言ってあるでしょ!」
シンクの中に置かれたままの食器にため息が出た。こびりついたご飯粒。きっとすぐには落ちないだろうな。
「子供じゃないんだから」
私は、手早く食器を洗うと、散らかった床を片付けた。
「私がお姉ちゃんに怒られるんだからね」
出産で姉が実家に帰ることとなり、近所に住んでいる私が義兄の様子を度々見に来ているのだ。姉からは、義兄が浮気をしないよう見張ってくれと言われているが、そんな心配はいらない。なぜなら、義兄はそんな人ではないからだ。
「うーん。日曜日ぐらいゆっくり寝かせてくれよ」
掠れた声が、どことなく色気を含んでいて頬が赤くなる。
私は、わざと掛け布団をめくり上げた。
「もう昼過ぎよ。ほら、顔を洗ってきて」
「…へいへい」
義兄は、売れない作家だ。駅前の小さなカフェで、いつも難しい顔をしている。レモンティーが好きらしく、いつも飲んでいた。偶然彼を店で見かけた私は、密かに『レモンの人』と呼んだものだ。言葉を交わした事もないけど、好きだった。初恋だった。たまたま姉をカフェに連れて行った事が、過ちだった。姉が、彼に一目惚れしてしまったのだ。
「いつも悪いね」
義兄が優しく微笑む。ズルい。
ずっとあなたが好きでした。もし今、そんなことを言ったら義兄はどんな顔をするだろう。
困ったように笑うだろうか。冗談言うなと怒るかだろうか。それとも、私の事を少しは意識してくれるだろうか。
「早く着替えてよね」
「はいはい」
近づいたら、好きになる気持ちが止まらなくなる。知っているくせに離れられない。
「今日の晩ごはん何がいい?」
初めて会った時から好きでした。お姉ちゃんの旦那様になってからも、ずっと。
初めて恋をした人。簡単に忘れられない。
「んー、カレーかな」
会う度に好きになっていく。報われないとわかっていても、止められない。
何度も後悔した。なぜ、好きになったのだろうと。でも、やっぱり好きなのだ。
「またカレー?義兄さん、ワンパターンすぎ」
好きになってはいけないって、わかってるのに。わかっているからこそ、この気持ちを抑えられない。
「カレーって飽きないんだよなぁ。特に、君のカレーは」
意味深な言葉にドキッとする。
「それと、レモンティーが飲みたいな」
ずっと、あなたを好きでいます。言葉には出さないけれど。
「レモンティー?」
たとえ、私の心がせつなく軋んでも、この気持ちだけは否定したくない。
好きになってはいけないと知りながら、止められない。
「懐かしいだろ?」
義兄の表情が少しだけ変わる。
この恋は、諦めなくてはいけないのに。
近づく顔に、ドキドキが止まらない。
「義兄さん。またこんなに散らかして」
私が小言を言うと、布団の中からモゾモゾと義兄が顔を出してきた。寝ぼけ眼に、ボサボサの髪型。ボタンをかけ違えたパジャマ。なぜ、こんなにも寝起きの顔がだらしないのだろう。そして、なぜその顔に私はドキドキしているのだろう。私は、わざとぶっきらぼうに言いながら脱ぎ散らかしてある服を集めた。
「食器はその日のうちに洗っておいてって言ってあるでしょ!」
シンクの中に置かれたままの食器にため息が出た。こびりついたご飯粒。きっとすぐには落ちないだろうな。
「子供じゃないんだから」
私は、手早く食器を洗うと、散らかった床を片付けた。
「私がお姉ちゃんに怒られるんだからね」
出産で姉が実家に帰ることとなり、近所に住んでいる私が義兄の様子を度々見に来ているのだ。姉からは、義兄が浮気をしないよう見張ってくれと言われているが、そんな心配はいらない。なぜなら、義兄はそんな人ではないからだ。
「うーん。日曜日ぐらいゆっくり寝かせてくれよ」
掠れた声が、どことなく色気を含んでいて頬が赤くなる。
私は、わざと掛け布団をめくり上げた。
「もう昼過ぎよ。ほら、顔を洗ってきて」
「…へいへい」
義兄は、売れない作家だ。駅前の小さなカフェで、いつも難しい顔をしている。レモンティーが好きらしく、いつも飲んでいた。偶然彼を店で見かけた私は、密かに『レモンの人』と呼んだものだ。言葉を交わした事もないけど、好きだった。初恋だった。たまたま姉をカフェに連れて行った事が、過ちだった。姉が、彼に一目惚れしてしまったのだ。
「いつも悪いね」
義兄が優しく微笑む。ズルい。
ずっとあなたが好きでした。もし今、そんなことを言ったら義兄はどんな顔をするだろう。
困ったように笑うだろうか。冗談言うなと怒るかだろうか。それとも、私の事を少しは意識してくれるだろうか。
「早く着替えてよね」
「はいはい」
近づいたら、好きになる気持ちが止まらなくなる。知っているくせに離れられない。
「今日の晩ごはん何がいい?」
初めて会った時から好きでした。お姉ちゃんの旦那様になってからも、ずっと。
初めて恋をした人。簡単に忘れられない。
「んー、カレーかな」
会う度に好きになっていく。報われないとわかっていても、止められない。
何度も後悔した。なぜ、好きになったのだろうと。でも、やっぱり好きなのだ。
「またカレー?義兄さん、ワンパターンすぎ」
好きになってはいけないって、わかってるのに。わかっているからこそ、この気持ちを抑えられない。
「カレーって飽きないんだよなぁ。特に、君のカレーは」
意味深な言葉にドキッとする。
「それと、レモンティーが飲みたいな」
ずっと、あなたを好きでいます。言葉には出さないけれど。
「レモンティー?」
たとえ、私の心がせつなく軋んでも、この気持ちだけは否定したくない。
好きになってはいけないと知りながら、止められない。
「懐かしいだろ?」
義兄の表情が少しだけ変わる。
この恋は、諦めなくてはいけないのに。
近づく顔に、ドキドキが止まらない。
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