呪われ令嬢、王妃になる

八重

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第9話 妃教育とご褒美(3)

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 カフェでコーヒーを飲み終えた二人は今度は向かいにある小さめの小屋を見つけて入ろうとする。
 その小屋はツタが青い外壁に絡みついており、おとぎ話に出てくるような不思議な雰囲気を漂わせた小屋だった。
 小さな窓にはガラスの綺麗な小物が並べられており、それはシェリーの心を掴む。

「ジェラルド様、ここ素敵ですね」
「ガラス屋か……いや、飴細工のようだね」
「飴細工ですか?」
「ほら、奥に素敵なマダムが作っているのが見える」
「あ、本当ですね。中に入れるのでしょうか?」
「聞いてきてみよう」

 二人は歩みを進め、ドアを開けると、ベルのような音が鳴ってマダムがこちらを見た。

「いらっしゃい」
「こちらは入れますか?」
「ええ、どうぞ。お好きに見て行ってくださいな」
「ありがとう」

 シェリーは嬉しそうな表情をうかべると、テーブルや棚に並べられた飴細工を眺めていく。
 それはうさぎの形や星、家、そしてりんごなどの日常に溢れているものの形や、おそらくマダムの創作であろう素敵な形をした一点もののような飴細工もあった。
 ジェラルドもシェリーのあとを追うように見ていく。

「綺麗ですね」
「ああ、すごく繊細なものだね」

 シェリーは自然とマダムのほうへと足が進み、彼女の作っている様子をじっと観察する。
 マダムは器用に飴を操り、そしてハサミを使って形を整えていく。

「すごい……」
「これほどの職人がこの国にいたとは」
「私も職人さんを見るのは初めてなので、見入っちゃいますね」
「ああ」

 二人が興味深そうに眺めていると、マダムが声をかける。

「二人は夫婦かい?」
「え?!」

 シェリーは驚いてそのあとどう答えていいかわからずドギマギしていると、ジェラルドが横から嬉しそうな声で返答する。

「ええ、そうなんですよ。お似合いでしょう?」
「ああ、とても」

 職人気質なのか口数は少ないけれど、飴を転がしながら少し微笑んでマダムは言う。

「マダム、あそこにある棚の飴を二つくれませんか?」
「ええ、喜んで」

 そう言ってジェラルドはお金を支払ってマダムから飴を受け取ると、一つをシェリーに渡した。

「はい、シェリー」
「ありがとうございます!」

 二人は少し名残惜しそうに小屋を後にして、馬車へ戻ろうとする。

「残念だけど、そろそろ帰ろうか」
「はい、また街に来たいです! 飴屋さんも!!」
「そうだね、また二人で来よう」


 そうして二人は並んで街を歩いていると、ジェラルドが何かに気づいたように目を細めて遠くを見た。

「──っ!!!!」
「どうしたんですか? ジェラルド様?」
「見つけた」
「え?」

 シェリーはジェラルドの見つめる方を見ると、その理由に気づいて口元を手で覆った。
 そして思わずシェリーは呟いた。



「魔女……!」

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