【完結】王太子と婚約した私は『ため息』を一つ吐く~聖女としての『偽りの記憶』を植え付けられたので、婚約破棄させていただきますわ~

八重

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隣国陰謀編

第14話 あなたを愛することはないけれど

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「聖女様、俺の女になれ」

 『聖女様』と敬うような言葉を使いながら後半の命令口調は一体どういう領分なんですか。
 私の顎をくいっと上げて自身の目で私を捕まえるように見つめる彼は、にやりと笑って今度は私をパッと解放した。

「なんてな、まあ目的はもうほぼ達成されたし、いいだろう」
「目的?」
「ああ、お前をクリシュト国から奪うことが目的だったからな」
「なんで……」

 彼は私から離れて窓のほうに向かうと、こちらを向いて語り始める。

「ま、クリシュト国から聖女様を奪ったし勝手にあの国もつぶれるかもな」
「なっ! そんなことないっ! クリシュト国には国王もそれにユリウス様もいる! 私一人いなくても国がつぶれたりなんかしないわ」

 私が息を切らせながら一気に言うだけ言うと、彼は口元に手を当てて笑い始めた。

「く、お前っておもしろいやつだな。お前自分がどこに連れて来られたかわかってんのか?」

 あ、確かにそうだ。
 今私はどこにいるんだろう、この豪華そうなベッド、本棚、それに広い部屋。
 そして目の前にはがたいの良い男の人……。

 その瞬間カーテンが窓からの風ではためき、そして光が彼を照らした。

「ここはクリシュト国の隣、コーデリア国だよ。で、俺はレオ。この国の第一王子だ」
「第一王子……コーデリア国……」

 クリシュト国がつぶれるって話をされたときには頭に血が上ってわからなかったけど、確かに考えればそれが納得する答えだった。
 そして彼──レオは近くの椅子に腰かけて座り、その長い足を組んで話し始めた。

「お前は聖女が何か知ってるか?」
「え?」

 そういえば、『聖女』がこの世界でどんな意味を持つ存在なのかよく知らない。
 元王妃様に召喚された聖女、ってことしかわからないし、聖女と言えば普通何かの能力が使えるはず。
 でも私はそんな力持ってないし、ただの異世界人のように思える。
 そんなことを考えていると、レオは続きを話し始めた。

「聖女がこの世界に来るのは何もお前が初めてじゃない。そして、初代聖女はこの国で元々召喚された」
「──っ?!」

 サクラの聖樹やこれまでの書物で調べた結果から、私以外にも聖女と呼ばれる人がいたことはわかっているし、その聖女は私と同じ世界から来ている気もしていたけど、なんだかレオの言い方が気になる。

「その聖女を奪ったのはクリシュト国の連中だ。だから今度はお前を俺が奪った」
「そんな理由で?」
「…………まあ、いい。お前を愛することはないが、お前と婚約して結婚する」
「はあ?!」

 思わず私はベッドから起き上がり、彼に詰め寄る。

「なんであんたなんかの婚約者に……! 私にはユリウス様が……」
「そのユリウスってクリシュト国の第二王子だろ? いいぜ、そんな男より俺を好きにならせてみせる」
「なっ?!」

 そんなこと嫌に決まってるっ!って言いたかったのに、冷静な私の頭がくるくると回ってある考えに思い至った。
 あれ? これもしかしてチャンスかもしれない。
 隣国のスパイの手引きでクリシュト国が大変なことになったし、それに聖女召喚も詳しい魔術師がいる国なんて現代に戻るヒントが絶対何かあるはず。
 そうか、それを探しだしてこの国を脱出する。
 そして、私はクリシュト国に、ユリウス様の元に戻るのよ!

「どうした? 威勢がいいのは終わりか?」
「いいえ、あなたのその条件受け入れるわ」
「ほお?」
「あなたが私を振り向かせることができたらあなたと婚約する。これでどう?」
「なるほどな、いいだろう。その条件飲んでやる」

 よしっ! これで手がかりを堂々と探せる!!

 レオは頬杖をつき、余裕の表情を浮かべて私のほうを見つめる。
 そのアメジスト色の色気のある瞳にくらくらしそうになるが、なんとか自我を保つ。

 そう、これはあなたと私の勝負よ!

 こうして、レオとの奇妙な勝負は始まった──



******************************



【ちょっと一言コーナー】
レオという名前はわりと悩みました。
でも呼びやすくて気に入ってます。



【次回予告】
レオと約束を交わしたユリエは心の中で現代、そしてクリシュト国への帰還を誓う。
一方、ユリエのいなくなったクリシュト国では……。
次回、『あなたがいない日々なんて~SIDEユリウス&アルベルト~』。
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