【完結】王太子と婚約した私は『ため息』を一つ吐く~聖女としての『偽りの記憶』を植え付けられたので、婚約破棄させていただきますわ~

八重

文字の大きさ
15 / 32
隣国陰謀編

第15話 あなたがいない日々なんて~SIDEユリウス&アルベルト~

しおりを挟む
 アルベルトは隣国コーデリア国へ密偵を送り、引き続き情勢の調査をおこなっていた。

「ユリエ様が?!」
「はい、この国にいます」
「まさか誘拐か?」
「可能性はあります。しかし……」

 状況を報告する密偵は口ごもって慎重に報告を続ける。

「どうやら第一王子のもとにいるようで」
「第一王子というと、レオ・シェベスタか」
「はい」
「なぜその方のところに……」
「少し様子を探ってみます」
「ああ、頼んだ」

 アルベルトは早馬でユリウスに「ユリエが隣国にいること」と「誘拐された可能性がある」ことを伝えた。

「無事でいてください、ユリエ様……」



◇◆◇



 クリシュト国では聖女様──ユリエがいなくなったことによって王宮内は大騒ぎとなっていた。

「アルベルトっ! ユリエは?!」
「話しますから落ち着いてください」
「あ、ああ……」

 ソファに浅く腰をかけてアルベルトに言われたように、落ち着かせようとする。
 目を一度閉じてゆっくりと呼吸したあと、目を開いてもう一度アルベルトを見た。

「報告を頼む」
「かしこまりました」

 アルベルトは何度かに分けて密偵に調査させた様子をユリウスに報告した。

「早馬で伝えた通り、ユリエ様がコーデリア国にいるのは確かです」
「誘拐されたのか?」
「イレナからの報告と突き合わせてもやはり誘拐されたのだと」

 その言葉にユリウスは、怒りを押し殺して状況報告を聞こうと耳を傾ける。

「しかし、なぜかユリエ様に逃げる素振りがないため、なにかしら意図があるものと思われます」
「逃げる素振りがない?」
「はい、第一王子とも何かに怖がるような様子ではなく普通に話しております」
「…………」

 ユリウスは口元に手をやって少し考えると、何かに気づいたように語り出した。

「もしかして聖女召喚について調べている? あるいは帰還方法について探している?」
「ユリエ様なら可能性は十分にあります」
「その可能性が高いな」

 報告を全て終えたアルベルトはユリウスに礼をしたあと、再び仕事へと戻った。
 その場に残されたユリウスは目を閉じてソファでうなだれる。

(調査をしているかもしれないが……それでも心配すぎる)

 一人で抱え込む癖のあるユリエの心配をして、ユリウスは国王に隣国に兵を送る要請をしに執務室へ向かった。



「ならん」
「なぜですっ?!」
「ユリエが誘拐された可能性があるとしても証拠は現時点ではない。それで兵は動かせない」
「く……っ!」

 証拠がない以上不用意に隣国に兵を送ったり、交渉ができないことを告げられると、ユリウスは歯がゆい気持ちで拳を握り締める。

(すぐに助けにいけないなんて……)

 ユリウスはその足で裏庭にある『聖樹サクラ』の木のもとへと向かった──



 聖樹に手をあてて目をつぶり、ユリエとの言葉を思い出す。


『その、恥ずかしいのですが、ホームシックになっていたようでして』

『私は帰れるのだろうか、って』


(あなたはまた寂しい思いをしているのではありませんか?)

 ユリウスはユリエの悲しい顔、そして笑顔を思い出す。
 そして心の中で誓う。


(もう二度とあなたを悲しませない。もう二度と帰れないと寂しい思いをさせない)

 ユリウスは聖樹に誓ってそして背を向けて歩き出した。

(必ず無事にあなたをクリシュト国へと連れて帰る策を練ります。だから無事でいてください)






******************************



【ちょっと一言コーナー】
更新遅くなってしまい、申し訳ございませんでした。
アルベルト、そしてユリウス視点のお話を書かせていただきました。


【次回予告】
聖女召喚、そして現代への帰還方法を見つけて無事に帰ることを誓ったユリエ。
しかし、コーデリア国での聖女の扱いは予想外なもので……。
次回、『虐げられた聖女』。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】追放された大聖女は黒狼王子の『運命の番』だったようです

星名柚花
恋愛
聖女アンジェリカは平民ながら聖王国の王妃候補に選ばれた。 しかし他の王妃候補の妨害工作に遭い、冤罪で国外追放されてしまう。 契約精霊と共に向かった亜人の国で、過去に自分を助けてくれたシャノンと再会を果たすアンジェリカ。 亜人は人間に迫害されているためアンジェリカを快く思わない者もいたが、アンジェリカは少しずつ彼らの心を開いていく。 たとえ問題が起きても解決します! だって私、四大精霊を従える大聖女なので! 気づけばアンジェリカは亜人たちに愛され始める。 そしてアンジェリカはシャノンの『運命の番』であることが発覚し――?

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~

白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。 王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。 彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。 #表紙絵は、もふ様に描いていただきました。 #エブリスタにて連載しました。

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

この野菜は悪役令嬢がつくりました!

真鳥カノ
ファンタジー
幼い頃から聖女候補として育った公爵令嬢レティシアは、婚約者である王子から突然、婚約破棄を宣言される。 花や植物に『恵み』を与えるはずの聖女なのに、何故か花を枯らしてしまったレティシアは「偽聖女」とまで呼ばれ、どん底に落ちる。 だけどレティシアの力には秘密があって……? せっかくだからのんびり花や野菜でも育てようとするレティシアは、どこでもやらかす……! レティシアの力を巡って動き出す陰謀……? 色々起こっているけれど、私は今日も野菜を作ったり食べたり忙しい! 毎日2〜3回更新予定 だいたい6時30分、昼12時頃、18時頃のどこかで更新します!

婚約破棄された聖女様たちは、それぞれ自由と幸せを掴む

青の雀
ファンタジー
捨て子だったキャサリンは、孤児院に育てられたが、5歳の頃洗礼を受けた際に聖女認定されてしまう。 12歳の時、公爵家に養女に出され、王太子殿下の婚約者に治まるが、平民で孤児であったため毛嫌いされ、王太子は禁忌の聖女召喚を行ってしまう。 邪魔になったキャサリンは、偽聖女の汚名を着せられ、処刑される寸前、転移魔法と浮遊魔法を使い、逃げ出してしまう。 、

処理中です...