【完結】王太子と婚約した私は『ため息』を一つ吐く~聖女としての『偽りの記憶』を植え付けられたので、婚約破棄させていただきますわ~

八重

文字の大きさ
16 / 32
隣国陰謀編

第16話 虐げられた聖女

しおりを挟む
 あのーさすがに視線が痛いんですけど……。
 「第一王子の懇意にしてる女」ということで王宮内を自由に動けるようになったけど、それにしても視線が痛い。

「なんでレオ様はあんな『聖女』なんか」
「やだ……。なんで私の憧れのレオ様があんな貧相で女の色気のかけらもなさそうなやつを」

 おい、聞こえてるぞ。
 うっかりちょっと口悪くなるくらいひどい扱い、言われようにさすがに居心地が悪い。
 とりあえず書庫室がないか探さないと……。

「うわっ!」
「なにをするのですか! 全くっ! あなたみたいな『聖女』の小娘がわたくしに触れるだけでも……ああっ! 汚らわしい!!」

 明らかに偉そうな宰相っぽい人に肩をあてられて暴言を吐かれる。
 なに、このクリシュト国との扱いの違いは。
 やっぱり『聖女』が奪われたことが許せないんじゃなくて、『聖女』そのものが憎いの?

「まったく、伝承の通りやはりまた裏切ったんでしょうな。今度はクリシュト国を裏切って我らに乗り換えるとは、あさましい」
「ち、ちがいます!」

 やっぱり『聖女』そのものがみんな憎いんだ。
 こうして彼と話しているときも、遠巻きにみんなひそひそと話しながら私に視線を向ける。
 その視線はとても歓迎するようなムードではない。

 結構精神的に堪えるかも……。

「皆、それ以上言うと俺が許さない」
「レ、レオ様!」

 廊下にいた者もそして大階段の広間にいた者も、皆揃って跪く。
 曲がりなりにもやっぱり彼はこの国の第一王子なんだと気づかされる。
 すると、突然私の視界がぐらっと揺れて気づいたら彼の腕の中にいた。

「なっ!」

 彼に肩を抱かれる感じでしっかりホールドされている状況に、これまたなんとも居心地が悪く感じる。

「皆控えろ! 『聖女』は確かに裏切者かもしれない。だがこいつは違う」

 なんだ、かばってくれるいいところが……。

「こいつは未来の妃だぞ!」

 は……?

 その言葉に皆広間中がざわざわとしてレオに口々に問いかける。

「レオ様! それは真実でございますか?!」
「ああ」
「未来の妃ということは、つまりレオ様とご婚約なさったと」
「ああ」

 嘘言いなさいっ!!!
 そこまで許可した覚えはないわよ!!!

 私は抗議の意味を含めてレオのほうを見るが、彼はにやりと笑うだけ。

「レオ様、私は婚約はまだ……」
「いいだろ? どうせ遅かれ早かれそうなるからな」

 どうやら彼の中私の負けは確定しているらしい。
 そう思ったら耳元で彼に囁かれる。

「国王にはまだ正式な婚約ではないことは伝えてある。安心しろ」
「でも、皆さんが……」
「これだけ俺が言えばある程度の王宮の人間がお前に危害など加えることはないだろう。王族に不満を持つ者も大っぴらには動かないだろうしな」
「レオ様……」

 そこまで考えていて言ってくれたの?
 まあ、かなり強引なんだけども……。

 じっと彼の顔を見つめてしまっていたために、がしっと顔を掴まれて顔を近づけられる。

「もしかしてもう惚れた?」
「──っ! 惚れてません!!」

 私はそのまま彼の手を払いのけて廊下をぷんすかしながら歩く。



◇◆◇



 レオの言葉が効いたのか、王宮では陰口もほとんど言われなくなったし過ごしやすくなった。
 それよりもなんだか王宮の外が騒がしいような気がして、私はそっちのほうが気になっていた。

「ディアナ?」
「なんでしょうか、ユリエ様」

 相変わらず可愛らしいお人形さんのような幼い見た目の彼女は、私にメイド服の裾をもってちょこんと挨拶をする。

「外がなんだか騒がしい気がするんですが、今日は何かの日ですか?」
「今日は『魔法祭』でございます」
「まほうまつり?」
「はい、この国の魔法に関する歴史を忘れないようにするための一年に一度のお祭りです」

 なにそれ、もしかしたらお祭りだからヒントはないかもだけど、何かあるかも?

「ありがとうございます」

 私はその足でこっそりと街へ出てみることにした。
 王宮の外への許可はもらってないから、カーテンを使って窓から降りてそこから変装して門を通って出た。


 王宮をうまく出て街に差し掛かったところで、何人かの男たちに囲まれた。

「その髪と目の色……まさか伝承の聖女様じゃないか?」
「ああ、『裏切者』の聖女様だ!」

 まさか、街の外でも聖女は歓迎されないの?!

 私はひとまず彼らから逃げようとするが、男の一人に腕をねじるように強く掴まれる。

「いたっ!」

 すると、騒ぎを聞きつけた人々がやってきて私に石やゴミを投げつける。

「聖女なんかいなくなれ!」
「お前のせいで魔法はなくなったんだ!」

 まずい……。
 これだけの人数から逃げられる方法は何かない?!

 まわりを見渡しても人、人、人。
 道の真ん中だから何もないし、元来た道も隠れる場所なんてないし……。

「──っ!」

 目のあたりにあたった石で傷ついたのか、目尻と頬に血が流れる。
 どうしよう、走って逃げるしか……。


「やめろ」


 考えを巡らせる私の耳に低い声が届くと、急に優しく抱き寄せられた。
 私はその感触に覚えがあった──

「レオ……様……」




******************************



【ちょっと一言コーナー】
聖女の扱いがこれほど違うとは、厳しい……。
未来の妃と言われてしまったユリエちゃん。
心の中ではそろそろユリウスに会いたいななんて思ってる頃。


【次回予告】
聖女というだけで王宮でも街でも虐げられる聖女。
そんなピンチを救ったのはレオだった。
そしてレオと魔法祭をまわることになって……。
次回、『コーデリア国魔法祭』。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】追放された大聖女は黒狼王子の『運命の番』だったようです

星名柚花
恋愛
聖女アンジェリカは平民ながら聖王国の王妃候補に選ばれた。 しかし他の王妃候補の妨害工作に遭い、冤罪で国外追放されてしまう。 契約精霊と共に向かった亜人の国で、過去に自分を助けてくれたシャノンと再会を果たすアンジェリカ。 亜人は人間に迫害されているためアンジェリカを快く思わない者もいたが、アンジェリカは少しずつ彼らの心を開いていく。 たとえ問題が起きても解決します! だって私、四大精霊を従える大聖女なので! 気づけばアンジェリカは亜人たちに愛され始める。 そしてアンジェリカはシャノンの『運命の番』であることが発覚し――?

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~

白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。 王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。 彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。 #表紙絵は、もふ様に描いていただきました。 #エブリスタにて連載しました。

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

この野菜は悪役令嬢がつくりました!

真鳥カノ
ファンタジー
幼い頃から聖女候補として育った公爵令嬢レティシアは、婚約者である王子から突然、婚約破棄を宣言される。 花や植物に『恵み』を与えるはずの聖女なのに、何故か花を枯らしてしまったレティシアは「偽聖女」とまで呼ばれ、どん底に落ちる。 だけどレティシアの力には秘密があって……? せっかくだからのんびり花や野菜でも育てようとするレティシアは、どこでもやらかす……! レティシアの力を巡って動き出す陰謀……? 色々起こっているけれど、私は今日も野菜を作ったり食べたり忙しい! 毎日2〜3回更新予定 だいたい6時30分、昼12時頃、18時頃のどこかで更新します!

婚約破棄された聖女様たちは、それぞれ自由と幸せを掴む

青の雀
ファンタジー
捨て子だったキャサリンは、孤児院に育てられたが、5歳の頃洗礼を受けた際に聖女認定されてしまう。 12歳の時、公爵家に養女に出され、王太子殿下の婚約者に治まるが、平民で孤児であったため毛嫌いされ、王太子は禁忌の聖女召喚を行ってしまう。 邪魔になったキャサリンは、偽聖女の汚名を着せられ、処刑される寸前、転移魔法と浮遊魔法を使い、逃げ出してしまう。 、

処理中です...