LOZ:彼は無感情で理性的だけど不器用な愛をくれる

meishino

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誰も止められない愛情狂編

210 私と彼女と遊園地

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 楽しい、楽しい楽しい。今日の私は、ずっとエラーを起こしている。キルディアと同じ想いで、例え恋人ではなくとも、デートが出来る仲にはなれた。何より、彼女も私といることで、楽しんでいるこの状況こそが、幸せだった。

 先程は、酷い目に遭った。楽しげな気分で麻痺した私に、急に襲いかかって来た、この世の闇の部分。昔から、私はもっと、美しくない方がいいと思っていた。女性から、男性から好奇の目で見られて、通り過ぎざまに尻を触られることもあった。

 そうでありながらも、研究があったから、没頭出来た。どんどんと人と交流することを恐れ、忘れ、私自身までもが機械化した。カタリーナと結婚した。彼女はお金があった。

 それまでも周りの人物は、私が美しいから求婚した。才能があるから求婚した。それに応じることは、その者の欲を満たす行為、その者の奴隷になることだと、私は考えた。嫌悪感、しかし政略的なら、それよりかは幾分、良いと思えた。

 それは間違っていた。それこそが、今となっては、もう本当に、史上最悪の足かせだった。結婚は奴隷になることなのなら、私はキルディアの奴隷になりたい。奴隷でいいから、そばにおいてほしい。

 喜んで、彼女の如何なる命令にも従おう。そして、キルディアもまた、私の奴隷なのだ。彼女は私のもの、彼女は私だけを守るナイトなのである。そう、私だけを守らナイト。いけない、リンの影響受けた。

 私は今、キルディアと一緒に、ジェットコースターの最前列に乗り、最初の大きな坂を上昇している。キルディアは私の手をがっしりと握っている。

 どうやら彼女は、恐怖心を抱いているようだ。ここは男らしくいきたい。こう言った危機的状況の際に、冷静でいられる男性に、女性は魅力を感じるのだと、脳科学の情報がある。そしてその情報は、オフホワイトで得たものだ。

「ジェーン!もう下がるんじゃないの!?これ!落ちるよ!落ちるよ!」

「ふふ、キルディア、私がいます、ご安心なさい。しかし意外ですね、あなたがこれほど怖がるとは。」

「あ、あのねえ、これって凄く速いんだからね!帝国一の絶叫コースターなんだからね!ジェーン本当に大丈夫なの!?」

「そんな何を言いますか。私は、あの時空間歪曲機から放り出されていてもおおおおおお!」

 予想よりも、ジェットコースターの速度があった。私は絶叫し、キルディアは一転して、「フウフウ~!」と両手を上げて楽しんでいる。

「両手を上げてはなりません!死にます!」

「ちょ、ちょっと首閉めないで!ジェーン!」

「ああ、ああ!ああ、何ですか、あのぐるりと一回転しているコースは!?目の前に迫っています!」

「ああ、だから一回転するんでしょ!離して!」

「この速さでですか!?遠心力で首がポッキリ折れます!」

「その前にジェーンのせいで私の首がもげそうだ!離してったら、ほら来た来た!」

 私は、叫ぶことも出来なかった。我が首がポロリと取れるかと予想したが、幸いにも生き延びることができた。今日は帰宅したら、思いっきりキルディアにキスしたくなった。生物は、身の危険を感じれば感じるほど、生殖しようと考えるものだ。

「……絶対に、帰宅してからは、激しいキスをします。」

「え!?何でそうなる!?あ、また来たよほら~!やったねジェーン!ふう~!いやあこんなに風を感じることが出来るなんて最高だよ!」

「……、もう降りたいです。」

「もうすぐ終わるから大丈夫だって!私がついてるよ!」

 と、ギュッと私の手を繋いでくれた。もう、すぐにでもキルディアにキスしたかった。私がキルディアに口を寄せようとしたが、届かなかった上に、キルディアにその顔を見られた。

「ジェーン!このストッパーがあるからこれ以上動けないって!あっはっは!」

「……いいです、後で取っておきますから。」

 次です。次こそ、私が彼女よりも冷静でいられて、守ってあげられる、それが可能のアトラクションを選択するつもりだ。キルディアに支えてもらいながらジェットコースターから降りた私は、次に目の前にあった施設を選んだ。

「お次はあれです。」

「あ、ああ、メリーゴーランド?いいよ!乗ろう乗ろう!」

 キルディアは楽しげに私の腕を引っ張って走り出した。我々に取って、人生初の遊園地、彼女がこんなにも喜んでくれるのなら、良かった。

 キルディアは茶色い馬を選んだ。私もその隣の茶色い馬に乗ろうとしたが、彼女が違う方向を指差した。

「ジェーン、あれにまたがって!」

「どれ……こちらでしょうか?」

「そうそう!ウォッフォンで撮るから!」

 私は白馬に跨った。ならばと私も、ウォッフォンを私に向けるキルディアにウォッフォンを向けた。夜ということもあり、メリーゴーランドの電飾が輝きを増している。そして動き出すと、私は慌てて棒を掴んだ。予想よりも、速度が出ていたからだ。

「ジェーン、こっち向いて!」

「無理です。私は顔を動かせません。もしそうした場合、私は落下するでしょう。」

 次です。次こそは、キルディアに格好いい私を見せたい。先程キルディアが撮影した動画には、可愛らしい白馬と、それに跨る不動の男が写っていた。夜風になびく長髪が、憎らしかった。次です!

 私は辺りを見回した。海をテーマにした楽園、所々に気味の悪い、魚の銅像が建っている。そしてうろうろと、魚や果物の大きな着ぐるみが歩いていた。一組の男女が、顔のついたパイナップルと一緒に撮影をしているのを発見した。私はそれを選んだ。

「キルディア、あのパイナップルと共に撮影しましょう。」

「え?ああ、あれって、ここのキャラクターだったんだ。リンがボールペンを持ってたよ!いいね、パインちゃんと一緒に撮ろう!」

 我々はパイン様の元へと赴いた。そしてあることに気が付いた。このレジャー施設に来てからというものの、キルディアが積極的に、私と手を繋いでくれている。これは、今夜はいけるかもしれない。しかし肝心の親密なスキンシップに関する情報が、私には不足している。

「いっくよ~!はいチーズ!」

 元気な様子のスタッフにより、我々はパイン様との撮影を完了した。キルディアがそのデータをスタッフから受け取っている間に、私はクラースにメールをした。

『ご教示願う! どのように性交すれば、宜しいでしょうか? A.J.S』

 よし、これでいい。だが問題が発生した。私としては、キルディアがこちらに戻ってくる間に、その答えを確認したかったのだ。しかしクラースはその不器用さ故、返事が遅い。しまった、計算し忘れた。

 とうとうキルディアが戻って来てしまった。可愛らしい、ひまわりのような笑顔で。

「ねえジェーン!画像もらったから、後で転送するね!二人とも写りいいし、楽しい思い出だし、私これを、PCの待ち受けにするよ!」

 ほお、それは嬉しい。

「どちらのPCですか?」

「え?えっと、家庭用の方。」

「家庭用と職場用、どちらもそれにしてください。私もそうしますから。ねえ、お願いします。」

「わ、分かったよ……。」

 ちょっと娼婦のようにお願いするだけで、意外とキルディアは解こされる。その塩梅が少し見えてきた。攻め口がね。ふっふっふ。

「ジェーン、なんか悪巧みしてる?顔がすごいよ。」

「いえ、何でもありません。では次です、次はあの洋館です。」

 私は禍々しい洋館を指さした。すると、キルディアの表情が一瞬で曇った。

「ええ……あれってお化け屋敷かなぁ?私そういうの無理なんだけど、その中ではジェーンを守れないよ。」

「私が守ります。私だって、あなたを守りたいのです。」

 よし、これでいい。不安げなキルディアのお手手を握り、私はその洋館へ赴いた。少しばかり列が出来ていた。人気のアトラクションのようだ。だが、その洋館に住んでいると思われる、ヘロヘロという化物が、気になる発言をした。

『お前たちも恐怖のど~ん底に落としてやる。無重力で、一気に激突だ!フゥアッハッハッハ!』

「聞いたジェーン?」

「ええ、聞きました。様子がおかしいです、それに、建物の奥から他のお客様の絶叫が聞こえます。選択ミスをしました。キルディア、違うのにしましょう?」

「え?もう我々の番だよ?スタッフさんが、次ですよって言ってたの、聞いてなかったの?大丈夫、行ってみようよ。」

「……。」

 お化け屋敷では無かった。薄暗い通路を歩いていくと、その先の部屋は、無情にもジェットコースターと同じような椅子が、映画館のようにずらりと並んでいた。

 ああ、道理で、お化け屋敷にしては、入ってすぐの箇所に存在していた、エレベーターが気になっていた。なんだこの構造は、と。そうか、私達はこれから、垂直落下をするらしい。

 席に座った。隣は勿論キルディア。しかも楽しげである。

「これって真下に落ちるやつだよね、きっと!うわあ~、そんな経験ないから楽しみだよ!」

「あなたドMですか?」

「なんでよ……ああ!ほらほら、来たよ!」

『お前たちは恐れ知らずのようだな、ヒッヒッヒ!』先程のヘロヘロの声だ。私は恐れを知っているので、どうかご容赦願いたい。『今すぐに落としてやるぞ~FIVE、 FOUR、THREE、TWO……ONE!』

 落雷のSEと共に、私達は落下した。意識が遠のきそうだった。しかしその後だった、更にまた上昇し、また落下したのだ。隣のキルディアは楽しそうだったが、私はずっと黙っていた。終わると、キルディアは私を支えてくれた。

「ジェーン、今日とても頑張ってるけど、大丈夫?無理して私に合わせなくていいんだよ?」

「だ、大丈夫です……あなたの笑顔が見たい。それに守りたいのです。」

「……ジェーン。」

 私の発言に、彼女が感動しているような表情だった。よし、もう一押しに違いない。建物から出た時に、私はキルディアに言った。

「少しウォッフォンを確認します。連絡があったと思いました。」
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