クリスマスには✖✖✖のプレゼントを♡

濃子

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ー28ー クリスマスには、✖✖✖のプレゼントを♡

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 早すぎるって?




 だってね……、ぼくが景君にプレゼントできるものって、何にもないでしょ?マフラーとか手袋とか冬の定番ものも、喜んでくれるだろうけど、蓮と違ってぼくってセンスがないし…、選べる自信がない……。家電は、なんかおかしいし……。

 じゃあ、『気持ち的なもの』がいいと思うんだけど。気持ちってなんなんだろ?ーー気持ちって、そのひとにしてあげたいことだし……、ぼくが景君にしてあげたいーー、あげられることって、ーーこのぐらいでしょ?

 ーー景君が言ってた……、エッチなパンツを履く!ーー景君が望むならそのぐらい、なんてことない!ーーーって、…思ったんだけどーー……。



 え?履いたの?って?………履きました!黒のすけすけレースの紐パンツを、この地味メガネが履きましたよ。笑ってください……、ぼくだって自分を笑ってましたからーー……。


「ん……、変な感じ……。やっ、やっぱりやめようかな……」
 お風呂は一緒にはいったけど、景君には先に出てもらった。ほ、ほら、ぼくのほうは準備があるでしょ?景君が見てたら、ーーあんなところ洗えないし……。

 コンコンッ。
『ーー実律?』
「あっ!すぐに行くから!」
 バスローブをきっちり着て、ぼくは脱衣場から出た。

 うわぁ……、履いてきたままだよ……。どうしよう、笑われたら……。

「実律……」
 う~~~~っ!バスローブ姿の景君……、裸よりも、なんか色気が増してる……。な、なんでだろ……?

 最上階のスイートルームなんて、こ、こんなの……、ぼくが泊まってもいいの?………けど、……この時期に予約なんかできないはずだし、ーーまさか、まさか景君、誰かと泊まる予定だったんじゃーーー……。


 一面窓ガラスって、とんでもない開放感のお部屋だ。ガラスの向こうに見える街が、キラキラと輝くイルミネーションで彩られ、夜なのにまるで宝石箱のように煌めいているよ。

「ーー複雑……」
「え?高いところ、怖いのか?」
「ーー誰と泊まる予定だったの?」
「実律だけど?」
「嘘だ…。こういうところって、予約なしじゃ無理でしょ?ぶぅーーっ」
 思わずむくれてしまったぼくを、少し困った顔で景君が見てきた。

「悪い……。今回だけは、倉内に頼んだ」
「え?」
「ここは、あいつの親の子会社のホテルなんだよ」
「………」
 倉内さん、チートすぎる……。


「何か飲む?」
「ううん。……ありがとう……、大丈夫……」
 ぼくはベッドの端のほうに座って、思わず膝を抱えてしまった。こんなとこで三角座りしてどうすんの?ーー景君なら何も心配ないでしょ?むしろ景君に抱いてもらえるんだよ?この幸運は何億の宝くじが当たるよりすごいことだって思うよ……。






 ーーこの数日間で、ぼくのすべてが変わったような………、もちろん良い方にだけどーー。でも、なんだろう……、最後の悪あがきっていうのかな?自信のない自分が、心配性の自分が、……うじうじ立ち止まってるって感じで……。

 意気地がない……。好きなひとといるだけで幸せなのに……、景君のいない人生なんて考えられないのにね……。

「実律」
「景君……、ね、寝る?」
​「寝かさないよ……」
 景君がぼくの耳元に唇を寄せてきて、いつもより低い声で囁いた。耳に残る声がひどく甘くて、これからの行為を連想させるその甘さに、ぼくの身体が温度をあげていく。

 バスローブをゆっくりと肩から引き下げられ、ぼくは息を呑んだ。
「ーーずっと思ってたけど、実律はきれいだな……」
「……」
 景君の言葉に、ぼくは反射的に目を閉じてしまった。だけど、暗闇の中でも景君の熱い視線を肌に感じて、ドキドキで胸がパンクしてしまいそうになる。


 ーーそんなわけないけど……、でも、景君がそう言ってくれるなんて……。


「ーー実律……」
「あっ……、電気!」
 明るいんじゃ、モロモロ丸見えなんじゃーー。さすがに初心者は、『電気を消す券』、を使ってもいいと思うんだけど……。

「全部みたい」
「え!?」
「何年越しだと思ってる?全部見せるまで帰れないと思ってくれ」
 身体がふっと浮くような浮遊感を感じたと思ったら、ぼくはベッドに横たわり、そこから景君の端正な顔を見上げていた。

「ーー夢のようだ……。実律が俺の下にいるなんて……」
「景君……、ーーがっかり、すると思うけど……」

 ーー嫌わないで……、なんて身勝手なお願いはしたくない……、でも……、

「ばかなことを言うな、いい加減怒るぞ」
「……う……、だって……」
「俺はもう、平静じゃないんだからーー……」
 景君がぼくのバスローブの裾を手で割り、太ももをまさぐる。

「ひゃん!」
「実律……」
「えっ、……あっ……、その………、変な声だして…ごめんなさい……」
 顔の熱さが、とんでもない。火がでてないか心配になるぐらい。

「いい!いくらでも聞かせてーー!」
 ぼくの目がおかしいのか、景君の顔も赤くなっている気がするよ。
「えっ?」
 そ、そんな、景君に聞かせるようなものじゃないよ……。戸惑うぼくを抱きしめて、景君が唇に優しいく触れるキスをくれた。角度を変えて、何度もキスされるんだけど、ーー少し、もどかしいかも……。もっとはじめてのキスのときみたいに、激しいキスがいいなぁ……。

 ーーって思ってたら、だんだんとんでもないことになってきた。

「……っん…、ふっ」
 呼吸もできないほどの熱く気持ちいいキスに、ぼくは頭の中が溶けてしまっていた。何にもかんがえられない。ーーもう、何にも考えたくない……。

「ーー実律……、すごい可愛い……、俺のために、履いてくれたんだ……」
 興奮気味の声にぼくはハッとする。ーーしまった、こっそり脱ぐの失敗だよ。

 これは、もう、開き直るしかない!

「ーーぼ、ぼくからの……、クリスマスプレゼントーー、……なん…ちゃってーー……」
 笑ってください!笑ってもらえたら光栄です!

「ーーありがとう!信じられないほどうれしいよ!実律を全部くれるんだな!?ーー今日は無理かと思ったけど、俺、がんばるからーー!」

 ーー何を……?ん?お尻に挿れて終わりじゃないの……?


「脱がすのがもったいないーー、このまましたいーー……」
 こんな無邪気にはしゃいだ景君はじめて見るかもーー。可愛さレベル無限大だよ♡

「景君……、……いままでもこれからも、ずっと好きだよ……」
「ああ!俺も同じ気持ちだ!」
「ーーけ、景くーーーんッ!ちょっ、何してるのぉ!」
「実律ーーーッ!」


 ーー景君が、景君が、……野獣みたいになって……、クリスマスの聖夜にぼくはぺろりと食べられちゃいました。

 骨も残らないぐらい愛されたぼくは……、幸せな支配の中、気を失ってしまってーー………。





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