社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します

湯崎noa

文字の大きさ
19 / 201
第1章・綺麗なエルフ族の女の子

018:模擬戦

しおりを挟む
 俺の目の前には、フーッフーッと餌を前にした犬かと思う様なアランが立っており、俺の事を今にも殺しそうな目をしている。
 それくらいの感じで来てくれなければ、俺としては目立つところが無いからな。


「メインイベント………スタートだぁあああ!!!!」


 司会者のコールと共にメインイベントの模擬戦が始まる。
 俺としては後手に回って様子を見たいところだが、アランは木刀を握ったまま動こうとしていない。
 それなら俺から動くしか無い、チャンピオンに動いてもらうにはチャレンジャーから仕掛けなきゃな。


「開幕はもらうぞ!!」

・高速移動魔法Level2

「おいおい。まだまだ遅いじゃねぇか………これで英雄に勝てると思ってんのか!!」

・砂魔法Level3《サンド・ハンド》


 高速移動魔法で速度を上げて距離を潰したが、やはり英雄クラスの冒険者で、簡単に俺の動きを捉えていたのである。
 アランは自分のオリジナルスキル《砂男サンド・マン》の能力で、地面から大きな砂の手が出てきて俺を捕まえる。


「これがオリジナルスキルの力か………確かに土魔法よりも遥かに攻撃しづらく防御もしづらい」

「捕まったら終わりだって事を教えてやるよ!!」

・砂魔法Level3《水取り砂ウォーター・トマール


 捕まったら終わりだって?
 ここからの脱出方法なら色々と思いつくが、さっきから口の中がカラカラになってんな。
 まさか!?
 触られているうちは俺の体内の水分を奪っているのか。


「喉乾いちゃうじゃん!!」

・水魔法Level1《ウォーター・ボール》

「ちっ。水魔法も使えたのか………」


 こういう砂を使って戦う人間というのは大抵、水が弱点だというのは鉄則だ。
 そこで俺は大きいウォーターボールを作ると、考えていた通りに俺の体が濡れた途端に砂が壊れていった。


「危ない危ない。開始早々に、干し肉みたいになっちゃうところだった」

「気を抜いてんじゃねぇ!!」

「本当に危なっ!?」


 砂から解放された事に少し気を緩めているうちに、アランは飛びかかって来ており、俺は慌てて真横に飛び避けた。
 するとさすがは英雄さまと言ったところか、地面がドーンッという爆発音と共に抉れていた。
 間一髪で避けられたが、俺の立っているところの地面から何やら嫌な感じがした為に避けると、地面から砂の手が出て来る。


「少しの油断をさせてくれないってわけね………オッケーオッケーッ!! そう来なくっちゃ楽しく無いよな!!」

「そう言ってられるのも、今のうちだぞ………この木刀で、お前の頭をカチ割ってやる」

「そう簡単にはいかないのが人生ってわけよ!!」

・炎魔法Level1:ファイヤーボール
・風魔法Level2:ストーム

――――炎龍の吐息ドラゴニック・ブレス――――


 炎魔法と風魔法を組み合わせた、ドラゴンの炎をアランに向けて打つと、アランは逃げる事なく真っ正面から受け止める。
 どうみたって避けないという事は、防ぎ切る自信があるからで俺は第二の矢に集中をしている。


「甘いんだよっ!! こんなもんで、俺が焦げるとでも思ってんのか………お前の攻撃、行動、言葉の全てが俺を苛立たせる」

・砂魔法Level4《砂の竜サンド・ドラゴン

「うぉ!? アンタ俺に対抗して、ドラゴンを出して来たんだな………中々に盛り上げ上手だな!!」

・水魔法Level2《ウォーターボール》
・土魔法Level2《ゴーレム》

――――泥の竜マッド・ドラゴン――――


 アランが砂の竜を出して来た為に、俺は観客を盛り上げる為に水魔法と土魔法を合わせた泥のドラゴンを合わせたのである。
 砂のドラゴンと泥のドラゴンは、互いに向かって突っ込んでいき、ぶつかって2つとも消滅してしまった。


「なんだと!? たかだか泥の竜に、俺の砂が負けるわけはずがない………」

「そうやって現実をみないから成長しないんだよっ!!」

「なに!? いつのまに死角に入っていた!!」


 アランは自分が出した砂の竜が、俺のドラゴンと相打ちになった事に衝撃を受けていて、俺の存在に気がつくのが遅れる。
 こうなるであろうと分かっていたので、俺は砂が飛び散って視界が悪くなった瞬間に、アランの死角に飛び込んでいた。
 そのまま反応が遅れてしまったアランに、俺は躊躇なく木刀を振るうと防ごうとしたがモロに喰らって吹き飛んでいった。


「思ったよりも吹き飛んでいったな。これにプラスして、筋力増強魔法を使ったら、木刀でも真っ二つにできるんじゃないか?」


 木刀で殴ったとは思えない威力で、俺も少し驚いて木刀でも人を真っ二つにできるのでは無いかと考えた。
 コロッセオの壁まで吹き飛んだアランは、砂埃の中から服は破れて上半身が裸になってはいるが、体は無傷なままだった。


「なに? あれだけ喰らって、体は無傷だってのか………まさか回復系の魔法を持っている?」

「思ったよりも効果があるみたいだな………力が溢れて来るようだ!! お前を殺して栄光を手にするまでは倒れない!!」

・砂魔法レベル5《砂地獄サンド・オブ・ヘル


 アランの目は真っ赤になっており、明らかに常人の目ではなく観客は気がついていない様だが、俺にはハッキリと見えている。
 あまりにもハイになっている事から、俺は警戒する為に木刀を構えると、アランはLevel5の砂魔法を使って来た。
 地面の土は砂に変わって、俺は段々と砂の中に足を取られていき沈んでいく。


「ちっ。蟻地獄ってところか………」

「沈んでしまえ!! Level5を防ぐ方法なんて、お前の様な駆け出し冒険者には無いだろう!!」

「確かにな。魔法のレベルでは、対抗はできやしない………だがな。魔力量では引きを取らないんだよ!!」

・筋肉増強魔法レベル2


 舐められたもんだな。
 魔法レベルは俺のオリジナルスキルの副作用として、どれだけ鍛えても上がる事は無い。
 しかしレベルを補う方法として、俺には常人の人間とは比べ物にはならないくらいの魔力量を誇っている。
 それを証明する為に、俺は筋力増強魔法を使って、全力で地面を木刀で殴ると足周辺にあった砂が空中に舞い上がる。


「なんだと!? ただのLevel2の増強魔法で、俺の砂を蹴散らしただと!?」

「まだまだ、俺のレベルを上げさせてもらうわ………お前の砂魔法を持ってな」

・水魔法Level2《ウォーターベール》


 自分の砂を蹴散らされた事に、勝ったと勝手に思ったアランはショックを受ける。
 俺はアランのスキルをコピーして、さらに高みへと登ってやろうと考えている。
 その為に近づこうと体に水を纏う魔法を使って、アランの砂地獄を簡単に攻略してしまったのである。


「そんなはずは無い………そんなはずは無いんだっ!!」

「そんな真っ向から来てくれた方が助かるわ!!」


 アランは真っ向から魔法を使う事なく、俺に飛びかかって来て今試合において初の超接近戦となる。
 木刀1本分くらいの距離で、互いに木刀を振って致命傷を与えようとするが、さすがは英雄と言ったところで、この集中力と攻撃の密度で疲れなんて見えて来ず隙が現れない。
 ここに来て魔法ではなく剣術で勝負して来るとは、魔法では俺に勝てないと認めた様な気がするが、その気合に付き合う。


「この距離なら水なんて、対して関係なくなるぞ………」

「ま まさか!?」

「突き破れ!!」

・砂魔法レベル3《サンド・スピア》


 アランは俺が至近距離で剣術に集中する事を狙っていた。
 ここまで近づかれていたら、水を纏っていようが突き抜けて俺の体を砂の槍が突き刺さった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

世の中は意外と魔術で何とかなる

ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。 神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。 『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』 平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

処理中です...