社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します

湯崎noa

文字の大きさ
55 / 201
第2章・モフモフで可愛いケモノっ子

054:先祖返り

しおりを挟む
 カエデちゃんは両親が既に死んでいる事を知ると、放心状態から泣き叫び体からは近づけないくらいの電気を帯びていた。
 それを近くにいるシュナちゃんたちは、困惑の表情でエルマーも攻撃の手を止めて一部始終を見る。


「カエデに何が起きてるにゃ………」


 シュナちゃんは目の前で、何が起きているのか困惑しながらもカエデちゃんの事を心配している。
 すると一瞬、ピカッと眩しくて目を瞑ってしまうくらい光り、次の瞬間にはカエデちゃんの見た目が変わっていた。
 身長は元々の身長から40センチも高くなって2メートルは悠に超えているだろう、それに体の各所にモフモフの毛が生えており、獣人感が強くなっており爪も凶暴になっている。
 そして泣き腫らした為なのか、目からは涙と共に真っ赤な目をしている。


「ど どうなっているにゃ………」

「これは……まさか…」

「イローナちゃん、知ってるのかにゃ!?」

「これは多分だけど………


 シュナちゃんが困惑している中で、イローナちゃんには見覚えがあって、それは《獣神化》だとシュナちゃんに話す。


「獣神化って、何百年も前に消えたはずにゃ!!」

「私も思った。でも先祖返りしたとしたら?」

「それなら、まぁ納得はするけどにゃ……」


 獣神化と聞いて驚くのは当たり前だ。
 なんせ獣神化とは、獣人が進化する中で消えてしまった特性のようなモノで、それが突然に現れたのだから信じられない。
 しかしイローナちゃんの考えでは、カエデちゃんが獣神化したのは先祖返りしたからではないかという。


「はっはっはっ!! その2人と遥かに劣ると思っていたが、獣人が過去に最強と言われていた能力を持っていたとは……これはこれで金が取れる内容じゃねぇか」

「もう悩まない………お母さんたちの仇を取るまでは」

「良いねぇ。その目は、最高じゃないか………もっともっと俺の事を昂らせてくれよ!!」


 カエデちゃんは全ての感情をエルマーを倒す事だけに集中させて、戦っている間だけは無心になろうと誓った。
 エルマーは両手を広げて面白いと大笑いしている。


「首を刎ね飛ばす!!」

「速いっ!! そうだよな……身体能力が上がらねぇとな!!」


 俺よりも遥かに速い速度でカエデちゃんは、エルマーに襲いかかると爆発に怯む事なくエルマーの腕を切り裂く。
 俺たちとエルマーの戦闘において、カエデちゃんが初めて体に傷を付けられたのである。


「お前を奴隷にすれば、番犬として高く売れるだろうな………さぁ!! もっとかかって来い!!」

「その生意気や口を切り落としてやる!!」


 カエデちゃんは速さを生かして、エルマーの爆撃などを避けて攻撃を入れ圧倒し始める。
 押されているのはエルマーの方ではあるが、エルマーはカエデちゃんを奴隷にすれば高く売れると金の話をしている。


「そんな余裕を出せるのは、今だけだからな!!」

・獣神化《雷獣の咆哮》

「雷の技も使えるのか!! お前の価値が、ドンドン上がっているな!!」


 カエデちゃんは口を開けると電気の方向を、エルマーに向かって放った。
 それをエルマーは真っ正面から高火力の爆発で、防ぐと獣神化はしたが上手く使いこなせていない事を思い知らせる。


「怒りに身を任せるのは良いが、まだまだ身体操作はできていないみたいだな!!」

・オリジナルスキル『爆発人間ボマー

―――建物爆弾バティマン・ボム―――

「ゔっ!?」


 エルマーは向かってくるカエデちゃんに対して、建物を爆弾に変えて爆発に巻き込ませる。


「もっと鍛えてから出直すんだな!!」

―――悪魔の右脚ディアブロ・ボム・ストライク―――

「クソ!!」


 エルマーは怯んでいるカエデちゃんに向かって、踵落としをしながら爆破させる技で地面に撃ち落とし倒した。
 獣神化しながらも勝てないのかとシュナちゃんは絶望したが、今はカエデちゃんを非難させるのが優先だと行動する。


「イローナちゃん、ここは撤退するにゃ……カエデを守りながら戦うのは、今の私たちは無理にゃ」

「そうだね。ここは逃げるのが先決だと思う……」

・雷魔法Level3《閃光の落雷フラッシュ・サンダーボルト

「また、この目眩しかよ………まぁ良いさ。どの道、この町で捉えて奴隷として高く売ってやるからな」


 イローナちゃんの雷魔法で、エルマーの目を眩ましているうちにカエデちゃんを連れて撤退する。
 エルマーは追う気はなく、懐から葉巻を出すとプハーッと葉巻を吸って、いずれは捕まえて高く売ると高笑いする。



* * *



 場所は変わってエッタさんと、シャドーの戦闘になるが、こちらでも獣人は殺したんだと聞かされた後だった。


「嘘でしょ……獣人を殺して遺体を売った? 貴方たちは、それでも人間なの………知能が無いモンスターと同じじゃない!!」

「あんなケダモノと同じにするなよ。俺たちは己の金の為に、この世から不必要な獣人を消してやってんだ………いや駆除と言った方が正解か?」

「この下衆やろう!!」

・風魔法Level5《風神の怒号グリード・ハリケーン


 バラドンカンパニーは獣人を駆除してやったんだと言って、エッタさんからモンスターと同じケダモノだと言われる。
 そして怒りからの高位の魔法を放つが、シャドーはスピードタイプで高位魔法を撃つまでに背後を取られて、エッタさんの両足にクナイが刺された。


「うっ!? 足……」

「どうしたよ? そんな強い魔法を持ってんのに、こんなクナイなんかで負けるのか?」

「う……うるさいっ!!」

「俺の影魔法の前では、そんな風なんて……ただの微風だな」


 シャドーは影魔法の影移動を使って、エッタさんを翻弄し高威力の魔法をスルスルと避ける。
 そしてエッタさんの方がダメージを喰らっていき、全身に切り傷だらけになってしまっている。


「さっさとトドメを刺してやるか!!」


 シャドーは、わざと致命傷を避けてエルフを痛めつけるという悪趣味な戦闘をしていた。
 しかし時間の無駄だと判断して、シャドーはトドメを刺してやろうと動き出す。


「おいっ。俺のエッタさんに何やってんだ?」

「お お前はっ!? もう目を覚ましてやがったのか………」

「俺の質問に答えろよ。俺のエッタさんに何をしてんだって聞いたんだよ!!」

「うわっ!?」


 トドメを刺そうとしたところで、シャドーは悪寒を感じて周りをキョロキョロすると2階の吹き抜けから俺が見ていた。
 エッタさんが痛ぶられているのを見た事で、俺は怒りで殺気を纏ったオーラを全身から出していた。
 そのまま俺は2階から飛び降りて、エッタさんとシャドーの間に立つとエッタさんの心配をする。


「ごめんな。こんな時に眠っちゃって……ここからは、俺がエッタさんの代わりに戦うからさ」

「体は大丈夫なんですか? さっきまで、あんなにぐっすりだったのに体が動くとは………」

「俺ってさ。案外、寝起きは良い方なんだよ………だから、今度はエッタさんが休んでてよ」

「ありがとうございます………」


 俺の代わりにボロボロになりながら、逃げる事なく戦ってくれたエッタさんを一生愛そう。
 そして俺の目の前にいる、愛するエッタさんを弄んでくれたシャドーを、エッタさんに手を出した事、絶対に後悔させてやる。
 そんな気持ちがシャドーに伝わったのか、ジリジリッと俺との距離をとってクナイを構え警戒している。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~

鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。 そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。 そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。  「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」 オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く! ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。 いざ……はじまり、はじまり……。 ※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。

俺、何しに異世界に来たんだっけ?

右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」 主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。 気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。 「あなたに、お願いがあります。どうか…」 そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。 「やべ…失敗した。」 女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...