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第3章・残念なドラゴンニュートの女の子

073:悪党の笑い方

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 俺とルイちゃんは、こっそりと城壁の側まで近寄ると、小さな声でルイちゃんに作戦を説明する。


「こっそりと潜入してから、近くの見張り兵から鎧を奪い取って中を堂々と捜索しよう」

「了解でござるが………それってバレたりしないでござるか?」

「まぁバレた時は、バレた時だろうね………よしっ!! 周囲探知サーチで人がいないところから潜入しよう」


 俺はオリジナルスキルを使用して、城の内部の人を探知して人が少ないところを探し出す。
 そして見つけ出すとルイちゃんと共に、城の中に潜入し兵士から2人分の鎧を奪い取った。


「よしっ。これで城の中を、堂々と歩き回れるぞ」

「本当に作戦通りにいきましたでござるな。それで これから、どこを調べるんですか?」

「アードルフが言っていたのは、左大臣が共和傭兵団の人間だって言ってたよな………それなら、そこから調べてみるのが先じゃ無いか?」

「そうでござるな!!」


 ルイちゃんは鎧を着ると、何処から調べるのかと疑問を聞いてくれたので、これからの作戦を少し考えてから答える。
 その作戦通りに左大臣についての情報を調べるべく、城の中を歩いて左大臣の部屋を探す。


「左大臣の部屋を直接訪れるでござるか? それじゃあ、さすがにバレるんじゃ?」

「あえてって事だよ。まさか潜入した人間が、自分に接触してくるなんて思わないだろ?」

「た 確かにでござる!? まさか、そんな事を考えていたとは思わなかったでござる………」


 俺は左大臣のところに真っ向から向かうという作戦を立てたのであるが、それは無謀では無いかとルイちゃんは驚く。
 しかし左大臣の心理的に考えれば、敵が真っ向から来るなんて微塵も思わないだろうと考えた。
 その為に俺たちは、見回っているフリをしながら左大臣の部屋を探すと、役人たちの話し声が聞こえてくるのである。


「ここが左大臣の部屋みたいだね………」

「そうでござるな。それでなんて言って、左大臣の懐に入っていくんでござるか?」

「それはまぁ………俺の話に合わせてくれるか?」

「了解でござる」


 俺はルイちゃんに話を合わせるように言ってから、左大臣の部屋をノックして入るのである。


「一般兵が、どうしたんだ? 私に何か用事でもあるのか?」

「城下町について話したい事があるのですが………」

「城下について話したい事だって? まぁ問題があるのなら聞いておいた方が良いか………話してみろ」


 俺は左大臣に城下町について話したい事があるというと、聞いておいた方が良いと左大臣は許可をする。


「それが城下町の中で噂話がありまして………」

「噂話? どんな噂話だ?」

「女王陛下に反乱を起こそうとしている組織があると………まだ噂話ですが、本当だったら大変なので報告しました」

「ほぉ……そうか。それは大変な事だな………」


 俺は偽りの噂話があると言って、ありもしない噂ばしを報告すると左大臣は深刻そうに手を口元に持っていく。
 そして目を細めて少し考えてから、立ち上がって窓のところまで行って外を見るのである。


「報告、ご苦労だったな」

「いえ、ツァリーヌ王国の国民として当たり前の事です」

「して、君とは会った事があるような気がするんだが? 何処かで会った事があるかな?」

「それでしたら城内で会っているのでは無いでしょうか………」

「そうか? それなら、まぁ良いとするか………」


 俺の存在に気がつきそうになって、俺は頬から少しの汗を流すが何とか誤魔化して部屋を後にする。
 すると俺たちが出て行った後の部屋で、左大臣のフランターヤは椅子にドサッと座って深い溜息を吐く。


「この城にもネズミが入り込む様になったか………直ぐに手を打って駆除しなければなぁ」


 フランターヤは俺たちが偽物の兵士であり、何かを探りに来た人間たちだと気がついていた。
 俺たちは そんな事に気が付かないで、城の中の探索を進めていくのであるが、今度は女王陛下の部屋に侵入する事にした。


「ここに入り込んで、女王陛下が住んでいない事を確かめなくちゃな………」

「そうでござるな!!」


 俺たちは女王陛下の部屋の扉をノックして、返事が返ってこない事を確認すると扉を開けて中に入る。
 部屋の中は確かに豪華な家具で溢れており、まさしく女王陛下が暮らしていそうな雰囲気がある。


「だけど、異様なまでに生気を感じられないよな」

「そうでござるな。普通なら人が暮らしていれば、それなりに感じるものでござるが………これは、一体?」

「まさしく女王陛下は存在していないって事の証明か………まさか国全体を騙せているとはな」


 部屋の中からは人が暮らしている感じがせずに、俺たちの中では女王陛下が存在しないのは確信に変わった。
 早速、宿屋に戻って作戦を立て直そうとルイちゃんと共に城の窓から出ようとした瞬間に、部屋のドアがバンッと開いた。


「そこまでだよ、君たち。ここは女王陛下の部屋って事を理解しての行動かな?」

「左大臣……もう俺たちの動きに気がついたのか」

「申し訳ないね。こう見えて、私は記憶力には自信があるんだ」

「兵士、1人1人の顔を覚えてるのか………」

「その通りだ、君たちなんか見た事ない。さてと、この城に潜入した理由を聞こうか?」


 フランターヤは兵士の顔を覚えており、俺たちの顔のを見た瞬間に気がついていたと明かした。
 俺たちは気がつかれた事に驚いて、その場から数歩後ろに下がってフランターヤの動きを見る。


「まずは俺から聞かせてもらうっ!! お前ら、共和傭兵団が女王陛下を作り上げたんだろ? それは事実なのか!!」

「そんな事を知っているのか。という事は、あの時の生き残りが余計な事を話したか………そうだ。この国に女王陛下なんて人物は存在しない」

「随分と口が軽いじゃないか………そんな簡単に、俺たちに情報を流しても良いのか?」

「なんだ、君たちは逃げられると思ってるのか? 君たちは、ここから出れない………というよりも現世からもバイバイだ」


 やはりツァリーヌ王国には女王陛下なんて居なかった。
 その事をフランターヤが簡単に話すので、どうしてなのかと思っていると、俺たちを殺して情報を止める気だった。
 それならば俺たちがやる事は決まっているだろう。


「全力を出せば逃げられる………とは限らないか」

「君は意外にも頭が切れるみたいだね。その通りだ、逃げ出そうが国際指名手配をする………そうすれば、どっちにしても死ぬのは決まっているんだよ」

「そうか。なら、ここで倒してやるよ………ルイちゃん、覚悟はできているか?」

「もちろんでござる!! 国民を苦しめる悪党は、拙者が叩き斬るでござる!!」

「ふんっ。本気で勝てると思ってるのか………逃げた方が、ほんの少しだけ生き延びれたのになぁ」

「覚悟しろ!!」


 ここから逃げてもフランターヤが、俺たちの事を指名手配して面倒な事になると確信した。
 ならば戦った方が良いと、俺は持って来ている愛剣《エルード》を鞘から抜いて構える。
 戦闘を選んだ事を笑う様に、フランターヤは両手を広げて勝てるもんなら勝ってみろと煽って来た。
 そんなフランターヤに、俺とルイちゃんは走っていき斬りかかるのである。
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