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第3章・残念なドラゴンニュートの女の子

072:ウッハウッハ

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 俺はツァリーヌ王国の真相を調べる前に、イローナちゃんを連れて首都にいる大きな商業ギルドのギルマスに会いに向かう。
 それだけの大きな組織のボスな為に、そう簡単には合わせてくれるわけがなく入り口で止められてしまった。


「ダヴィドさんに見て欲しいモノがあるんです。どうにか合わせてもらえないでしょうか?」

「ダメです。ダヴィド様は、忙しい方なので合わせる事はできません」

「頼みますよぉ。そこをどうにか………」


 俺は剣を早く手放したいというのもあって、どうにか合わせてもらえないかと渋っている。


「どうしたのかな? そんな入り口で、大声を出していたら街の人たちに迷惑じゃないかな」

「だ ダヴィド様っ!?」

「この人がダヴィドさん………」

「ただのおじいちゃんみたい………」


 俺たちが騒がしくしているのを見かねて、白髪白髭の老紳士が奥から出て来たのである。
 その老紳士を見た見張りの人間は、ダヴィド様と言って老紳士がギルマスだと俺は気がつく。


「この男が、ダヴィド様に見せたいモノがあると言って聞かないものですから………」

「私に見せたいモノだって? それは、どんなモノかな?」

「それは、この古い剣なんですけど………」

「古い剣ですか………ほぉこれは凄いモノかもしれないなぁ。詳しい話は中でするから入ってくれるかな?」

「あ ありがとうございます!!」


 ダヴィドは俺が持って来た古い剣を見て、その一瞬だけでも凄いモノの可能性を見出した。
 詳しく見たいからと俺を屋敷の中に入るようにダヴィドは言って、俺とイローナちゃんは恐縮しながら中に入るのである。
 そして俺がリビングのようなところに案内されて、豪華な椅子に腰をかけると紅茶とクッキーを出してもらう。


「私は、このアグウェレイラ財団の代表を務めている《ダヴィド=マックス=アグウェレイラ》だ」

「俺は冒険者の《ミナト=カインザール》です」

「君の名前は、最近になって良く聞きますねぇ………それで、この剣を見つけたのは、何処なんですか?」

「これは首都から少し行ったところにある、ハイウルフの巣穴にあったんですよ」


 この老紳士はアグフェレイラ財団の代表をしており、俺の持ってきた剣に興味津々である。
 俺に剣があった場所や状況を詳しく聞いて来たので、聞かれた事を全て答えると深くため息を吐いてから話し始める。


「これは、私の推測でありますが………これは《ゴーストタイム》の時に作られた剣かと思います」

「ゴーストタイム? ゴーストタイムってなんですか?」

「ミナトは知らないの? ゴーストタイムっていうのは、世界連盟によって消された歴史って事だよ」

「そこのお嬢さんは詳しいみたいですね。その通りで、世界連盟が消した約900年前から700年前の事を指す言葉だよ」


 ダヴィドが言った《ゴーストタイム》とは、この世界の都市伝説のような話ではあるが、世界連盟が消し去った歴史の事を言うらしく、イローナちゃんも知っている事だった。
 そんなゴーストタイムの期間に作られた剣の可能性があると、ダヴィドは言って詳しく話を進める。


「この期間に作られたモノというのは、そうそう発掘されるモノじゃなく高級品としてコレクターの間で人気なんだ」

「という事は、相当な値段がつくって事ですか?」

「つまりは、そういう事ですね。しかし高値過ぎて、ここでは支払きれない………という事で、小切手を渡しておきます」

「こ こんな値段がつくもんなんですか!?」


 あまりにも高過ぎる為に、ここでは支払きれないという事でダヴィドは俺に小切手を渡して来た。
 そこに書かれていた金額とは、大金貨にして1000枚という日本円にして10億円の価値だ。


「それでは、こちらで剣は引き取らせていただきます………今日は素晴らしい取引になりました」

「こちらこそ、こんなに良い値で取引できるなんて………本当にありがとうございます」


 俺とイローナちゃんは小切手を受け取ってから、ダヴィドに入り口まで送られて帰るのである。


「こんなにも良い値段がつくなんて驚きだよなぁ………」

「ゴーストタイムって言葉を聞いた時は、とても驚いたけどね」

「世界連盟も闇深いなぁ………おっと、闇深いといえば調べなきゃいけない事があったか」


 俺たちが世界連盟は闇深いという風に話していると、俺は調べなきゃいけない事があると思い出す。
 それはツァリーヌ王国の実在しないという、アードルフが言っていた女王陛下についてだ。


「調べるって言ったってなぁ。なにを、どこから調べたら良いものか………」

「それならルクマリネ王国の時に使った、狐の仮面を使えば良いんじゃない? もう狐仮面は、指名手配されるしね」

「まぁ確かに使えなくは無いな………また狐の仮面を使わなきゃいけないのかぁ」


 俺がツァリーヌ王国について調べ方を困っていると、イローナちゃんは狐の仮面を使おうと言った。
 その手もあるが面倒な事をして、足がついて捕まってしまう可能性があるから渋っている。
 俺たちが首都にとっておいた宿屋に帰ってくると、そこにエッタさんとシュナちゃんが居なかった。


「あれ? エッタさんとシュナちゃんは?」

「あっ2人なら革命軍のメンバーと、一緒にツァリーヌ王国の捜査に行ったわん」

「そういう事ね。それじゃあ、俺たちも独自に捜査しようか」


 俺たちが留守のうちに革命軍のメンバーが来たらしく、エッタさんたちは革命軍と合流して捜査しているらしい。
 それならば俺たちも独自に行動して捜査しようといって、カエデちゃんとルイちゃんも捜査に加わる。


「それじゃあ、俺とルイちゃんが城に潜入する………外はカエデちゃんとイローナちゃんに任せるよ」

「分かったわん!!」

「了解……」


 俺は小回りが得意なルイちゃんを選んで、俺と共に城内に潜入するの決めるのである。
 俺たちが城の中で、カエデちゃんとシュナちゃんは首都の中で情報を集めるようにと頼んだ。



* * *



 この世界の何処かに冒険者ギルドの総本部がある。
 場所に関してはSランク以上の冒険者のみに伝えられる為、相当な情報操作が行われている。
 そして冒険者ギルドは世界連盟の加入を、唯一制限している組織であり、世界連盟でも場所は知らないのである。


「おいっ!! 早くあのババアは来ないのか!!」

「ジーク様っ!! ギルドマスターを、ババア呼びはだめですよ!!」


 総本部の入り口で、ギルドマスターを呼んでこいと騒いでいる冒険者がいた。
 この騒ぎ立てている男こそが、十二聖王の序列3位《ジーク=ヘーンゲン》だった。
 ジークは多くの戦闘で負った傷が全身にあり、そして目立つのは白髪のロングヘアーをしている。


「ババアは、いつになったら来るんだって聞いてんだよ」

「ギルドマスターなら少し外に出ていますから、まだ来れないかと思います………」

「ちっ。人に物を頼んでおいてよぉ………じゃあ今日は帰るが、ババアが帰って来たら、人を呼んでおいて消えんなって言っておいてくれるか?」

「承知いたしました」


 ジークはギルドマスターがいない事を知ったら、カウンターを蹴ってイライラしながらも総本部を後にする。
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