社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します

湯崎noa

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第3章・残念なドラゴンニュートの女の子

117:ポテンシャル

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 俺とオリヴァーの戦いは、最終ラウンドがスタートしてから五分五分のところまで持っていった。オリヴァーとしては、分身体を使わなくなり本体で戦っているので、まだまだ底が見えないようなところではある。
 しかし俺も引くわけにはいかない為に、光魔法で反射を利用してオリヴァーみたいに分身のようなものを作った。難しい魔力操作ではあるが、オリヴァーの裏をかいて出し抜く事ができた。
 これが幸か不幸か、オリヴァーの戦闘者として楽しみたいという本能を駆り立ててしまったみたいだ。あぁこんな変態を目覚めさせてしまったなんて、俺は後悔してしまうかもしれない。


「光魔法を使って、俺の裏をかくなんてな。しかも魔力操作も難しいやり方でだ………こういうメラメラと、心の内側が燃え上がるような戦闘がしたかったんだよ!!」

「そうやって変態な一面を見せられたら、こっちとしては鳥肌もんなんだけどな。まぁそれくらいじゃ無いと、リベンジマッチを仕掛けた意味がないからな」

「そんな風に強なれなきゃなぁ。お前は、軟弱な組織を作っている割に骨がある」


 オリヴァーは自分の手を顔に当てて、口元の血を手に付けると口の端から耳のところまで塗った。元々不気味な笑みを浮かべているオリヴァーだが、その行為で何倍にも不気味さが増す。
 これだけラスボス感がある人間は他にいるだろうか。それくらいなければリベンジマッチを挑んだ意味もなく、俺が傷を押して戦っている意味もなくなる。
 そんな事を思いながら俺は、また光の反射を上手く使って分身体をオリヴァーに向かわせる。


「そうそう!! これだけの難易度じゃなきゃ、俺の乾き切った心を濡らしてくれるものは無いな!!」

「そう言ってられるのも、今のうちだ………って、このセリフはフラグだよな」


 俺の分身体をオリヴァーは、剣を振って偽物なのかを確認しながら立ち回る。しかし俺の方が少し上回って、オリヴァーの顔面やら腹などにパンチが複数回クリーンヒットした。
 そんなオリヴァーの口元から鮮血が流れる。さっきまでは、俺の口から鮮血が流れていたが戦況が変わり始めている。だが、少しリードしているからと言って油断はできない。
 そう思っていた瞬間に、オリヴァーが剣を振り下ろした瞬間を見計らって背後に回り込む。それを見越していたかのように、オリヴァーは俺の方を見ないで回し蹴りをしてきた。
 全くもって攻撃してくるとは思わなかった為、俺はガードする事なく顎に蹴りがクリーンヒットした。あまりにも衝撃的で地面に転がったまま頭がクラクラしている。


「どうして、俺が本物だって分かった………」

「実に興味深い攻撃だったが、それに頼りすぎて魔力量から本物かが分かってしまう。それに本物の魔力量さえ、分かって仕舞えば動きだって察知する事ができるんだよ」

「そういう事かよ。アンタも、ただの筋肉馬鹿野郎ってわけじゃ無いみたいだな………」

「それは褒めてもらって、どうも。もう少し喰らってやりたかったが、気持ち良くなったところで止めておかなきゃな」

「そのまま寝んねしてくれれば、もっと気持ち良くしてやれたってのにな………」


 俺はオリヴァーが、俺を見抜いた理由が分からなかった。しかしオリヴァーからの魔力量の説明を受けて納得する。
 確かにオリヴァーを出し抜けると思って使いまくっていたが、まさか魔力量から本物と偽物を判断し、さらに俺の動きまでも理解していたなんて思わなかった。
 傭兵としての戦闘経験が多いと聞いていた時から、確かに戦闘への知能は高いが、どうせ筋肉馬鹿なんだと考えていた。しかし蓋を開けてみたら、キチンと論理的な判断をする奴だった。
 悔しいが俺の落ち度を、オリヴァーが見逃す事なく、さらに突いてくるとは評価を変えなければいけない。ただの喧嘩の強い気味の悪い奴から、手強い変態戦闘狂にレベルアップだ。


「まだまだ陽は高いだろぅ? 寝るには、まだまだ早い。もっと楽しまなきゃ勿体無いだろ?」

「そうかそうか。そんなに殴られ足りないなら、そう言ってくれれば良いだろ………気持ち良くなるまで、何発でも殴ってやるからよ!!」

・炎魔法Level1:ファイヤーボール
・風魔法Level2:ストーム
――――炎龍の吐息ドラゴニック・ブレス―――

「初歩魔法の組み合わせだが、使う人間の魔力量の違いで、ここまで変わるものか!!」


 俺としては時間をかければかける程、経験値で上回っているオリヴァーの方が有利になると考えている。しかしまだまだ勝つ為の準備が整っておらず、まだ勝利には程遠いと言っても良い。
 それでも手を出さなければ、俺の死亡が早まるだけで勝利なんてする事はできない。そこで俺は炎と風を合わせて、まさしくドラゴンの炎のような強力な合わせ技を繰り出す。
 俺が合わせた魔法のレベルは、かなり初歩中の初歩の魔法であり、この合わせ技自体は若くてもできる。だが、オリヴァーが驚いたのは初歩中の初歩にも関わらず、避けなければ即死は免れないだろうという威力についてだった。


「当たり前だろ。俺は初歩の魔法でも、魔力を多く流してるからな」

「感動だ。そんな事ができるのは、相当な経験を積んでいる冒険者でも多く無いぞ………お前のポテンシャルは、俺なんかを遥かに凌いでいるな」

「それは、どうも。アンタと比べられても嬉しくは無いけど、俺がアンタよりも強いのは事実だろ」

「口も達者ときたもんだ。こんなにもポテンシャルを持った人間が、仲間とかいう生温い奴らと連んでいるとは………本当の強者になりたきゃ、素質だけでなれると思うな!!」


 俺の魔法理論にオリヴァーは、自分を遥かに凌ぐポテンシャルだと、俺よりも興奮しているのである。そんなの言われなくても俺は、オリヴァーよりも強いのは当たり前だと思っている。
 そんな俺に感動しているオリヴァーだったが、エッタさんたちのような仲間がいる事を残念がっている。オリヴァーは、本当に強くなる為には仲間や大切な人はいらないという理論を持っているのが、手に取るように分かるのである。


「そんなに言ってるわりに、アンタは共和傭兵団の団長をやってたり、カホアール教団の教祖とかをやってるじゃ無いか。そんな奴が、俺に対して言えるのか?」

「アイツらは仲間なんかじゃないさ。ただのビジネスパートナーってところだ」

「ビジネスパートナーだと? どういう意味だよ?」

「俺の強さの元で、最強の軍隊を作る代わりに、俺が金を渡すという完全な対価を払って関係を持っているだけだ。いつでも、アイツらの首なんて刎ねられるんだよ」


 中々にオリヴァーの組織感覚や人間感が終わっている。逆にビジネスパートナーだと割り切っているのならば、俺から言える事は無いのでは無いだろうか。
 しかしビジネスパートナーだろうと簡単に、何の躊躇もなく手伝ってもらった人間を殺せるのは理解できない。俺だって敵だとしても少し心に思うところがあるくらいだ。
 そんな俺の言葉が届くような精神状態をしていないのだろう。ならば、話し合いで解決なんて出来るわけがないが、そもそも会話をするつもりも到底無い。
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