[完結】うちの第二隊副隊長さまはモテ過ぎるのでとっとと結婚してほしい

いかくもハル

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事件です!少々パニクっております。

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事件です!私ミランダは少々パニクっております。
またもや壁ドン状態。

しかし、先ほどと違うのは、壁ドン相手がグラント副隊長という事だ。
確かに、さっきは男になって、腕筋肉付けてから出直せとは言ったが、まさか最推しのグラント副隊長になって出直せとは言ってない。
ど、ど、ど、どうしよう!!!



遡る事数十分。


グラント副隊長に連れられて、机と椅子しかない簡易な個室にやって来た。
さっきの件を詳しく聞くためだろう。 
奥の椅子にかけるよう指示され、大人しく座る。
副隊長も対面に座ると思った以上に距離が近い。

広い執務室でしか二人きりになった事ないから、これはかなり精神的な修行を要する。
今まで以上に引き締めていかんと、うっかりニヤけてしまいそうだ。
奥歯を噛み締めて、キリッとする。

「そんなに緊張しないでくれ」

やや困りがちに言われてしまった。
違います!緊張ではなく、推しとの距離が近くてニヤニヤしない様引き締めておるのだす。
あ、変な所に力が入っているため、言葉までおかしくなってる。
ボロを出さないため首を振るのが精一杯だった。

「怖がられてるのはわかっているのだが、詳しく聞いて上に報告し無いと行けないので、どうかしばらく我慢してほしい」
「いえ、大丈夫です。副隊長を怖いと思ったとこは一度もありません!」

目に力を入れて全力で否定した。
ほっ、今度は大丈夫だった。

副隊長を怖い?とんでもない。これはむしろご褒美タイムじゃないか。
日頃のイライラが、癒されますがな。
妄想する余裕はないけど。
怖いのはわけわかん無い理由で絡んでくる輩だ。
さっきは言い返して撃退してやったが!わっはっは、ザマァ!!

おっと行けない。キリッとな。

全力の否定が功を奏したのか、ふふっと笑いをこぼした。

「それはよかった」

ぐ、ぐほぅ。だから、不意打ちの笑顔はこちらが体制を整えてからにして下さいってぇぇぇ。
心臓に悪い。バクバクしている。変な汗出てきた。

「では、早速話を聞こう」
「はい」

私は昼休み後、女性3人に絡まれ、建物裏手に連れて行かれたその後のやり取りと、アンナが来て助けてくれた顛末をなるべく感情がこもらない様、客観的に淡々と話した。

こういう時、父と読み合わせをしておいて良かったと思う。
人に聞かせるテンポ、声のトーンなど、結構難しいのだ。
私が一方的に被害者の様に話すのも良くない。
グラント副隊長の立場では公平な判断をしてもらわなくてはならないからだ。


「後は心配したアンナ・エメルさんがここまで送ってくれました。私を探して下さった様で、お手数おかけして申し訳ありませんでした」

腕を組んで眉根を寄せていた副隊長は、話終わるとスルリと腕を解いて、机の上に肘をつき手を組んだ。
瞳には中々に剣呑な光が宿っている。
大丈夫ですよーむしろ撃退しましたから。

「大変だったな。話してくれてありがとう。後はこちらで対処する。ところで、とても聞きやすかったが、何か訓練でもしてるのか?」

ぎくぅ!ヤバイ素人離れしすぎたか?
え、どうしよう。グラント副隊長には嘘つきたくない。う~ん、どうしよう。
察してくれたのか、慌てて訂正してくれた。

「いや、すまなかった。言いたくないなら無理に聞き出すつもりはない。忘れてくれ」

うっ、申し訳ない。もういっその事こと言ってしまおう。
グラント副隊長なら大丈夫だきっと。

「あ、あの。実は父が役者でして・・・台本の読み合わせなどを子供の頃から付き合わされていたもので、普通の人よりかは慣れてるだけです」
「なるほど、そういう事か。本当に、何でも出来るのだな」
「それほどでも・・・隠すつもりはないのですが、あまり注目を浴びたくなくて特に言ってないんです」
「わかった。私の心に留めておこう」
「ありがとうございます」

ほっとした。彼が誰かに話すことはないだろう。
まぁ、バレたところで売れてないのだ、グラント副隊長が知ってるはずもない。
ローザ以外の人に初めて伝えた。
秘密を共有出来たことが何だか嬉しい。


「君は覚えてるかどうかわからないが・・・」

不意に躊躇いがちに副隊長が口を開いた。

「私が魔術学校高等部の3年の時に、図書館で一度会ってるんだ。君に本を探してもらった」

びっくりした。まさか、あの時の数分の事を覚えていたなんて。

「はい。覚えてます。私が中等部3年の時ですね」
「そうか!君も覚えててくれたのか。あの時、あんなに早く本を借りれた事がなくて、あの後何度か図書館に行って君に頼もうと探していたんだ。結局会えずじまいだったので、きっと怖がらせてしまったから避けられてるのかとずっと思っていた」
「まさかそんな!あの後、副隊長が卒業するまで、私とローザ、一緒にいた子です、は受付業務から外されて、ずっと裏方の仕事をさせられていました。せっかく図書館まで来ていただいたのに、お役に立てずすみませんでした」
「そうだったのか・・・いや、君が謝ることではない。そうか、なるほど・・・」

一人、納得しているグラント副隊長。
余程気にしていたらしい。
ったく、あの高等部の女狐どもめ!
グラント副隊長に余計な気を遣わせた挙句、長年気にされていたじゃないか!!万死に値するぞ!

しかし、私を探しているという噂は本当だったのだ。
全然知らなかった。
だから女狐どもに裏方をさせられていたのか、なるほどね。

「・・・では、そろそろ業務に戻ります」
「っ!ミランダ!」

私は立ち上がり、グラント副隊長の横を通り過ぎようとしたタイミングとグラント副隊長が立ち上がってこちらを向いたタイミングがバッチリ合ってしまい、二人揃ってぐらりとバランスを崩した。

私は壁に激突しそうになり、咄嗟に引き寄せられてグラント副隊長の腕中にポスンと収まり、副隊長が腕を突っ張って壁に激突するのは避けられた。
けどもっっっ!!!
いきなりの事で頭真っ白!!!
何!何が起きた!?
筋肉!極上の筋肉に抱きしめられている!!
びっくりしすぎて、顔を作ることさえ忘れてしまった。

「大丈夫か?」

耳のすぐ横で、腰砕けになりそうなイイ声がする。
多分、私の顔も耳も、真っ赤だろう。顔を上げられない。

「ミランダ?」

心配そうなグラント副隊長。
すみません、キャパオーバーです。
またも名前呼びされて完全にオーバーヒートです。

妄想ばかりで、リアル恋愛をして来なかったため、私の恋愛レベルは1以下で、こういう時どうしたら良いのかわからない。

真っ赤になったままあうあうしてると、腕の中からそうっと離して壁際に立たされ、壁ドンしたまま顔を覗き込まれてしまった。
近い!推しが史上最高に近距離にいます。
肌綺麗だな、まつ毛長いな、目が綺麗だなとか、こんなチャンスは無いとばかりに勝手に目が吸い寄せられてしまう私のバカぁぁぁ!

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