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グロリア亭に緊急招集!
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何とか帰って来た。
時間は午後4時。母は当然まだ仕事で、家には父と弟妹が居た。
玄関前で涙目になって必死に懇願した結果、やっと降ろしてもらえた。
あのまま家族と対面していたら、みんなに何と説明すれば良いのかわからない。
父と弟妹は玄関先に突如現れた、出来るスーパー美丈夫として世間では有名すぎるグラント副隊長をぽかんと見上げていた。
おい、3人、マヌケ面が過ぎるぞ。
「突然の訪問で申し訳ありません。ミランダさんが体調を崩したので、送らせて頂きました。私は第二隊副隊長のグラントと申します」
「はあ」
父はグラント副隊長の余りにキラキラしい美丈夫っぷりに圧倒されていた。役者のクセに何たる様なのだ!もっとしゃんとしろい!
すると、弟と妹の方が先に立て直した。
「僕は弟のミカエルです。高等部1年です」
「私は中等部2年のシェリルです」
「そうか、二人とも、偉いな」
グラント副隊長が屈んで二人に目線を合わせ、ニコリとしてポンポンと頭を撫でてくれた。
ミカエルもシェリルもみんなの憧れ、グラント副隊長に撫でてもらえてパァァァと顔が輝いた。
うんうん、わかるぞ二人とも。その距離はやられる。
姉は鼻血出したからな、不甲斐ない事に・・・
ぼやっとしていた父も、やっと持ち直したらしい。
「父のヴィクトルです。わざわざ娘のためにすみません。良かったらお茶でも飲んで行って下さい」
「いや、まだ業務が残っていて、これからすぐに戻りますのでお気遣いなく。ミランダ、ゆっくり休んでくれ」
「はい。ありがとうございました」
では、と来た時同様、颯爽と戻って行った。
「「「か、かぁっっこいい!!!」」」
扉が閉まった途端に三人は同時に叫んだ。
ふっふっふっ、でしょう。私の上司だ!
「お姉ちゃん、何でグラントさんが送ってくれたの?」
妹のシェリルが興奮に頬を赤らめながら私に聞いて来た。
父とミカエルもうんうん、と聞きたそうだ。
男二人まで頬染めて。本当に恐ろしいな、グラント副隊長。
「職場で倒れて副隊長が救護室まで運んでくれたんだよ。大丈夫って言ったんだけど、心配して大事を取って送ってくれたの」
「グラントさん、お姉ちゃんのことミランダって呼んでた。親しいの?」
ぎくっ、ミカエルはさすが目ざといな、気がついたか。
「まあ、私は副隊長の事務官だからね」
「ふぅん」
曖昧にボカしておいた。
倒れたが効いたのか、それ以上追求される事なく、私は自分の部屋に入った。
ささっと部屋着に着替え、すぐにローザにメッセージを送信した。
明日は土曜日。ローザは仕事だろうが、仕事終わりに話を聞いて欲しい。ぜひに!
グロリア亭に緊急召集だ!!
***
土曜日、午後7時。
仕事終わりのローザはあと1時間程したら来れるらしいので、私は一足先にグロリア亭に来て軽く摘みながら飲んで待つ事にした。
「お仕事忙しいのね。疲れてるって顔してるわ~」
カウンターでママさんと軽くグラスを傾けながら、他愛もない話をしていた。
今日のビールは沁みる。そういえば、忙しくてローザに会うのも、グロリア亭に来るのも久しぶりだ。
「慣れないうちは仕方無いんですけどね。ぶっちゃけ疲れました」
ママさんには取り繕う事なく素直に気持ちを吐露する事が出来る。
「ふふふ。大人になるって大変でしょ。みんなが通る道ね。でも、今の大変な思いは将来自分がいざって時に踏ん張れる基準になるから。大変であればある程、後々になってこのくらいの大変さなんか、あの時ほどじゃないって、頑張れるものなのよ」
「そうですか。じゃあ、もっと頑張って、自分の基準を上げておきます!」
「もう、ミランダちゃんは頑張り屋さんだから。あんまり無理しちゃダメよ」
めっ、と、お茶目に怒られてしまった。
もう、ママさんには敵わない。
さりげなく、大好物のピスタチオを足してくれた。
「ミランダ、お待たせ!」
「あ~、お疲れ。ローザぁ」
「何よ、もう出来上がってるの?」
「ううん、嬉しくて。ありがとう来てくれて」
「何言ってるの。ママさん、ビール下さい。あと食べ物。お腹すいちゃった、今日はガッツリ食べたいな」
「ビールとガッツリ系ね。お任せ下さいな」
一旦ビールとナッツを置いて、すぐ奥に引っ込んだ。
「今日は珍しく髪下ろしてるのね」
「うん。今日、休みだし、結ぶの面倒くさくて」
私の髪は緩くウェーブがかかっていて、下ろすと腰あたりまである。
普段はゆるくポニーテールにしているか、ハーフアップにして、仕事の時はキッチリと纏めてお団子にしてる事が多い。
「うん、たまには良いかも。綺麗なハニーブロンドだし、なんか妖精っぽくて可愛い」
「はは、やめてよ」
ローザはサラサラのミントグリーンの髪を左右非対称のボブにしている。紺色の猫みたいな瞳。
オシャレで個性的な美人だ。自慢の親友である。
「ローザ仕事慣れた?どう?憧れのJ.Sは?」
「うん、忙しいけど、毎日充実してる。すごく勉強になるし、楽しいの!」
小さい頃からの憧れのお店で働ける事が、本当に嬉しそうだ。
キラキラと眩しい。
「はあ~良いなぁ。私も部署は満足だけど、仕事がなあ。とにかく雑用が多くて。メインの仕事にたどり着かないんだよ」
「雑用?」
「毎日毎日、手紙だの贈り物だのが副隊長宛に山の様に届くの。うちはアイドル事務所じゃ無いっつーの!それを仕分けしてさばくだけで大変なんだから」
「へぇ~。さすが伝説の先輩だけあるよね」
「もう、今の方が凄いよ、多分」
ああ、もう、今になって、三人に絡まれた事がよぎってイライラが募る。
丁度、料理も運ばれて来て、ローザと二人、ご飯を食べて、それがまた美味しくて、あーだこーだと楽しくお酒も進んだ。
良い感じでローザと二人でお酒も回って来た。
「とにかくさぁ~、うちの副隊長さまはモテ過ぎるんだよね~。もうさ、とっとと結婚して欲しいよ。そうだよ、結婚してくれれば雑用もあんな暗殺並みの危ないプレゼントも、私宛のどーでもいいイチャモンも減るよ!」
「そう思うか?」
「思う、思う。身を固めるに限る」
「そうか。良い案だな。検討してみよう」
あれ?今、とてつもなく良い声がした?めちゃ聞き覚えのある。
ローザを見ると、目をまん丸く見開いて私の後方上を見ていた。
そして、カウンターを見ると、いつの間にか、私の左側に大きな手があった。
い、いつの間に!?
まさか?
ギギギと錆びた機械のようにぎこちなく腕を辿って行けば、モテ過ぎて困るうちの副隊長さまが、キラキラといい笑顔でこちらを見ている。
あれ?何でここにグラント副隊長が?
「な、な、な、何故にここにいるのですか?」
一気に酔いも吹っ飛んだ。
「ここは飯が美味いから私もよく来るんだ。たまたまシモンと飲んでたら、聞き覚えのある声で名前を呼ばれて、見に来たらミランダだった」
ひぇぇぇ!やばい事言ってたっけ?
いや、普通に思ったこと言っただけだよね?ね?
ローザに目で聞いてみる。フルフルと首を振られた。
アウト?セーフ?どっち?
「良かったら一緒に飲まないか?あ、女将さん、2階の個室空いてるかな?」
「ええ、どうぞ。使ってちょうだい」
「さっきの件、もうちょっと意見を聞きたい」
「あ、私、そろそろ帰ります。明日も仕事なんで」
「そうか、悪いな。ここは私が出そう。シモンが送りたいそうだ」
「ありがとうございます。ではお言葉に甘えて。ごちそうさまです」
うそ。ローザぁぁ。
頑張れ!と親指立ててローザはシモンさんと挨拶していた。
シモンさんは淡い金髪に翡翠の様な瞳の実に爽やかなイケメンでお互い好感触らしかった。
「店に来て、すぐにシモンはあの子オシャレで可愛いって言ってたんだ。真面目で良い奴だから心配しなくていい」
「うう、そうなんですか」
「さ、俺たちは2階に行こう」
ドナドナ ドーナー ドォナー・・・私の頭の中は物悲しい子牛が売られて行く童謡が流れていた。
大人しくグラント副隊長の後に続いて2階に上がって行った。
時間は午後4時。母は当然まだ仕事で、家には父と弟妹が居た。
玄関前で涙目になって必死に懇願した結果、やっと降ろしてもらえた。
あのまま家族と対面していたら、みんなに何と説明すれば良いのかわからない。
父と弟妹は玄関先に突如現れた、出来るスーパー美丈夫として世間では有名すぎるグラント副隊長をぽかんと見上げていた。
おい、3人、マヌケ面が過ぎるぞ。
「突然の訪問で申し訳ありません。ミランダさんが体調を崩したので、送らせて頂きました。私は第二隊副隊長のグラントと申します」
「はあ」
父はグラント副隊長の余りにキラキラしい美丈夫っぷりに圧倒されていた。役者のクセに何たる様なのだ!もっとしゃんとしろい!
すると、弟と妹の方が先に立て直した。
「僕は弟のミカエルです。高等部1年です」
「私は中等部2年のシェリルです」
「そうか、二人とも、偉いな」
グラント副隊長が屈んで二人に目線を合わせ、ニコリとしてポンポンと頭を撫でてくれた。
ミカエルもシェリルもみんなの憧れ、グラント副隊長に撫でてもらえてパァァァと顔が輝いた。
うんうん、わかるぞ二人とも。その距離はやられる。
姉は鼻血出したからな、不甲斐ない事に・・・
ぼやっとしていた父も、やっと持ち直したらしい。
「父のヴィクトルです。わざわざ娘のためにすみません。良かったらお茶でも飲んで行って下さい」
「いや、まだ業務が残っていて、これからすぐに戻りますのでお気遣いなく。ミランダ、ゆっくり休んでくれ」
「はい。ありがとうございました」
では、と来た時同様、颯爽と戻って行った。
「「「か、かぁっっこいい!!!」」」
扉が閉まった途端に三人は同時に叫んだ。
ふっふっふっ、でしょう。私の上司だ!
「お姉ちゃん、何でグラントさんが送ってくれたの?」
妹のシェリルが興奮に頬を赤らめながら私に聞いて来た。
父とミカエルもうんうん、と聞きたそうだ。
男二人まで頬染めて。本当に恐ろしいな、グラント副隊長。
「職場で倒れて副隊長が救護室まで運んでくれたんだよ。大丈夫って言ったんだけど、心配して大事を取って送ってくれたの」
「グラントさん、お姉ちゃんのことミランダって呼んでた。親しいの?」
ぎくっ、ミカエルはさすが目ざといな、気がついたか。
「まあ、私は副隊長の事務官だからね」
「ふぅん」
曖昧にボカしておいた。
倒れたが効いたのか、それ以上追求される事なく、私は自分の部屋に入った。
ささっと部屋着に着替え、すぐにローザにメッセージを送信した。
明日は土曜日。ローザは仕事だろうが、仕事終わりに話を聞いて欲しい。ぜひに!
グロリア亭に緊急召集だ!!
***
土曜日、午後7時。
仕事終わりのローザはあと1時間程したら来れるらしいので、私は一足先にグロリア亭に来て軽く摘みながら飲んで待つ事にした。
「お仕事忙しいのね。疲れてるって顔してるわ~」
カウンターでママさんと軽くグラスを傾けながら、他愛もない話をしていた。
今日のビールは沁みる。そういえば、忙しくてローザに会うのも、グロリア亭に来るのも久しぶりだ。
「慣れないうちは仕方無いんですけどね。ぶっちゃけ疲れました」
ママさんには取り繕う事なく素直に気持ちを吐露する事が出来る。
「ふふふ。大人になるって大変でしょ。みんなが通る道ね。でも、今の大変な思いは将来自分がいざって時に踏ん張れる基準になるから。大変であればある程、後々になってこのくらいの大変さなんか、あの時ほどじゃないって、頑張れるものなのよ」
「そうですか。じゃあ、もっと頑張って、自分の基準を上げておきます!」
「もう、ミランダちゃんは頑張り屋さんだから。あんまり無理しちゃダメよ」
めっ、と、お茶目に怒られてしまった。
もう、ママさんには敵わない。
さりげなく、大好物のピスタチオを足してくれた。
「ミランダ、お待たせ!」
「あ~、お疲れ。ローザぁ」
「何よ、もう出来上がってるの?」
「ううん、嬉しくて。ありがとう来てくれて」
「何言ってるの。ママさん、ビール下さい。あと食べ物。お腹すいちゃった、今日はガッツリ食べたいな」
「ビールとガッツリ系ね。お任せ下さいな」
一旦ビールとナッツを置いて、すぐ奥に引っ込んだ。
「今日は珍しく髪下ろしてるのね」
「うん。今日、休みだし、結ぶの面倒くさくて」
私の髪は緩くウェーブがかかっていて、下ろすと腰あたりまである。
普段はゆるくポニーテールにしているか、ハーフアップにして、仕事の時はキッチリと纏めてお団子にしてる事が多い。
「うん、たまには良いかも。綺麗なハニーブロンドだし、なんか妖精っぽくて可愛い」
「はは、やめてよ」
ローザはサラサラのミントグリーンの髪を左右非対称のボブにしている。紺色の猫みたいな瞳。
オシャレで個性的な美人だ。自慢の親友である。
「ローザ仕事慣れた?どう?憧れのJ.Sは?」
「うん、忙しいけど、毎日充実してる。すごく勉強になるし、楽しいの!」
小さい頃からの憧れのお店で働ける事が、本当に嬉しそうだ。
キラキラと眩しい。
「はあ~良いなぁ。私も部署は満足だけど、仕事がなあ。とにかく雑用が多くて。メインの仕事にたどり着かないんだよ」
「雑用?」
「毎日毎日、手紙だの贈り物だのが副隊長宛に山の様に届くの。うちはアイドル事務所じゃ無いっつーの!それを仕分けしてさばくだけで大変なんだから」
「へぇ~。さすが伝説の先輩だけあるよね」
「もう、今の方が凄いよ、多分」
ああ、もう、今になって、三人に絡まれた事がよぎってイライラが募る。
丁度、料理も運ばれて来て、ローザと二人、ご飯を食べて、それがまた美味しくて、あーだこーだと楽しくお酒も進んだ。
良い感じでローザと二人でお酒も回って来た。
「とにかくさぁ~、うちの副隊長さまはモテ過ぎるんだよね~。もうさ、とっとと結婚して欲しいよ。そうだよ、結婚してくれれば雑用もあんな暗殺並みの危ないプレゼントも、私宛のどーでもいいイチャモンも減るよ!」
「そう思うか?」
「思う、思う。身を固めるに限る」
「そうか。良い案だな。検討してみよう」
あれ?今、とてつもなく良い声がした?めちゃ聞き覚えのある。
ローザを見ると、目をまん丸く見開いて私の後方上を見ていた。
そして、カウンターを見ると、いつの間にか、私の左側に大きな手があった。
い、いつの間に!?
まさか?
ギギギと錆びた機械のようにぎこちなく腕を辿って行けば、モテ過ぎて困るうちの副隊長さまが、キラキラといい笑顔でこちらを見ている。
あれ?何でここにグラント副隊長が?
「な、な、な、何故にここにいるのですか?」
一気に酔いも吹っ飛んだ。
「ここは飯が美味いから私もよく来るんだ。たまたまシモンと飲んでたら、聞き覚えのある声で名前を呼ばれて、見に来たらミランダだった」
ひぇぇぇ!やばい事言ってたっけ?
いや、普通に思ったこと言っただけだよね?ね?
ローザに目で聞いてみる。フルフルと首を振られた。
アウト?セーフ?どっち?
「良かったら一緒に飲まないか?あ、女将さん、2階の個室空いてるかな?」
「ええ、どうぞ。使ってちょうだい」
「さっきの件、もうちょっと意見を聞きたい」
「あ、私、そろそろ帰ります。明日も仕事なんで」
「そうか、悪いな。ここは私が出そう。シモンが送りたいそうだ」
「ありがとうございます。ではお言葉に甘えて。ごちそうさまです」
うそ。ローザぁぁ。
頑張れ!と親指立ててローザはシモンさんと挨拶していた。
シモンさんは淡い金髪に翡翠の様な瞳の実に爽やかなイケメンでお互い好感触らしかった。
「店に来て、すぐにシモンはあの子オシャレで可愛いって言ってたんだ。真面目で良い奴だから心配しなくていい」
「うう、そうなんですか」
「さ、俺たちは2階に行こう」
ドナドナ ドーナー ドォナー・・・私の頭の中は物悲しい子牛が売られて行く童謡が流れていた。
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