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全然ダメじゃない・・・
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グラント副隊長に続いて2階の個室に入った。
座り心地の良さそうな大きなソファがあって、並んで座る。
冷たいスパークリングワインを頼むとグラント副隊長も同じものを頼む。
個室で倒れた時のことが頭をよぎるが、今日はお酒が入ってるので、あの時ほどはいっぱいいっぱいになる事もないだろう。
それに、二回目だ。私も少々経験値を積んだ、つもり。
「今日は雰囲気が違うな。髪下ろしたのも良いな、似合っている」
「あ、ありがとうございます。ロックス副隊長」
ピタリと止まり、ちょっとむぅ、とした顔をする。
な、なんだその拗ねたような顔は!可愛いか!
ここに来て可愛い出して来たか!なんて引き出しが多いんだ。
「呼び方が違う」
「へ?あ!えぇ・・グ、グラント副隊長」
「副隊長もいらないんだけどな」
「いやいや、さすがにそれは。ご勘弁下さい」
「まあ、いつもと違うミランダが見れたからいいか」
こちらを見てニコリとする副隊長。
うん?この様子だとさっきの言葉は怒ってない?
あれ?セーフだった?良かったぁ。まあ、悪口言って無いもんな。
そもそもグラント副隊長に悪感情なんてないしな。
だって事実だし。とっとと結婚してくれれば、私の雑用は減るし。
本来の業務にもどれるし、イチャモン付けられなくなるし、万々歳だよ。
チリリと、心のどこかが焦げ付く様なイヤな感触があった。
「それでさっきの話なんだが」
「はい」
「俺が結婚すれば、雑用は減ると思うか?ミランダ」
「はい。グラント副隊長に決まった相手がいらっしゃれば、自然と減るんじゃ無いかと思います」
またもチリリと焦げ付く。
「ミランダ」
不意に私の手を取った。
ひょぇっ!いきなりの接触は反則ですぞっっ!!
真剣な様子のグラント副隊長に心臓がバクバクする。
「結婚するなら、俺はミランダが良いと思っている。初めて会った時からずっと気になっていたんだ。仕事を一緒にする様になって、その細やかな気遣いや仕事に対する姿勢にいつの間にか惹かれていた。良かったら結婚を前提に付き合って欲しい」
逃げも隠れも誤魔化しも出来ない、真っ直ぐで真剣なブルーグレーの瞳に囚われ、スン、も、キリ、もする余裕が無いまま、呆然と副隊長を見た。
「あ、あ、あの」
混乱して頭の中は真っ白だ!
グラント副隊長が?私と結婚を前提に付き合いたいとな!?
夢?夢なのかな?飲み過ぎた?妄想がひどくなってる?
私が結婚!?いや、私は一生出来る仕事に就き、趣味に浸って生きるという強い思いがある。
「いきなりでびっくりさせてしまったのは申し訳ない。けれど、ミランダの負担が少しでも軽くなるのが俺の結婚だと言うのなら、俺が結婚したいのはミランダだ」
あ、やっぱり聞き間違いでも夢でも無いようだ。
ど、ど、ど、どうしよう。どうしたら良い?
さらに混乱して固まる私に、グラント副隊長はふぅっと息を吐いて、ゆっくりと手を離し、頭をポンポンと軽く撫でで宥めてくれた。
「まぁ、俺の思いは変わらないから、考えてみてくれ。まずは少し飲んで、お互いを知るのも良いだろう?」
「は・・・い」
ようやく少落ち着いて、いつの間にか来ていたグラスを持ち上げ、軽く触れ合わせて乾杯する。
冷たいスパークリングワインがピリピリと喉刺激しする。
その刺激が心地よかった。
「美味いな!チビチビ飲まずに、ボトルをもらおう。他にも何か頼むか?何が良い?」
「あ、では、チーズが欲しいです」
「良いな、生ハムは好きか?」
「大好きです!良いですね」
テーブルにある通信機で注文をする副隊長。
軽く笑いながらこちらを見た。
「ミランダの良いところは自分の意見がハッキリしている所なんだよな。あまり人に左右されずにいつも凛としてて」
「いえ、買い被りすぎです。大した事はしてません。私が変な行動を取れば、上司のグラント副隊長が悪く言われてしまいます。そうならないよう気をつけてるだけです」
そうだ、推しの悪口など言わるのが一番我慢出来ない。
私など、ただの筋肉好きの、BL妄想女なのだ。
はなから大したことはない。
グラント副隊長は優しげに目を細めると、また私の髪を漉く様に撫でた。
「綺麗な髪だなって。触ってみたいと思ってたんだ。ミランダはモテるのに、どうして彼氏がいないんだ?騎士団に入ってからも何人かに告白されてたよな?」
おぉぅふ!近い!またしても推しが近い!
私の髪などで良ければ、いくらでもむしって差し上げます!
それにさっきからいつもより態度が砕けてる。
しかも「俺」ってぇぇ!普段は俺、なのね。
良いね、男度増すね。
マクシミリアン様も俺に変換して読んでみたら良いかも。
だって、リアルマクシミリアン様のグラント副隊長の「俺」スーパーカッコイイし!!!
おっと、何だっけ?告白だっけ?
そうなのだ。騎士団は女性が少ないのか?というくらい、私は度々声をかけられ、食事に誘われたり、何人かに告白されたりしていた。
「仕事に慣れることが先だと思ってましたし、そもそも、恋愛も結婚も興味が無かったんです」
「そうなのか?差し支えなければ理由を聞いても?」
「ええっとそうですねぇ。まず、うちは父が売れない役者で、収入がほとんど無くて。母はそんな父の一番ファンなので、ますます、父が働かないで家事をする姿を見て、結婚に対する夢は無くなりました」
「そうか・・・でも素晴らしい夫婦愛じゃ無いか。母上は確か公務員だったな。特殊公務員のサマンサさんだろ」
「はい。国の機密に関する仕事なので、私も詳しくは知りませんが」
「父上はこの間あったな。優しそうな良い父上じゃないか。役者というのは大変な仕事だろう」
そうなのだ。案外チョイ役とはいえ、父は全部のセリフを覚えるし、役によっては資格まで取るし。プロ意識は人一倍高いのだ。
「そうですね。役によっては資格も取ってました。紅茶マイスターとか。お陰で私まで特訓させられてお茶を淹れるのが上手くなりました」
「それは凄いな!だからミランダの淹れるお茶は格別なんだな」
「ありがとうございます。実は自慢でした」
「ははは、そうだよな。素直で良いな。お陰で朝のミランダの紅茶がないと1日が始まらなくなってしまった」
責任とってもらわないとな、と、甘やかに微笑んだかと思うと、ついと腰を引き寄せられて囁かれた。
あれ?この人、こんなに色気あったっけ?
ヤバイ持ってかれる。持ってかれるぞミランダ。
「仕事と言うなら俺は役者ではないし、今は騎士団の第二隊副隊長だ。仕事は山ほどあるし、収入は問題ない。ミランダの仕事は一生出来る仕事だから、結婚後も続けてもらって全然構わないのだが、それでもダメか?」
間近にある真剣なブルーグレーの瞳に説得される。
ぜ、全然ダメじゃない。
さすが、王都中の女子が狙う人だ。
そもそも結婚したく無い理由って何だっけ???
真面目に働かない男が嫌だってとこなんだよね。
でも、グラント副隊長は人一倍仕事していて、誇りと使命感をもって任務を全うしている。
しかも見た目は推しそのもの
この人の生活全般全てを身近で見れるのだ。
そう、この騎士服の下の理想的な肉体美を生で見るどころか、触れることもできるのだ!!
凄い事実に今更ながら気がついた。
間近にあるグラント副隊長の胸元をじぃぃぃと見つめる。
「ん?何だ?気になるのか?見てみたいのか?」
ソファにもたれかかり、長~い脚を組んで額にかかるアッシュブロンドをかき上げ、グラント副隊長の面白がってるような悪魔の囁きについ、うんうんと頷いてしまう。
あ、誘惑に負けた。
クスクス笑いながら、騎士服のシャツのボタンを一つ、二つ、三つと外して行く。
あらわになった喉仏とその下の鎖骨、更に胸筋までチラリと見えた。
ゴクッと思わず身を乗り出してしまった。
すかさず両腕の中に抱え込まれる。
極上の美ボディに囚われ、腰砕けにする声で
「この先が見たいなら俺と結婚するな?ミランダ。毎日好きな時に好きなだけ見せてやるぞ」
ぐぬぬ・・・筋肉好きがバレてしまった。
もう降参です。ボタン三つ外した色気とその破壊力!!完璧過ぎてもう抵抗する気力はなくなりました。
半ばヤケクソで開けた胸元に顔を突っ込み、コクコクと頷いた。
どうだ、直接触れてやったぞ。匂いも嗅いだる。
クンクンクンクン、いい匂いだな、おいおい。
脳内オッサンになってると、ギュウッと一層強く抱きしめられて、こめかみにキスされた。
ひょっ、とびっくりして顔を上げる。
超絶好みの推しの顔がドアップで迫っていた。
「ミランダ」
切なげに名前を呼ばれ、思わず目を閉じてしまった。
唇にふにっと柔らかい感触が、あたる。
グ、グラント副隊長とキ、キ、キ、キスしてませんか?私。
すぐに離れた。
真っ赤だよ、超マヌケ面してるよ、これ。
「だから。その顔は反則だって、ミランダ」
顎をクイと上向かせて、もう一度、今度は更に深く、長くキスされた
***
ボトルも開け、い~感じに酔いも回っていた。
「だかられすね、グラントさんはぁ、マクシミリアンしゃまなんれすよ~」
「誰だ?それは」
「青薔薇の騎士団のマクシミリアンしゃまれす。マリモリしぇんしぇ~が書いてる小説の主人公なんれすよ。もうマクシミリアンしゃまそのものなんれす。わらしの一推しなんれす」
「そうか。マリモリ先生の青薔薇の騎士団だな。わかった見てみよう」
「ちょ~カッコイイんれすよ。お前を守る、とか言ってぇぇ、きゃーってなるんれす」
「俺はお前を一生守る」
ピタリと止まった。
キャー!!!!!死ぬ。悶え死ぬ。
「本当、ミランダは面白いな。俺の前ではそのままでいてくれ」
「いいんれすか?だって、筋肉好きの妄想女なんれすよ」
「妄想はもう必要ないだろう。ほら、目の前にあるし、リクエストは何でも答えるぞ」
私の手を取ると、自分の胸元に手を置いた。
思わず、さわさわさわと撫でてしまった。
「こら、あんまり撫でるな」
くすぐってそうなグラント副隊長にイタズラ心が湧いて、更にさわさわさわと撫でまくった。
その手を取ると、腕の中に抱き込まれた。
「あんまりイタズラすると、お仕置きするぞ、ミランダ」
お・し・お・き!?びっくりして固まった私にクスクス笑いながら、グラント副隊長がゆっくりとかがみ込んできた。
座り心地の良さそうな大きなソファがあって、並んで座る。
冷たいスパークリングワインを頼むとグラント副隊長も同じものを頼む。
個室で倒れた時のことが頭をよぎるが、今日はお酒が入ってるので、あの時ほどはいっぱいいっぱいになる事もないだろう。
それに、二回目だ。私も少々経験値を積んだ、つもり。
「今日は雰囲気が違うな。髪下ろしたのも良いな、似合っている」
「あ、ありがとうございます。ロックス副隊長」
ピタリと止まり、ちょっとむぅ、とした顔をする。
な、なんだその拗ねたような顔は!可愛いか!
ここに来て可愛い出して来たか!なんて引き出しが多いんだ。
「呼び方が違う」
「へ?あ!えぇ・・グ、グラント副隊長」
「副隊長もいらないんだけどな」
「いやいや、さすがにそれは。ご勘弁下さい」
「まあ、いつもと違うミランダが見れたからいいか」
こちらを見てニコリとする副隊長。
うん?この様子だとさっきの言葉は怒ってない?
あれ?セーフだった?良かったぁ。まあ、悪口言って無いもんな。
そもそもグラント副隊長に悪感情なんてないしな。
だって事実だし。とっとと結婚してくれれば、私の雑用は減るし。
本来の業務にもどれるし、イチャモン付けられなくなるし、万々歳だよ。
チリリと、心のどこかが焦げ付く様なイヤな感触があった。
「それでさっきの話なんだが」
「はい」
「俺が結婚すれば、雑用は減ると思うか?ミランダ」
「はい。グラント副隊長に決まった相手がいらっしゃれば、自然と減るんじゃ無いかと思います」
またもチリリと焦げ付く。
「ミランダ」
不意に私の手を取った。
ひょぇっ!いきなりの接触は反則ですぞっっ!!
真剣な様子のグラント副隊長に心臓がバクバクする。
「結婚するなら、俺はミランダが良いと思っている。初めて会った時からずっと気になっていたんだ。仕事を一緒にする様になって、その細やかな気遣いや仕事に対する姿勢にいつの間にか惹かれていた。良かったら結婚を前提に付き合って欲しい」
逃げも隠れも誤魔化しも出来ない、真っ直ぐで真剣なブルーグレーの瞳に囚われ、スン、も、キリ、もする余裕が無いまま、呆然と副隊長を見た。
「あ、あ、あの」
混乱して頭の中は真っ白だ!
グラント副隊長が?私と結婚を前提に付き合いたいとな!?
夢?夢なのかな?飲み過ぎた?妄想がひどくなってる?
私が結婚!?いや、私は一生出来る仕事に就き、趣味に浸って生きるという強い思いがある。
「いきなりでびっくりさせてしまったのは申し訳ない。けれど、ミランダの負担が少しでも軽くなるのが俺の結婚だと言うのなら、俺が結婚したいのはミランダだ」
あ、やっぱり聞き間違いでも夢でも無いようだ。
ど、ど、ど、どうしよう。どうしたら良い?
さらに混乱して固まる私に、グラント副隊長はふぅっと息を吐いて、ゆっくりと手を離し、頭をポンポンと軽く撫でで宥めてくれた。
「まぁ、俺の思いは変わらないから、考えてみてくれ。まずは少し飲んで、お互いを知るのも良いだろう?」
「は・・・い」
ようやく少落ち着いて、いつの間にか来ていたグラスを持ち上げ、軽く触れ合わせて乾杯する。
冷たいスパークリングワインがピリピリと喉刺激しする。
その刺激が心地よかった。
「美味いな!チビチビ飲まずに、ボトルをもらおう。他にも何か頼むか?何が良い?」
「あ、では、チーズが欲しいです」
「良いな、生ハムは好きか?」
「大好きです!良いですね」
テーブルにある通信機で注文をする副隊長。
軽く笑いながらこちらを見た。
「ミランダの良いところは自分の意見がハッキリしている所なんだよな。あまり人に左右されずにいつも凛としてて」
「いえ、買い被りすぎです。大した事はしてません。私が変な行動を取れば、上司のグラント副隊長が悪く言われてしまいます。そうならないよう気をつけてるだけです」
そうだ、推しの悪口など言わるのが一番我慢出来ない。
私など、ただの筋肉好きの、BL妄想女なのだ。
はなから大したことはない。
グラント副隊長は優しげに目を細めると、また私の髪を漉く様に撫でた。
「綺麗な髪だなって。触ってみたいと思ってたんだ。ミランダはモテるのに、どうして彼氏がいないんだ?騎士団に入ってからも何人かに告白されてたよな?」
おぉぅふ!近い!またしても推しが近い!
私の髪などで良ければ、いくらでもむしって差し上げます!
それにさっきからいつもより態度が砕けてる。
しかも「俺」ってぇぇ!普段は俺、なのね。
良いね、男度増すね。
マクシミリアン様も俺に変換して読んでみたら良いかも。
だって、リアルマクシミリアン様のグラント副隊長の「俺」スーパーカッコイイし!!!
おっと、何だっけ?告白だっけ?
そうなのだ。騎士団は女性が少ないのか?というくらい、私は度々声をかけられ、食事に誘われたり、何人かに告白されたりしていた。
「仕事に慣れることが先だと思ってましたし、そもそも、恋愛も結婚も興味が無かったんです」
「そうなのか?差し支えなければ理由を聞いても?」
「ええっとそうですねぇ。まず、うちは父が売れない役者で、収入がほとんど無くて。母はそんな父の一番ファンなので、ますます、父が働かないで家事をする姿を見て、結婚に対する夢は無くなりました」
「そうか・・・でも素晴らしい夫婦愛じゃ無いか。母上は確か公務員だったな。特殊公務員のサマンサさんだろ」
「はい。国の機密に関する仕事なので、私も詳しくは知りませんが」
「父上はこの間あったな。優しそうな良い父上じゃないか。役者というのは大変な仕事だろう」
そうなのだ。案外チョイ役とはいえ、父は全部のセリフを覚えるし、役によっては資格まで取るし。プロ意識は人一倍高いのだ。
「そうですね。役によっては資格も取ってました。紅茶マイスターとか。お陰で私まで特訓させられてお茶を淹れるのが上手くなりました」
「それは凄いな!だからミランダの淹れるお茶は格別なんだな」
「ありがとうございます。実は自慢でした」
「ははは、そうだよな。素直で良いな。お陰で朝のミランダの紅茶がないと1日が始まらなくなってしまった」
責任とってもらわないとな、と、甘やかに微笑んだかと思うと、ついと腰を引き寄せられて囁かれた。
あれ?この人、こんなに色気あったっけ?
ヤバイ持ってかれる。持ってかれるぞミランダ。
「仕事と言うなら俺は役者ではないし、今は騎士団の第二隊副隊長だ。仕事は山ほどあるし、収入は問題ない。ミランダの仕事は一生出来る仕事だから、結婚後も続けてもらって全然構わないのだが、それでもダメか?」
間近にある真剣なブルーグレーの瞳に説得される。
ぜ、全然ダメじゃない。
さすが、王都中の女子が狙う人だ。
そもそも結婚したく無い理由って何だっけ???
真面目に働かない男が嫌だってとこなんだよね。
でも、グラント副隊長は人一倍仕事していて、誇りと使命感をもって任務を全うしている。
しかも見た目は推しそのもの
この人の生活全般全てを身近で見れるのだ。
そう、この騎士服の下の理想的な肉体美を生で見るどころか、触れることもできるのだ!!
凄い事実に今更ながら気がついた。
間近にあるグラント副隊長の胸元をじぃぃぃと見つめる。
「ん?何だ?気になるのか?見てみたいのか?」
ソファにもたれかかり、長~い脚を組んで額にかかるアッシュブロンドをかき上げ、グラント副隊長の面白がってるような悪魔の囁きについ、うんうんと頷いてしまう。
あ、誘惑に負けた。
クスクス笑いながら、騎士服のシャツのボタンを一つ、二つ、三つと外して行く。
あらわになった喉仏とその下の鎖骨、更に胸筋までチラリと見えた。
ゴクッと思わず身を乗り出してしまった。
すかさず両腕の中に抱え込まれる。
極上の美ボディに囚われ、腰砕けにする声で
「この先が見たいなら俺と結婚するな?ミランダ。毎日好きな時に好きなだけ見せてやるぞ」
ぐぬぬ・・・筋肉好きがバレてしまった。
もう降参です。ボタン三つ外した色気とその破壊力!!完璧過ぎてもう抵抗する気力はなくなりました。
半ばヤケクソで開けた胸元に顔を突っ込み、コクコクと頷いた。
どうだ、直接触れてやったぞ。匂いも嗅いだる。
クンクンクンクン、いい匂いだな、おいおい。
脳内オッサンになってると、ギュウッと一層強く抱きしめられて、こめかみにキスされた。
ひょっ、とびっくりして顔を上げる。
超絶好みの推しの顔がドアップで迫っていた。
「ミランダ」
切なげに名前を呼ばれ、思わず目を閉じてしまった。
唇にふにっと柔らかい感触が、あたる。
グ、グラント副隊長とキ、キ、キ、キスしてませんか?私。
すぐに離れた。
真っ赤だよ、超マヌケ面してるよ、これ。
「だから。その顔は反則だって、ミランダ」
顎をクイと上向かせて、もう一度、今度は更に深く、長くキスされた
***
ボトルも開け、い~感じに酔いも回っていた。
「だかられすね、グラントさんはぁ、マクシミリアンしゃまなんれすよ~」
「誰だ?それは」
「青薔薇の騎士団のマクシミリアンしゃまれす。マリモリしぇんしぇ~が書いてる小説の主人公なんれすよ。もうマクシミリアンしゃまそのものなんれす。わらしの一推しなんれす」
「そうか。マリモリ先生の青薔薇の騎士団だな。わかった見てみよう」
「ちょ~カッコイイんれすよ。お前を守る、とか言ってぇぇ、きゃーってなるんれす」
「俺はお前を一生守る」
ピタリと止まった。
キャー!!!!!死ぬ。悶え死ぬ。
「本当、ミランダは面白いな。俺の前ではそのままでいてくれ」
「いいんれすか?だって、筋肉好きの妄想女なんれすよ」
「妄想はもう必要ないだろう。ほら、目の前にあるし、リクエストは何でも答えるぞ」
私の手を取ると、自分の胸元に手を置いた。
思わず、さわさわさわと撫でてしまった。
「こら、あんまり撫でるな」
くすぐってそうなグラント副隊長にイタズラ心が湧いて、更にさわさわさわと撫でまくった。
その手を取ると、腕の中に抱き込まれた。
「あんまりイタズラすると、お仕置きするぞ、ミランダ」
お・し・お・き!?びっくりして固まった私にクスクス笑いながら、グラント副隊長がゆっくりとかがみ込んできた。
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