[完結】うちの第二隊副隊長さまはモテ過ぎるのでとっとと結婚してほしい

いかくもハル

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人の噂は75日もかからなかったね

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週明け、朝、グラントさんと一緒に第二隊隊長執務室にやって来た。

隊長って、グラントさんのお父さんなんだけどね。
ロベルト・ロックス隊長。
さすがというか、よく似ている。
渋いイケオジ。ローザが喜びそうだ。

グラントさんが事前に話していたせいか、凄いスムーズにご挨拶出来た。

「グラントがデパルさんを事務官にって言った時から、いつかこうなるかもとは思ってたが、まさか、こんなに早く結婚するって聞くとは思わなかったなぁ。妻も喜んでたよ」
「知り合ったのは俺が高等部の時だから、俺の中では早いって感覚無いんだけどな」
「そんな前から目ぇ付けてたのか!やるな、グラント。デパルさん、入隊の時から騎士の間で凄い人気だから、早めに結婚しとかないと横から掻っ攫われちまうだろうしな」

いやいや、ロベルトさん、持ち上げ過ぎですよ。
それより、グラントさん宛ての贈り物やら手紙やらが減る事を祈るよ。
表面はにこやかに二人のやりとりを聞いている。

「今度、家族を紹介しよう。うちに来るといい」
「はい。ぜひ、ご挨拶に伺わせて下さい」

父親仕込みの外面よしこでニッコリと微笑んだ。


隊長室を出たらどっと疲れた。
肩を抱き寄せられて、覗き込まれる。

「大丈夫か?」
「思ったより緊張してたみたい。大丈夫」

ははは。本当。さすがにちょっと緊張した。



団長に報告してからというもの、グラント副隊長が担当事務官の私と結婚するぞ、という話は瞬く間に世間に広まった。
騎士団には広報があって、なんと!広報誌に載ってしまったのだ。
ちょっと、まだ正式には婚約だってしてないんだけど。
まぁ、良いんだけどさぁ~。

第二隊の隊員たちは快く結婚を祝福してくれたけど・・・

グラント副隊長手紙や贈り物は減ったけど、代わりに私宛の手紙は増えたよね~。
いやぁもう、出るわ出るわ、悪口ってこんなにバリエーションあるんだね、っていうくらい。
この情熱を別の事に使えばいいのにねぇ~、ホント。
探査魔法使わなくも何となくわかるようになってしまった。

私に文句言ったところで何がしたいのだろう。
じゃあ結婚やめるって言うかって?言わないだろう。

人の噂も75日。大人しくしていれば、その内収まるでしょう。
そう思っていたのだ、私は。


***

グラントさんも私宛てに不穏な手紙が来ている事を物凄く心配して、行き帰りは送ってくれる様になった。
どうしても彼の都合が合わない時は補佐官か第二隊の誰かが送ってくれるようになった。
アンナともよく帰るようになった。

「じゃあ、お疲れ様でした。何事なく良かったね」
「アンナ遠回りさせちゃってごめんね。気をつけて帰って」
「ありがとう。じゃあまた明日」

私が家に入るのを確認してアンナは帰って行った。




そんな生活がしばらく続いていたが、家族同士の顔合わせも無事に終わり、私はグラントの正式な婚約者となった。
式は半年後、王都の教会も取れた。
家族間の顔合わせで初めて知ったのだが、なんとグラントは6人兄弟の長男だった。

弟2人に妹3人!?全然知らなかった。
びっくりしていると、不思議そうな顔をされた。

『次男のアシュレイはミランダと同学年だろ』

アシュレイ??アシュレイ・ロックス・・・いたな、いたいた!
全っ然タイプ違うからわからなかった!
彼はグラントと違い、痩せ方で剣や体術より魔術が得意だった。
前髪を長く伸ばし、顔がほとんど見えなかったのも気がつかない要因だった。そして、どちらかといえば地味。
今回、顔合わせで初めてちゃんと顔を見たけど、兄グラントによく似たこれまた凄いイケメンだった。
兄が騒がられてるのを知り、わざと顔を隠して存在感消していたらしい。賢い!
そして、今は魔術師になるべく、特化に通っているのだとか。う~ん優秀。


他の兄弟達も得意分野はそれぞれ違えど、兄弟仲は良さそうだった。
そして、後々知ったのだが、ロックス家は代々子沢山なんだと!何だそれ!


正式に婚約者となってからは徐々に手紙も減り、お祝いムードに包まれて、やっと私の周りは静かになったのだった。


ふぅ~、75日もかからなかったね。
まあ、そうだよね、いつまでも私に構うほど、世の中の人はヒマでは無いのだろう。うん。

手紙はスルーし、荷物は完璧に排除され、私はいつも通り過ぎて、嫌がらせのしがいもなく、さぞかしつまらなかっただろうに。

心労でやつれるなどのリアクションなど期待しないで欲しい。
私はそんなヤワな神経ではないのだ。
手紙や荷物など、見ないで処理してしまえば無いのと同じ。
気になって開けて見てしまえば負けなのだ。
そもそも差し出し人も書いてない手紙など読む義理はない。
すかしっ屁と一緒だ。
誰がしたかわからない屁をわざわざ嗅ぐ必要などない。
そう思っている。


さて、今日はグランドと久しぶりに外でご飯でも食べようと言う事になった。
グランドがすぐに結婚だ!と色々と段取りにバタバタし過ぎててデートもするヒマも無かったもんね。

やっと一段落して、グロリア亭で、ママさんと旦那さんに婚約のことを伝えることができた。
二人は心からお祝いしてくれた。
お祝いに良いワイン開けちゃうわ!とママさんが笑いながらグラスに注いでくれ、心がジーンとなる。

う、嬉しい。今まで、第二隊の人達や家族やローザだけが素直に祝ってくれたからだ。
美味しい食事と美味しいワイン。本当に良い夜だった。




たまにはプラプラと家まで歩いて帰ろうと、王都のメインストリートを歩いていた。
そんなに遅い時間帯ではないため、そこそこ人が歩いていた。
二人で話しながら、歩いていた時だった。
細い路地から手がニュッと伸びて、私の右手首をつかまれ、そのまま引き込まれた。
咄嗟のことに反応できなくて、気が付いたら、後ろから男に抱き込まれ、サバイバルナイフを当てられていた。

「!!」
「ミランダ!!!」

私を人質に取られ、ナイフを突きつけられては、グラントも迂闊に動けない。

ん?今何があった?何で男にナイフを突きつけられてる?
私、ミランダ危機一髪!?
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