[完結】うちの第二隊副隊長さまはモテ過ぎるのでとっとと結婚してほしい

いかくもハル

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モテ過ぎる副隊長さまはとっとと結婚する

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婚約してから半年が過ぎ、とうとう結婚式まで後僅かになった。
私は結婚後も変わらず事務官を続ける事になり、公私共に充実した毎日を過ごしている。

あれから仕分けという名の雑用も減った。というか、ほぼない。
たまに来るのは、第二隊にお世話になった人からの感謝の手紙だ。
こういうのは大歓迎。むしろ、隊員たちの励みになる。大いに結構。

第二隊の隊員に姉御と呼ばれる剛腕の私に戦いを挑む者もなく、平穏無事に事務官として勤務している。
これだよ、これ。私の求めてた仕事は!

相変わらず、筋肉もBLも大好きで、仲良く話している隊員同士を見ると、ついカップリングして妄想してしまうが、このくらい許して欲しい。
人のさがとはそうそう変われないものなのだ。


ローザとも会っている。
彼女の勤務しているJ.Sでウェディングドレスを作ったため、会う頻度も増えていた。
グラントと二人でJ.Sを訪れ、ウェディングドレスを発注する時、ローザは感激と感動のあまり、涙を流しながら承ってくれた。
そして、素晴らしいウェディングドレスが出来上がって来たのだ。ローザには感謝しかない。



「まさかさぁ、半年前はあのグラント副隊長と結婚するなんて思いもしなかったよね、ミランダ」
「ほんと、ほんと。本人が一番驚いてるよ」

今日もお気に入りのグロリア亭でローザと飲んでいる。
いつものカウンターだ。
仕事終わりに彼女と待ち合わせして、ご飯でも食べながら飲もうとやって来た。

「ローザもシモンさんとどう?上手くいってる?」

ローザも騎士団で人気の高いシモンさんと交際を続けている。
グラントの補佐官で信頼も厚い彼なら心配は無い。
ローザはうっとりするくらい綺麗に微笑んだ。
まさか・・・

「うちらもね、結婚しようって。この間プロポーズされたの」
「え!そうなの!おめでとう。良かったねぇ~、ローザ」

それはめでたい!薄々そうではないかと思ってけど、彼女の口から聞けたのは本当に嬉しかった。
左手の薬指にはきらりと光るリングがあった。


店を出て、ローザと帰る。

「もうすぐ結婚式だよね。私もこれから色々決めるから、アドバイスよろしくね」
「任せて!なんて、参考になるかどうかわからないけど~」

あははと、笑って帰る。
いやぁ、本当に。仕事に友人に婚約者にと、恵まれているなあ。
元々結婚も恋愛も興味は無くて、仕事に生きるつもりだったけど、仕事と家庭と両立するのも良いかもね、うん。


***

11月吉日。結婚式はよく晴れていた。
J.Sのウェディングドレスにベールをかけて、父親が来るのを待つ。

ノックの音がしたので、どうぞと応じると、入って来たのはグラントだった。

結婚式なので、式典用の黒の軍服を身につけている。
私がぜひにと頼んだからだ。

入隊式で見たまま、いや、それ以上の感動だ!
なんて素晴らしい!この筋肉が今日から私の夫なのだ。
目も眩みそうな理想の肉体に呆然と見惚れてると、明らかに私の状態を悟ったグラントはクスクス笑って抱きしめて来た。
おぉっとぉ!鼻血出そうになったよ。ヤバイ、ヤバイ。
花婿に見惚れて鼻血噴き出す花嫁なんていないよね。

「相変わらずだな、ミランダは」
「すみません。グラントが素敵過ぎるからいけないんだと思
う」

その軍服姿はもはや罪だ。目の毒だ。

「ミランダ、綺麗だ。君と結婚出来るなんて夢みたいだ」

嘘でしょ。逆だよ逆。

「それを言うなら私の方だよ。グラントじゃなかったら結婚出来なかった。ありがとう」
「ミランダ、幸せになろう」
「もちろん!楽しい毎日にしようね」

グラントはもう一度私を抱きしめてから軽くキスすると、また後で、と部屋から出て行った。

ふぅ~。ヤバかった。あれ以上抱きしめられてたら、のぼせて鼻血出すとこだったぞ。セーフ!

そして父が迎えに来て、私を見るなり泣き出し、心配で付き添ってた母と二人で父を支えて教会の扉の前に立った。
何だこの図は!どっちが花嫁なんだ、全く。

「あらあら、もう泣き止んで、ヴィクトル。でも泣いてるあなたも素敵よ」

じゃないよ、母!父を甘やかすなっっ!!
どうしてこういう時に『花嫁の父』という役に徹してくれないのだ。
それでも役者といえるのか、全くもう。
なんとか父を宥めて、いざ、祭壇へ。


後からローザに聞いたら、涙を流し続ける父を励ましながらも引き摺るように祭壇に向かう私の姿はとても男前だったという。
放っとけ!!

なんとか無事グラントの元にたどり着き、父は母が受け取りに来て席に座らせた。

ヒヤヒヤさせたが、それからはさすが副隊長さまの絶対安定のエスコートで無事に式を済ます事が出来た。ほっ。


披露宴はロックス家の広い庭でガーデンパーティーだった。
クリストファーさんとウォルフさんとビルさんには、グラントから婚約者として紹介してもらってから何度か会っている。
クリストファーさんのイメージは私の中ではエトワールのままだったのだが、6年経って、180cm超えてるのを間近で見れば、なるほど、これは確かにエトワールとは別人だとわかる。

人外の美貌度は前より上がってはいるが、私の好みからしたらまだ線が細い。もうちょっと鍛えて欲しいところだ。
うーん、惜しい・・・

そして、クリストファーさんの父、レオナルドさんがいた。
ローザも憧れのレオンを彷彿とさせるレオナルドさんに緊張気味だ。

「はじめまして、ミランダです。今日は参列いただ・・」
「よう!おめでとうっっ。肩っ苦しい挨拶はいらねぇ~よ。あんただろ、レーベンの狂犬仕一撃で留めたの。すげぇな!グラントは良い嫁もらったじゃないか!」

豪快に笑いながらバンバンと肩を叩かれて、地味に痛い。そして声がデカい!
良い声だけに響き渡る。

本当にレオンのモデル?あのダンディな?マリモリ先生ぇ~、イメージ違い過ぎますよ。
ローザもびっくりして口をあんぐりと開けている。
無理もない、レオナルドさんのファンでもあったのだ。
まあ、遠目から見ただけで、どんな人かは知らなかったが。

「一撃じゃ無いですよ。正確には2回攻撃しましたから」
「わぁっはっはっ!面白れぇ~な。ナイフ砕いたのは?」
「それは本当です。不愉快だったので思わず砕いてしまいました」
「やるじゃね~か!さすがゴリサマの娘だな」
「母をご存じですか?」
「モーリスと同級生だろ?知ってるよ。剛腕のゴリサマ。怒らせるととんでもなく怖いって有名だったんだ」
「へ、へぇ~、そうだったんですね」
「まぁ、ロックス家はそのくらいじゃなきゃ嫁は勤まんねぇだろうな。頑張れよ」
「はぁ、頑張ります」

何だ?嫁は別メニューで修行でもあるのか?鍛錬とか?聞いてないぞ、グラント。
彼を見ると、ニッコリして私を見ていた。





披露宴も無事終わり、グラントと新居に帰って来た。
彼は少し前から住んでいたが、私はここに泊まるのは初だ。
そう、何てったって、なのだ。
実はあれから、ボタン3つ外したまでしか見ていない。
真面目なうちらは結婚するまでは、と今どき珍しく清い交際を続けて来たのだ。
グラントは交際1日目からキスして来たので、そっちも速攻かと思って期待していたのだが、案外とそれ以上はなく、いつも礼儀正しく家まで送ってくれた。さすが騎士様だ。

さぁ!今日こそ全部見せてもらおうじゃないか、生グラント!
油断すると気を失いそうだけどね。

お風呂にも入ってキングサイズのベッドで夫となったグラントを待つ。

こういう時は布団の上?中?下?どこが正解?
ちょっと寒いし、中で待っとくか。
ゴソゴソと布団の中で待つ。うわっ暖かぁぁ。
マットレスも丁度良い感じ。寝心地も良いな。

軽く目を閉じるだけ。グラントが来たら、すぐに起きるから大丈夫。


***

「大変申し訳ございません」

翌朝、私は新婚1日目にしてベッドの上で土下座していた。
何やってんだ、ミランダ!寝落ちとは情けないぞ。

「グラント、本当にごめんなさい。お詫びに
「何でも?」

ピクっとその言葉に反応したグラント。

ん?

「じゃあ、早速、今から昨日の夜の続きしよっか」

ニッコリいい笑顔でベッドの上にぽふんと押し倒される。

ん?んん?今から?夜じゃ無くて?それって初夜じゃ無くて、初朝なんだけど・・・

「あの、グラントもう朝なんだけど・・・」
「大丈夫、問題ない。ぐっすり寝たから疲れも取れただろ?丁度良かった」
「そうなの?え~っと」

丁度良いとは?オロオロしてると

「何でもするって言ったよね」

ドアップの推しの顔にややひるみながら、コクコクと頷いた。
そして、その言葉を後悔したのは、翌日なのだった。














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