[完結】うちの第二隊副隊長さまはモテ過ぎるのでとっとと結婚してほしい

いかくもハル

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【番外編】魔術書のおっさんとミランダ 2

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~ミランダ~

やれやれ、旦那の実家の親戚の集まりも中々疲れるな。
ロックス家は好きだし、全然行くのは問題無いが、それと疲れる疲れないは別問題だ。
5歳を筆頭に年子三人抱えてだし。
まぁ、うちの子は大人しい方だし、聞き分けも良い。
他の子供達がギャースカやってるのを見ると、うちは育てやすい子達なんだと思う。
グラントが子育て上手いしな。私なんかより全然上手い。



3歳になると幼稚園なので、三人は昼間は幼稚園に行っている。
その分昼間は大分マイペースで家事が出来るようになった。

掃除も洗濯も終わり、ちょっと茶でも飲んで休憩しようかという時だった。
そう言えば、アシュレイさんが魔術書がどうとか言ってたな。
ヴァンサンが時々私たちの部屋からおじさんの声が聞こえるとか・・・。
ちょっと見てみる?今、昼間だし。

今度の休みにアシュレイさんが様子を見に来てくれることにはなっているが、おじさんの声というのも気になる。
2階の寝室に入った。


本棚を見てみる。ずらりと並ぶマリモリ先生の愛しい本達。
その他、ガリ勉時代の参考書や魔術辞典、グラントが使う騎士団関係の本などなど。
そこに、茶色の異質な本があった。

これだ!間違いない。見覚えがある。
ローザの誕生日プレゼントの写真集の時間を戻した時に、ついでにアシュレイさんに頼まれて時間を戻した魔術書だ。
古本屋でオマケでもらったやつ。


オマケでもらってついでの奴が何故ここに?
手に取ってパラリとめくる。

『おぉい、やっと気がついたんか!遅いぞ!』
「ギャッッッ!!!」

いきなり頭の中におっさんの声が響いて思わずビックリして手を離す。
本はバサリと落ちた。

『これ!手を離す奴があるか!貴重な魔術書だぞ!馬鹿もんっっ!!』

と、言われましても、不気味すぎて直ぐに拾えなかった。
な、な、な、何で本が喋る???

「き、気持ち悪っ!」
『失敬なっ!わしを誰だと思ってる!始まりの魔術師と呼ばれたアダモス・ゴードンだぞっっ!!』
「し、知らないですぅ」

嘘。知ってる。魔術専科に行ってたから。
でも、知ってると言うと面倒臭そうなので、シラを切ることにした。
魔術師に興味がない私には、申し訳ないがイマイチ凄さが伝わらないし。

『嘘をつけ!お前の魔術は並のやつとは違うぞ!訓練を受けた魔術師の魔力だ』

チッ、バレたか。
仕方ない、魔術書を拾い上げた。

「何か御用ですか?っていうか、何で勝手にウチにいるんです?魔術研究所に持って行ったはずなんですけど?」
『もっと有り難がれ。このわしが自らお前と契約を結びに来てやったのだぞ!』
「はぁ?いやいや、頼んで無いです。お帰り下さい」
『!!!』
まさか即断られるとは思って無かったのか、魔術書はちょっと震えていた。
始まりの魔術師アダモス・ゴードンは知ってるけど、何で現在育児休暇中の主婦の私の元に来るのだ?
もっと他に現役バリバリの人がいるだろう。そう思って聞いてみた。

「何で私なんです?他にいるでしょう、浄化師のクリストファーさんとか、レオナルドさんとか」 
『あいつらにわしは必要ない』

なるほど。

「じゃあ、魔術研究所のアシュレイさんとかどうです?私の義弟ですが」
『ふむ、あやつか・・・だが男じゃろ。わしは男は好かん』

そんな理由で私の所に来たのか?しかも夫婦の寝室に潜んで?
始まりの魔術師とかいいながら、単なる女好きの覗き見ドスケベオヤジじゃないかっっ!
とんでもねーな、魔術研究所の皆さんが泣くぞ。

「いやいや、本当困るんですよ。私は騎士団事務官で魔術師でも何でもないんですから」
『わしを復活させたのはお前じゃろ?お前の魔力とわしの魔力はすこぶる相性が良いようでな、すっかりお前を気に入った。他の奴とは契約せん!』
「確かに、復活させましたけど。ついでですよ?アシュレイさんに頼まれてに復活させましたので、お礼ならアシュレイさんに言って下さい。それに、私よりも全然魔術師としての才能ある方ですよ。顔も良いし、背も高いし、おススメです」

根っからの女好きそうなおっさんに無駄と思いつつ、BL展開に持ち込んでみる。

『だからあやつは男じゃろ。男は好かん。何度も言わすな』

ダメか・・・
しかし、魔術書がおっさんとわかった以上、寝室に置いとく訳には行かない。
子供たちの部屋にもなぁ。あまり影響受けてほしくないし。

「契約の件はともかく、寝室にはもう来ないで下さいね。今度寝室で見つけたら・・・」

ズモモォォォと、魔力を放出させる。

『な、何だ』
「燃やします」
『おまっ、わしを誰だと思ってる!』
「関係ありません。家主の許可なくプライベート空間に踏み込んだら問答無用で燃やします。良いですね!」

私のあまりの勢いに呑まれたのか、おっさんは

『わかった、わかったから、落ち着け。もう来ないから』
「よろしい」

ふぅ、初めが肝心だよね。甘い顔したらこの手の輩はつけ上がる。
契約というなら、私が主導権を握る必要がある。しないけどね。

『全く・・・何という奴じゃ、敬意も払わんと・・』

何かブツブツ言ってるけど、関係無い。
とりあえず、魔術書をリビングのテーブルの上に置いた。
おっと、おっさんに構ってる時間はない。
主婦は忙しいのだ。それに子供たちのお迎えにも行かなくては。

「わたし、ちょっと子供たちの迎えに幼稚園行ってくるので、静かにしてて下さいね」

そう言うと、返事も聞かずに幼稚園に転移した。
本当に時間が無かったのだ。
とにかく、あのおっさんはアシュレイさんに任せた。





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