[完結】うちの第二隊副隊長さまはモテ過ぎるのでとっとと結婚してほしい

いかくもハル

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【番外編】魔術書のおっさんとミランダ 4

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~ミランダ~

アシュレイさんが早速所長さんと連絡取ってくれ、週明け魔術研究所に行くことになった。
アシュレイさんも付き添ってくれるらしい。

この人、無愛想で表情筋死んでる割には意外と面倒見が良い。子供たちが懐くわけだ。
もらった土産は見事に子供心を捉えたらしく、あの後、夕食を食べて、子供たちと仲良く遊び、子供たちが寝た後はお酒も飲んで帰って行った。
お酒を飲んだついでに恋愛事情を聞いてみたら、顔は良いので容姿に釣られてモテはするのだが、3ヶ月もすると振られるらしい。
理由は「何考えてるかわからない」と言われることがほとんどだという。
そうかな?あの人は案外分かりやすいと思うけど、世の女子というのはわからないものだ。

ついでに魔術書おっさんも連れて帰ってくれるか聞いてみたが、速攻で断られた。
やっぱりな。


魔術書おっさんをカバンに入れて研究所のアシュレイさんの勤務している部署に転移した。

「おはようございます。アシュレイさん」
「おはよう、義姉さん。わざわざありがとう。早速行こうか」
「はい。よろしくお願いします」


二人で所長室に向かう。
どんな人なのか想像もつかない。
専科に通ってた時には、まさか自分が魔術研究所に行くことになるとは思いもしなかった。
何しろ、希望職種は騎士団事務官一択だったからね。

アシュレイさんがノックをして、中から応えがあった。
少しドキドキしていたら

「緊張しなくても良いよ。気のいいおっさんだから」

とさりげなく声をかけてくれる。良い人!
理解ある人と巡り合って幸せになって欲しい。ぜひに。

「失礼します」
「ようこそ、ミランダさん。所長のライオネル・エコードです」
「ミランダ・ロックスです。お時間いただきましてありがとうございます」
「いえいえ、立ち話も何ですから、そちらへおかけ下さい」

所長室内の応接ソファに座る。

「まず、2年前に登録した物質の時間を遡る魔術についてなんですが、何人か試してみたものの、あまり上手く出来なくてですね。使いこなせていないのが現状なんです」
「そうなんですか。なるほど」
「ただ、他部署から需要も結構ありまして。登録してあるのに使える人がいないのは問題だと困っていたのです」

うぅっ、迂闊な魔術を開発し、登録して申し訳ありません。

「お子さんたちはまだ小さいと伺ってるので、毎日とは言いません、都合がつく時間と日程で来ていただければ、こちらも大変助かります」
「はい。そういうことでしたら。問題はありません」
「良いのか?義姉さん。事務官にこだわっていただろう」
「あ~それね。うん、大丈夫」

あ、そうか、アシュレイさんは私が筋肉好きなの知らないんだっけ?
騎士団に行かなくても理想の筋肉グラントは家にいるのだ。
しかも、最押しで好きなだけ見放題。生で。
なので、今はもう事務官へのこだわりはない。
引き続きギリアムさんに頑張ってもらおう。
しかし、ギリアムさんが結婚した時は驚いた!
奥さんは私の一つ下の魔術騎士さんで凄い美人だったよね。
っていうか、ギリアムさんも普通に男の人だった事に衝撃を受けた人も多かったと思う。
やっぱあれだな、固定観念無くすって大事だな。
幸せそうで良かった、良かった。

ギリアムさんでも結婚出来たのだから、アシュレイさんもきっと大丈夫、だと思う。


魔術にあまり興味はないが、私の作業に集中出来るなら、職種は全く問題ない。
むしろ、好待遇でありがたいくらいだ。

「パートタイム勤務ということで、時給計算で構いませんか?」
「はい。ちなみにおいくらくらいなのでしょう」
「そうですね、1時間2000ウェンでいかがですか?」
「よろしくお願いします!」

高い!ギルドで仕事見てみたけど、だいたい1000ウェン前後が普通だ。
さすが、魔術師は専門職だな。

「時間の希望はありますか?」
「9時から15時まででも大丈夫ですか?幼稚園のお迎えがあるので」
「問題無いですよ。今のところは急ぎは無いので。夜に仕事しても構いませんし」
「はい。わかりました」

パートなら制服は特になく、ローブを支給してくれるとのこと。
普段着に羽織るだけとは簡単で良いな。

「ちなみに、魔術書はどちらにありますか?」
「持ってきました」

私は魔術書おっさんをカバンから取り出して所長の前に置いた。
あ、表面の焦げそのままだった。まぁいっか。

「契約はされました?」
「いいえ、まずは使えるかどうか試してみてからと話してあります」
「義姉さんしっかりしてるから、始まりの魔術師の肩書きなんて気にして無いんだよ。実力があるかどうかをみて判断するって」
「な、なるほど」
「はい。変な人だったら困るので」

もう十分疑ってるけどね。
あわよくば、契約しないまま、こき使うつもり。
グラントに怒られてから、魔術書おっさんは大人しい。つまらん。

「では、来週からお願いしても良いでしょうか?契約書はその時に作っておきます」
「はい、よろしくお願いします」 


アシュレイさんともとの研究室に戻ってきた。

「本当に良かったの?」
「うん。グラントとも話して、時間の都合がつくなら事務官よりいいよねって話してたの」
「肝心の魔術は覚えてる?」
「大丈夫。実はチョイチョイ使ってるんだよね」
「そうなの!?」
「絵本とかさ、結構破いたり落書きしたりしちゃうから」
「そうか、案外実生活で使えるもんなんだな。物凄く貴重な魔術なのに、義姉さんはさりげなく使うからびっくりするよ」
「あは、そうかな」

いやぁ、まさか他の人が使えないとは思わなかった。
幸い魔力は多いから、存分にお役に立てたい。
子育てばかりだったから、少し違う環境になるのも良いしね。

「思ったより好待遇でビックリしちゃったよ。良いのかな?」
「もちろん。安いくらいだよ。もっと、ふんだくって良いのに」
「いやいや、十分だよ」
「はは、欲が無いな。じゃあ来週からよろしく」
「アシュレイさんと同じ研修室で良いのかな?」
「そう。俺が上司」
「よろしくお願いします」

ふむ。兄弟共に上司になるとはこれはまた不思議なご縁だななぁ。

「あ、義姉さん、

チッ。魔術書おっさん置いてこうとしたのバレたか。

こうして、私のパート魔術師生活が始まったのである。




































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