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お屋敷渡り 4
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~シェリル~
目が覚めると、アシュレイさんが部屋着に外套を着てベッドに腰掛けていた。
薄明るい中、胸が痛くなりそうな綺麗な微笑みに見下ろされてドキドキした。
いつから見てたんだろ?っていうか、外に行ったの?
「おはよう。シェリル」
そっと屈んで来て唇に触れられる。冷たい。
「おはようございます」
起き上がろうとして、あ、服着て無かったんだった。
あれ?でもサッパリしてる。首を傾げてると
「俺が起きた時に洗浄掛けといたから、直ぐ服着れるよ」
「ありがとう。ちょ、ちょっと待ってね」
素早く下着と部屋着を拾い、身につける。
はぁ、やっと落ち着いた。
うーん、今だにアシュレイさんに全裸見られるの恥ずかしい。今更なんだけどさぁ。
「シェリルにちょっと提案があって」
「提案?」
提案・・・何だろう。
「シェリル、今日はバースじゃなくて、テトに乗ってって言ったら嫌?」
「テトに?良いですけど、アシュレイさんは?」
「俺がバースに乗る」
「アシュレイさんが?大丈夫ですかね・・・」
「大丈夫。アイツと交渉して来たから」
交渉?そんな複雑なやり取り出来るの?本当に?
「バースの嫁がテトなんだよ。アイツ、嫁に俺が乗るのがすっごい嫌みたいでさ、俺に嫌がらせしてたんだよね」
「えぇっっっ!!そうなんですか?何でわかったんです?」
「テトが嫁なのは兄貴に聞いたんだけど、実はアイツ、かなり魔力が多くてさ、魔力通してコミニケーション出来るんだよ」
「そうなんですか!?」
「うん。シェリル、俺と魔力混ざってから、魔力コントロール無意識でも上手く出来るようになっただろ?だから、バースとも普通にコンタクト出来てたんだよ」
「なるほど。スゴイ分かってるなって思ってたんですよ」
「バースに魔力通して、ヤツの魔力の感度上げといたから、これからはみんなとコミュニケーション取れるようになったよ」
「さすが!!アシュレイさん!これでバースもみんなと上手くやって行けますね」
「あぁ、大丈夫だ。だから、今日は俺がバースに乗る」
「そういう事なら、了解です」
ずっと誰もと上手くコミュニケーション取れなくて、もどかしかっただろうな。良かった、バースがみんなと仲良くなれそうで。
それから、また、伝統衣装に着替えて朝食を取り、私たちはバースとテトのところにやって来た。
「おはよう、テト。今日は私がテトに乗せてもらうね。よろしくね」
テトは艶々で真っ黒の瞳を瞬かせてフンフンと頷いてくれた。
可愛いっっ!こんな綺麗な馬に乗せてもらえて、すごく嬉しい。
ひらりとテトに乗った。
しばらくすると、アシュレイさんが森の奥を気にし出した。
そちらを見ても特に変わった事はない。
何だろう?と思ってると、とうとうバースの足まで止まった。
振り返ると、二人は同じ方向を見ている。
「どうしました?アシュレイさん」
「兄貴のところに行こう。ちょっと気になる気配があった」
「気になる気配・・・わかりました、直ぐに対応しましょう」
アシュレイさんが気になるなら、確認した方が良いだろう。
グラントさんとところに行き、3人でそっと列から離れ、森の奥に向かう。
森の中に入ると、直ぐに分かった。
確かに、鳥の声すらしない。
微かに魔力の残滓を感じる。こんな人気のないところで何故?
嫌な予感がする。
アシュレイさんがグラントさんに聞いた。
「この先はもしかして」
「大きめの洞窟があったな」
「なるほど、入り口に認識障害をかけてるな」
「洞窟に何か潜んでいるのですね」
アシュレイさんが私を見た。
あ、この顔は・・・
「シェリルは「下がりませんよ。私はアシュレイさんの護衛なの忘れましたか?」」
キッパリと言った。
冗談じゃない。私は騎士なのだ。
どんな時でもアシュレイさんの盾になる。
そんな私の決意を分かってくれたのか、それ以上食い下がらず、苦笑して同行を許可してくれた。
「わかった。気をつけろよ」
そんな私達のやり取りを聞いてたグラントさんが、口元に笑みを浮かべて胸元のあたりをポンポンと叩く。
「大丈夫だ。こんな事もあろうかと、クリストファーから最上級ポーション作ってもらってある」
「こんな事もあろうかと、で備えるレベルじゃないだろ」
「何があるかわからんからな。備えは最大警戒時に合わせておくに越した事はない」
「確かに」
さすが、隊長ともなるとそこまで気を遣って準備するものなんだ。凄いな~。
私たちは洞窟入り口で馬を降り、ここで待つように言い聞かせる。
彼らは知的な瞳を輝かせた。
分かった、って言ってるな、きっと。
雑に張られた認識障害の魔法を潜って、洞窟内に入る。
直ぐにアシュレイさんが中を探索し出した。
さり気なくやってるけど、周りを警戒しながら、更には敵に察知されない様にするの凄く難しいんだよね。
やっぱりアシュレイさんは凄い。
「ヤツら15人だな」
グラントさんと私は黙って頷く。
15人か、思ったより多い。
認識障害の魔法といい、旅行者が迷った訳では絶対に無い。
腰に刺した大振りの短剣を握り、覚悟を決めた。
愛剣は持っていない。
持っていたとしても、洞窟内で振り回すには適していない。
私の剣は私の背丈より少し短いくらいの特注の大剣だ。
剣幅は細くしてあるものの、普通の剣に比べてやや重く、長い分取り回しが難しく小回りは効かない。
実はわざとそうしてある。
私の膂力では、使いやすい剣では動きが速すぎてしまい、みんなと訓練が出来ないから。
打ち合わす事もできずに怪我をさせてしまう恐れがあるため、取り扱いの難しい剣を使っている。
更に、戦いの最中は集中して来ると、どんどん周りがゆっくりに見えて来る。
それから自分がふわりと浮き上がって、上から俯瞰して見ている様な感覚になる。
その上、妖精眼になってからは相手の筋肉の動きすら見えて、相手の動きを予測できる様にすらなった。
だから、普段の訓練では半分ほどの実力しか出せていない。
ハッキリ言って、自分に合った剣で本気を出せば、グラントさん以外の隊長クラスでも私の相手は難しいと思う。自慢でも何でもなく。
だから今、腰の短剣で戦えと言われても、私には全く問題無い。
早く動ける分、恐らく敵は私に掠ることも出来ないだろうと思う。
久しぶりに、手枷足枷を外して戦えと言われた気分だ。
集中すれば、何人いようと私は負けない。
不思議な高揚感が私を包む。
アシュレイさんを傷一つ付けずに守る。その自信がある。
私は深くゆっくりと呼吸しながら戦いに備えた。
「兄貴、これ」
「そうだな、間違いない」
アシュレイさんが拾い上げたのは魔術師のローブだった。
それってまさか!例の偽魔術師の詐欺グループ!?
彼らのために人生を台無しにされた、ダン・ロドリゲスを思い出した。
絶対に許せないっっっ!!!
アシュレイさんの雰囲気がガラリと変わった。
心臓を凍らせる様な声で
「悪いな、兄貴とシェリル。コイツらの始末、俺にさせてくれ」
「殺すなよ。コイツらは生かして罪を償わせる」
「なるべくそうする」
今グラントさんの力で地面を軟化させて硬化すれば彼らは呆気無く拘束出来る。
それをしないのは、易々と捕まえるつもりなど無いという事。
「ひぇ~、魔王様降臨~」思わず呟いてしまった。
「お前達、起きろ」
アシュレイさんが威圧と同時にゾッする程低い声で命じた。
ビリビリする空気に、眠っていた男達は慌てて飛び起きた。
「なんっっ!!お前達誰だ!!」
奥にいた男が何とか声を振り絞って答える。
リーダーだろうか、起きた同時に剣を構えた。
周りの男達もただ事じゃ無い雰囲気に呑まれていたが、私たち3人だけだとわかると、次々と剣やナイフを構えた。
一人がグラントさんに気が付いた。
「リーダー、コイツ騎士団の第二隊のグラントだ!!」
ざわっと詐欺グループに動揺が走る。
"隊長"付けなさいよ。
「大丈夫だ!ヤツらはたったの3人だ!!一人は女だぞ!」
え?私?良いよ、全員来ても。
冷静になったら、自分たちに有利と思ったのか、ニヤニヤし出した。
「グラントを倒したヤツにそこの女をやるぞ!」
うぉぉぉ!!!と男達が騒ぎ出した。
一斉に押し寄せて来る。
私はいつでも動けるように短剣の柄を握って構えた。
グワッと、目の前から物凄い魔力の圧を感じた途端、バリバリバリッッドッカーンという轟音とともに洞窟の天井に穴が空いた。
あまりの事に呆然とする。
あれ?風圧も衝撃もない。よく見ると、3人はバリアに包まれていた。
アシュレイさんが張ったみたい。
パラパラと砂が落ちて来る。
見上げれば・・・う~ん、良い天気。
空いた穴から空が見えていた。
うそぉ、アシュレイさん、怒りすぎて山に穴あけちゃったの???
あれ?ヤツらは何処へ?と思ったら、漏れなく全員洞窟の壁に叩きつけられて気絶していた。
足や腕があらぬ方向に捻じ曲がっているけど、生きてるらしい。
頭が潰れてないところを見ると、頭だけバリア張ったのかな?
器用だな、アシュレイさん。
「チッ、こんなあっさり片付けるハズじゃなかったんだけどな」
「地雷踏んだな、あいつら。ちゃんと生かしといたか?」
「一応頭だけは防御したし、手加減はしたつもりだから大丈夫だろ。あんな事言われれば兄貴だってキレるだろ?」
お前なぁ~と、グラントさんの呆れたような声が響いた。
否定はしないところを見ると、同じ事するらしい。
かなりボロボロになった奴らをまとめて最小限のヒールをかけて、グラントさんが第二隊の留置所まで転移した。
シーンとなった洞窟に二人っきりになる。
「びっくりしたか?シェリル」
こちらを伺うようにアシュレイさんが聞いて来た。
「そりゃ、びっくりするよ。凄いのは知ってたけど、目の当たりにしたら、改めて凄いなって尊敬した」
「尊敬?怖くなかったのか?」
「えー!怖くないよ。アシュレイさんが私に危害加える事ないんだし」
「シェリルに・・・化け物って怯えられるかと思った」
「はははは、まさか」
アシュレイさんが私をギュッと抱きしめた。
心臓が凄くドキドキしている。
私に怖がられるかと心配したのかな。
「シェリル、敬語じゃなくなってる」
「あ、ごめんなさい。びっくりしすぎて」
「その方が嬉しい」
アシュレイさんはもう一度私をギュッとして、答える様に私もギュッと抱きしめ返した。
目が覚めると、アシュレイさんが部屋着に外套を着てベッドに腰掛けていた。
薄明るい中、胸が痛くなりそうな綺麗な微笑みに見下ろされてドキドキした。
いつから見てたんだろ?っていうか、外に行ったの?
「おはよう。シェリル」
そっと屈んで来て唇に触れられる。冷たい。
「おはようございます」
起き上がろうとして、あ、服着て無かったんだった。
あれ?でもサッパリしてる。首を傾げてると
「俺が起きた時に洗浄掛けといたから、直ぐ服着れるよ」
「ありがとう。ちょ、ちょっと待ってね」
素早く下着と部屋着を拾い、身につける。
はぁ、やっと落ち着いた。
うーん、今だにアシュレイさんに全裸見られるの恥ずかしい。今更なんだけどさぁ。
「シェリルにちょっと提案があって」
「提案?」
提案・・・何だろう。
「シェリル、今日はバースじゃなくて、テトに乗ってって言ったら嫌?」
「テトに?良いですけど、アシュレイさんは?」
「俺がバースに乗る」
「アシュレイさんが?大丈夫ですかね・・・」
「大丈夫。アイツと交渉して来たから」
交渉?そんな複雑なやり取り出来るの?本当に?
「バースの嫁がテトなんだよ。アイツ、嫁に俺が乗るのがすっごい嫌みたいでさ、俺に嫌がらせしてたんだよね」
「えぇっっっ!!そうなんですか?何でわかったんです?」
「テトが嫁なのは兄貴に聞いたんだけど、実はアイツ、かなり魔力が多くてさ、魔力通してコミニケーション出来るんだよ」
「そうなんですか!?」
「うん。シェリル、俺と魔力混ざってから、魔力コントロール無意識でも上手く出来るようになっただろ?だから、バースとも普通にコンタクト出来てたんだよ」
「なるほど。スゴイ分かってるなって思ってたんですよ」
「バースに魔力通して、ヤツの魔力の感度上げといたから、これからはみんなとコミュニケーション取れるようになったよ」
「さすが!!アシュレイさん!これでバースもみんなと上手くやって行けますね」
「あぁ、大丈夫だ。だから、今日は俺がバースに乗る」
「そういう事なら、了解です」
ずっと誰もと上手くコミュニケーション取れなくて、もどかしかっただろうな。良かった、バースがみんなと仲良くなれそうで。
それから、また、伝統衣装に着替えて朝食を取り、私たちはバースとテトのところにやって来た。
「おはよう、テト。今日は私がテトに乗せてもらうね。よろしくね」
テトは艶々で真っ黒の瞳を瞬かせてフンフンと頷いてくれた。
可愛いっっ!こんな綺麗な馬に乗せてもらえて、すごく嬉しい。
ひらりとテトに乗った。
しばらくすると、アシュレイさんが森の奥を気にし出した。
そちらを見ても特に変わった事はない。
何だろう?と思ってると、とうとうバースの足まで止まった。
振り返ると、二人は同じ方向を見ている。
「どうしました?アシュレイさん」
「兄貴のところに行こう。ちょっと気になる気配があった」
「気になる気配・・・わかりました、直ぐに対応しましょう」
アシュレイさんが気になるなら、確認した方が良いだろう。
グラントさんとところに行き、3人でそっと列から離れ、森の奥に向かう。
森の中に入ると、直ぐに分かった。
確かに、鳥の声すらしない。
微かに魔力の残滓を感じる。こんな人気のないところで何故?
嫌な予感がする。
アシュレイさんがグラントさんに聞いた。
「この先はもしかして」
「大きめの洞窟があったな」
「なるほど、入り口に認識障害をかけてるな」
「洞窟に何か潜んでいるのですね」
アシュレイさんが私を見た。
あ、この顔は・・・
「シェリルは「下がりませんよ。私はアシュレイさんの護衛なの忘れましたか?」」
キッパリと言った。
冗談じゃない。私は騎士なのだ。
どんな時でもアシュレイさんの盾になる。
そんな私の決意を分かってくれたのか、それ以上食い下がらず、苦笑して同行を許可してくれた。
「わかった。気をつけろよ」
そんな私達のやり取りを聞いてたグラントさんが、口元に笑みを浮かべて胸元のあたりをポンポンと叩く。
「大丈夫だ。こんな事もあろうかと、クリストファーから最上級ポーション作ってもらってある」
「こんな事もあろうかと、で備えるレベルじゃないだろ」
「何があるかわからんからな。備えは最大警戒時に合わせておくに越した事はない」
「確かに」
さすが、隊長ともなるとそこまで気を遣って準備するものなんだ。凄いな~。
私たちは洞窟入り口で馬を降り、ここで待つように言い聞かせる。
彼らは知的な瞳を輝かせた。
分かった、って言ってるな、きっと。
雑に張られた認識障害の魔法を潜って、洞窟内に入る。
直ぐにアシュレイさんが中を探索し出した。
さり気なくやってるけど、周りを警戒しながら、更には敵に察知されない様にするの凄く難しいんだよね。
やっぱりアシュレイさんは凄い。
「ヤツら15人だな」
グラントさんと私は黙って頷く。
15人か、思ったより多い。
認識障害の魔法といい、旅行者が迷った訳では絶対に無い。
腰に刺した大振りの短剣を握り、覚悟を決めた。
愛剣は持っていない。
持っていたとしても、洞窟内で振り回すには適していない。
私の剣は私の背丈より少し短いくらいの特注の大剣だ。
剣幅は細くしてあるものの、普通の剣に比べてやや重く、長い分取り回しが難しく小回りは効かない。
実はわざとそうしてある。
私の膂力では、使いやすい剣では動きが速すぎてしまい、みんなと訓練が出来ないから。
打ち合わす事もできずに怪我をさせてしまう恐れがあるため、取り扱いの難しい剣を使っている。
更に、戦いの最中は集中して来ると、どんどん周りがゆっくりに見えて来る。
それから自分がふわりと浮き上がって、上から俯瞰して見ている様な感覚になる。
その上、妖精眼になってからは相手の筋肉の動きすら見えて、相手の動きを予測できる様にすらなった。
だから、普段の訓練では半分ほどの実力しか出せていない。
ハッキリ言って、自分に合った剣で本気を出せば、グラントさん以外の隊長クラスでも私の相手は難しいと思う。自慢でも何でもなく。
だから今、腰の短剣で戦えと言われても、私には全く問題無い。
早く動ける分、恐らく敵は私に掠ることも出来ないだろうと思う。
久しぶりに、手枷足枷を外して戦えと言われた気分だ。
集中すれば、何人いようと私は負けない。
不思議な高揚感が私を包む。
アシュレイさんを傷一つ付けずに守る。その自信がある。
私は深くゆっくりと呼吸しながら戦いに備えた。
「兄貴、これ」
「そうだな、間違いない」
アシュレイさんが拾い上げたのは魔術師のローブだった。
それってまさか!例の偽魔術師の詐欺グループ!?
彼らのために人生を台無しにされた、ダン・ロドリゲスを思い出した。
絶対に許せないっっっ!!!
アシュレイさんの雰囲気がガラリと変わった。
心臓を凍らせる様な声で
「悪いな、兄貴とシェリル。コイツらの始末、俺にさせてくれ」
「殺すなよ。コイツらは生かして罪を償わせる」
「なるべくそうする」
今グラントさんの力で地面を軟化させて硬化すれば彼らは呆気無く拘束出来る。
それをしないのは、易々と捕まえるつもりなど無いという事。
「ひぇ~、魔王様降臨~」思わず呟いてしまった。
「お前達、起きろ」
アシュレイさんが威圧と同時にゾッする程低い声で命じた。
ビリビリする空気に、眠っていた男達は慌てて飛び起きた。
「なんっっ!!お前達誰だ!!」
奥にいた男が何とか声を振り絞って答える。
リーダーだろうか、起きた同時に剣を構えた。
周りの男達もただ事じゃ無い雰囲気に呑まれていたが、私たち3人だけだとわかると、次々と剣やナイフを構えた。
一人がグラントさんに気が付いた。
「リーダー、コイツ騎士団の第二隊のグラントだ!!」
ざわっと詐欺グループに動揺が走る。
"隊長"付けなさいよ。
「大丈夫だ!ヤツらはたったの3人だ!!一人は女だぞ!」
え?私?良いよ、全員来ても。
冷静になったら、自分たちに有利と思ったのか、ニヤニヤし出した。
「グラントを倒したヤツにそこの女をやるぞ!」
うぉぉぉ!!!と男達が騒ぎ出した。
一斉に押し寄せて来る。
私はいつでも動けるように短剣の柄を握って構えた。
グワッと、目の前から物凄い魔力の圧を感じた途端、バリバリバリッッドッカーンという轟音とともに洞窟の天井に穴が空いた。
あまりの事に呆然とする。
あれ?風圧も衝撃もない。よく見ると、3人はバリアに包まれていた。
アシュレイさんが張ったみたい。
パラパラと砂が落ちて来る。
見上げれば・・・う~ん、良い天気。
空いた穴から空が見えていた。
うそぉ、アシュレイさん、怒りすぎて山に穴あけちゃったの???
あれ?ヤツらは何処へ?と思ったら、漏れなく全員洞窟の壁に叩きつけられて気絶していた。
足や腕があらぬ方向に捻じ曲がっているけど、生きてるらしい。
頭が潰れてないところを見ると、頭だけバリア張ったのかな?
器用だな、アシュレイさん。
「チッ、こんなあっさり片付けるハズじゃなかったんだけどな」
「地雷踏んだな、あいつら。ちゃんと生かしといたか?」
「一応頭だけは防御したし、手加減はしたつもりだから大丈夫だろ。あんな事言われれば兄貴だってキレるだろ?」
お前なぁ~と、グラントさんの呆れたような声が響いた。
否定はしないところを見ると、同じ事するらしい。
かなりボロボロになった奴らをまとめて最小限のヒールをかけて、グラントさんが第二隊の留置所まで転移した。
シーンとなった洞窟に二人っきりになる。
「びっくりしたか?シェリル」
こちらを伺うようにアシュレイさんが聞いて来た。
「そりゃ、びっくりするよ。凄いのは知ってたけど、目の当たりにしたら、改めて凄いなって尊敬した」
「尊敬?怖くなかったのか?」
「えー!怖くないよ。アシュレイさんが私に危害加える事ないんだし」
「シェリルに・・・化け物って怯えられるかと思った」
「はははは、まさか」
アシュレイさんが私をギュッと抱きしめた。
心臓が凄くドキドキしている。
私に怖がられるかと心配したのかな。
「シェリル、敬語じゃなくなってる」
「あ、ごめんなさい。びっくりしすぎて」
「その方が嬉しい」
アシュレイさんはもう一度私をギュッとして、答える様に私もギュッと抱きしめ返した。
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