社畜モブの俺、異世界転移したら「Sub」っていわれたんだけど。え、「Sub」って何ですか?

鉾田 ほこ

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4章

33 またですか?

 
「ごめんなさいね、お待たせして」
 しばらく待っていると、ゾイがコギーを連れて食堂に入ってきた。
 その場にいる全員が一斉にゾイの来た方向に注目する。
 その視線を気にとめる風もなく、ゾイは足を止めずにすたすたと食堂の中央まで進み、待っていたみんなの方を向いて話始めた。

「集まってくれてありがとう。ちょっとプレイヤーのみんなに確認したいことと注意喚起があって集まってもらっているの」
 そう口火を切ったゾイの話によると、最近ダイナミクスを持つ人が行方不明になる事件が巷では発生しているとのことだった。
「幸い、このハウスで働いているプレイヤーでいきなりいなくなった人はいないけど、みんなも街に出るときは気を付けてほしいと思う。あと、自分が相手をしていたダイナミクス持ちの人で最近見かけない、しばらくの間プレイをしにハウスに来ていないという人に心当たりがないかしら?」
 突然のゾイの話に集まった面々は驚き、お互いに顔を見合わせてさざめきあっている。
 健介は違法奴隷商に捕まり、檻に入れられた記憶がにわかによみがえり、心臓が早鐘を打ち始める。あの時、同じ牢には女性や若い男の人、子供など様々だった。
 健介は周りをきょろきょろと見回し、ウンシアがいないかと探す。
「もし、心当たりがあるなら手を挙げて」
 その呼びかけに、さざめきあっていたうちの数名のDomが手を挙げた。
「いま手を挙げた人には後で話を聞くから」
 そう言って、ゾイはその場にいる人たちに解散を言い渡した。
「ケン、顔色が悪いよ」
「あ、あぁ……」
 食堂を見渡すと、三々五々食堂から出ていく人たちが目に入る。引き続き、この場で朝食を取っていく人と半々のようだった。
 健介はまだ朝食を取っていなかったが、いまは食欲がまったくない。何もしていないと、トラウマのようにまた過去のことを思い出してしまいそうで、洗濯場に戻って仕事に没頭しようかと考えた。
「今日はもう休んだら?」
「い、いや、大丈夫です。シュナさん、う、ウンシアさんは?」
「朝まで仕事していた人は集まっていないみたいだから。どうしたの? ほんとに体調悪そうだよ」
「……そうだったんですね」
「ウンシアが気になるなら部屋に行く?」
「いえ、彼も休んでいると思うので」
 ウンシアもこの場にいたら、健介と同じように過去のことを思い出すのではないかと思ったのだが、いないようだった。幼くして親元から連れ去られたウンシアが親元に帰れずこのハウスで働いていることにも健介は心が痛む。
 街の食堂よりはしっかりした造りの木製の椅子に腰かけ、朝食を待つ人たちを見るともなく遠い目で見つめる。
 健介とシュナ以外は食事を取るつもりで残っている人しかいない。
「いきましょうか」
 健介もこれ以上ここにいても仕方がない、と仕事に戻るため食堂の外へと足を進める。


 それから、ダイナミクス持ちの人が行方不明になっている話についての進捗は特にゾイから話されることはなかった。だが、代わりに意外な人から話を聞くことになった。
 サイベリアンがまた一週間たったころに健介のもとにやってきた。

 小さなノックの音に文字の練習をしていた健介は机から顔を上げる。
 部屋の中は蝋燭の火の薄暗い光で薄暗い。こんな夜も更けるころに誰が来たのだろうかと、健介は気持ち早足で扉に近づく。「どうぞ」と声をかけると、入ってきたのは申し訳なさそうな顔をしたゾイだった。
「ごめんなさいね、ケンちゃん。あの……」
 ゾイ本人が健介の部屋に来ることも珍しいが、こんなに歯切れの悪い物言いもまたそれ以上に珍しい。
「嫌なら断るし、こんな遅くに非常識だとは思っているんだけど……」
「? どうかしましたか?」
 ゾイがなんの理由で来たのか……いくら鈍い健介だとしても流石にここ数回の出来事を思い返せばなんとなく何が起きているのかは察せられる。それぐらいの察知能力は無能な社畜にも備わっている。
 だが、そこは社畜ゆえにきっとそうだろうと推察した結果を先に自分からは言えなくて、なんとなくわかっている訪問要件をわざわざ聞く。 
「また、サイベリアン殿下がケンちゃんに会いたいって言って来てるのよ。こんな時間に本当に非常識よね。断ったっていいのよ?」
 率直に浮かんだ感想は「え? またですか??」であった。そしてこの言いぶり……、ゾイは断ってほしいのかと邪推したくなる。
 しかし、このような時間にまた一週間ほどでのサイベリアンの訪問は、なにか理由があるのかもしれない。
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