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1章
16 落ち着くのは自分のほう
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* * *
一度は部屋を出たももの、様子が気になりリアンは再び客間へと戻っていた。ベッドにはその人がいまだに眉間に皺を寄せて眠っている。いつ目を覚ましても良いように、少しの間この部屋にいようと窓際の椅子に腰かけた。
その人はリアンが椅子に座ってから、ほどなくして目を覚ました。絶妙は頃合いで部屋に戻っていたな、と自分のタイミングの良さに思わず口元に笑みが浮かぶ。
ベッドから少し離れた椅子に腰かけたまま、目覚めたその人を眺めた。起き上がろうともがいているが身体に力が入らないのか上手くいかない。
すぐに諦めたのか、少しだけ顔を動かして辺りを見回している。窓際の椅子に腰掛けるリアンにはまだ気づいていない。
リアンは静かに立ち上がり、ベッドの側へと近寄った。
「無理しないで」
声をかけると、身体をびくっとさせて驚きに眼を見開いている。
「あ、あの、お、お、おれ……」
何かを話そうとするが、言葉をつまらせ上手く話せていない。「落ち着いて、大丈夫だから」と言うが慌すぎていてこちらの話を聞かず、謝り続けている。
深呼吸を促すが、今度は息を吸い過ぎたのかむせてしまった。
なんだこの生き物は……可哀そうで可愛い。
窺うように見上げる濡れた黒曜石の瞳がリアンの劣情を酷く刺激する。
虐めたい、お仕置きしたい。
……優しく支配したい。
湧き上がる嗜虐欲と庇護欲に混乱した。これまでも少なくない数のSubとプレイをしてきたが、こんなにDomらしい欲望を相手に抱いたことは未だかつてあっただろうか。
リアンは自分に問いかけるが、そんな記憶はどれだけ探しても思い当たらなかった。
股間に集まった熱に気づかないふりをして、カラフェからグラスに水を入れる。片手で頭を支えてやり、口元にグラスを運ぶとごくごくと音をたてて勢いよく水を飲んだ。
飲み込むたびに上下する喉ぼとけがみだりがましい。こちらも喉をごくりと鳴らした瞬間、盛大にむせて水を噴き出した。
「う゛、うぇっ、……ぅう……」
ぽろぽろと黒い瞳から涙を流す。
あぁ……、なんだってこうこちらの欲望を刺激してくるのか。
堪えきれずにリアンはベッドの上の彼を抱きしめて、頭を優しく撫でた。肩口にあたるその人の息がしっとりと温かい。しばらく抱きしめたまま撫で続ける。
「あ、の……、離して……もらえませんか」
小さくくぐもった声でそう告げるので、「落ち着いた?」と声をかけるが、内心では「自分が落ち着けよ」とつっこみをいれたくなるほどに興奮していた。
どうしても、この人とプレイをしたい。
自分の状況がわからない彼にここは自分の家で、危険はないこととGlareに当てられたので介抱するために連れてきたことを伝える。決して、さらってきたわけでも無理やり連れ込んでいるわけでもないと言い訳のように。
すると、目の前の人は「ぐれあ?」と初めて聞いたことばのように、リアンの言葉を繰り返した。
(Glareを知らない?)
そんなはずはない、だって彼はSubなのだから。
表情をうかがうが、彼の顔には疑問しか浮かんでいない。
(もしかして!)
「倒れる前に受け止めたと思ったのだけど、記憶がない?」
そう聞くと、「倒れる前から記憶喪失でして……」と申し訳なさそうに呟く。
そんなことはあるのか。
本当にGlareがわからないとは……偶然助けた人が記憶喪失だったなんて。
Glareがわからないのであれば、今の自分の状況も理解していないだろう。そう思い、いくつか質問をするが、ダイナミクス全般の知識がほぼ無いようだとわかってリアンは衝撃を受けた。
これは、サブドロップのケアを言い訳にプレイが出来るのではないか。
騙くらかすようで……というか、実際半分は騙しているようなものだが、プレイをしないことには彼自身にも危険な状態が続くのは真実、そう自分に言い聞かせて説明を続ける。だが……、
「ありがとう……ごさいます。た……すけて、くださって。も、もう、失礼します」
と帰ろうとした。
このまま帰せるわけがない。リアンは「そんな! こんな状態で外に出せるわけない!」と自分でもおかしいくらい悲壮な声をあげる。
「私はDomです。貴方が嫌でなければケアをさせてほしい」
もはや懇願に近かった。
だが、目の前の人は何かを悩んでいる。具合が悪化しているのか、苦しそうに肩で息をしていた。あとひと押しが必要だ。
「身を……任せてほしい」
リアンの必死さが伝わったのか、それ以上体調が悪いままでいたくなかったのか、その人がどう考えた結果かはわからなかったが、小さくうなずくと「お願いしま、す」と答えてくれた。
リアンは頭の中でガッツポーズを取った。言質は取った。これでこの人とプレイが出来る。
怖がらせないように嫌な思いをさせないように。
俺に溺れるように。
最高のプレイをしてあげたい。
一度は部屋を出たももの、様子が気になりリアンは再び客間へと戻っていた。ベッドにはその人がいまだに眉間に皺を寄せて眠っている。いつ目を覚ましても良いように、少しの間この部屋にいようと窓際の椅子に腰かけた。
その人はリアンが椅子に座ってから、ほどなくして目を覚ました。絶妙は頃合いで部屋に戻っていたな、と自分のタイミングの良さに思わず口元に笑みが浮かぶ。
ベッドから少し離れた椅子に腰かけたまま、目覚めたその人を眺めた。起き上がろうともがいているが身体に力が入らないのか上手くいかない。
すぐに諦めたのか、少しだけ顔を動かして辺りを見回している。窓際の椅子に腰掛けるリアンにはまだ気づいていない。
リアンは静かに立ち上がり、ベッドの側へと近寄った。
「無理しないで」
声をかけると、身体をびくっとさせて驚きに眼を見開いている。
「あ、あの、お、お、おれ……」
何かを話そうとするが、言葉をつまらせ上手く話せていない。「落ち着いて、大丈夫だから」と言うが慌すぎていてこちらの話を聞かず、謝り続けている。
深呼吸を促すが、今度は息を吸い過ぎたのかむせてしまった。
なんだこの生き物は……可哀そうで可愛い。
窺うように見上げる濡れた黒曜石の瞳がリアンの劣情を酷く刺激する。
虐めたい、お仕置きしたい。
……優しく支配したい。
湧き上がる嗜虐欲と庇護欲に混乱した。これまでも少なくない数のSubとプレイをしてきたが、こんなにDomらしい欲望を相手に抱いたことは未だかつてあっただろうか。
リアンは自分に問いかけるが、そんな記憶はどれだけ探しても思い当たらなかった。
股間に集まった熱に気づかないふりをして、カラフェからグラスに水を入れる。片手で頭を支えてやり、口元にグラスを運ぶとごくごくと音をたてて勢いよく水を飲んだ。
飲み込むたびに上下する喉ぼとけがみだりがましい。こちらも喉をごくりと鳴らした瞬間、盛大にむせて水を噴き出した。
「う゛、うぇっ、……ぅう……」
ぽろぽろと黒い瞳から涙を流す。
あぁ……、なんだってこうこちらの欲望を刺激してくるのか。
堪えきれずにリアンはベッドの上の彼を抱きしめて、頭を優しく撫でた。肩口にあたるその人の息がしっとりと温かい。しばらく抱きしめたまま撫で続ける。
「あ、の……、離して……もらえませんか」
小さくくぐもった声でそう告げるので、「落ち着いた?」と声をかけるが、内心では「自分が落ち着けよ」とつっこみをいれたくなるほどに興奮していた。
どうしても、この人とプレイをしたい。
自分の状況がわからない彼にここは自分の家で、危険はないこととGlareに当てられたので介抱するために連れてきたことを伝える。決して、さらってきたわけでも無理やり連れ込んでいるわけでもないと言い訳のように。
すると、目の前の人は「ぐれあ?」と初めて聞いたことばのように、リアンの言葉を繰り返した。
(Glareを知らない?)
そんなはずはない、だって彼はSubなのだから。
表情をうかがうが、彼の顔には疑問しか浮かんでいない。
(もしかして!)
「倒れる前に受け止めたと思ったのだけど、記憶がない?」
そう聞くと、「倒れる前から記憶喪失でして……」と申し訳なさそうに呟く。
そんなことはあるのか。
本当にGlareがわからないとは……偶然助けた人が記憶喪失だったなんて。
Glareがわからないのであれば、今の自分の状況も理解していないだろう。そう思い、いくつか質問をするが、ダイナミクス全般の知識がほぼ無いようだとわかってリアンは衝撃を受けた。
これは、サブドロップのケアを言い訳にプレイが出来るのではないか。
騙くらかすようで……というか、実際半分は騙しているようなものだが、プレイをしないことには彼自身にも危険な状態が続くのは真実、そう自分に言い聞かせて説明を続ける。だが……、
「ありがとう……ごさいます。た……すけて、くださって。も、もう、失礼します」
と帰ろうとした。
このまま帰せるわけがない。リアンは「そんな! こんな状態で外に出せるわけない!」と自分でもおかしいくらい悲壮な声をあげる。
「私はDomです。貴方が嫌でなければケアをさせてほしい」
もはや懇願に近かった。
だが、目の前の人は何かを悩んでいる。具合が悪化しているのか、苦しそうに肩で息をしていた。あとひと押しが必要だ。
「身を……任せてほしい」
リアンの必死さが伝わったのか、それ以上体調が悪いままでいたくなかったのか、その人がどう考えた結果かはわからなかったが、小さくうなずくと「お願いしま、す」と答えてくれた。
リアンは頭の中でガッツポーズを取った。言質は取った。これでこの人とプレイが出来る。
怖がらせないように嫌な思いをさせないように。
俺に溺れるように。
最高のプレイをしてあげたい。
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