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Episode3 幸也先輩に見てほしい。
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「それで、これからの活動だけど」
さっ、と幸也はスマホを取り出し、あらかじめ開いておいたサイトのページを佑へ見せた。
「高校生文学コンテスト?」
「そう。これに、二人で応募してみるってのはどうだ?」
幸也が提案したのは、とある高校生限定のコンテストだ。それなりに有名で規模も大きく、締め切りがちょうど良い頃にある。
ジャンルも小説やエッセイ、詩・短歌・俳句など豊富で、自分の得意な分野で挑戦しやすい。
「へー、こういうのがあるんだ……。文芸部って、部内で雑誌作ったりするのが主な活動だと思ってたよ」
「あー、そういうところもあるかもな。でもうちは人数が少ないし、おれ自身が、こういう締め切りがあるほうがやり易いっていうか……」
そう言っていて、幸也はだんだん不安になってきた。よく考えてみれば、佑は、迷い混むようにこの部室にやって来て、そのまま流れで入部(実際は部活ではないが)しただけの一年生なのだ。
毎日、幸也とだらだらしたり本を読んだりするのはよくても、こうやって作品を書くのは、興味が無かったり、抵抗があったりするかもしれない。
「………えっとでも、もし興味無かったら──」
「──おもしろそう」
自分だけで参加する、そう言おうとしたとき佑が小さく呟いたので、幸也は「えっ」と声をあげた。
スマホを眺めていた佑は、真っ直ぐ幸也を見つめて笑っていた。
「おもしろそうだね、これ。幸也先輩、おれ、これ出てみたいな」
「そ、そうか」
なんだか、力が抜けたような感覚だった。それと同時に、こんなにも佑がコンテストを快諾したことが意外だった。
一つ上の先輩を驚かせる為に部室の本棚の隙間に隠れたりするような子供っぽい佑。そんな彼がいったいどんな作品を書くのか、全く想像ができず、幸也は戸惑いと同時に少しワクワクしてきたのだった。
♯♯
「ゆーきーやぁっ!! 待てこのヤロー!」
「わあっ! なんだよ、高濱!」
帰りのショートホームルームが終わるや否や教室を出ようとした幸也。そんな彼を、高濱は前回の反省からか荷物を放って捕まえた。英断である。
「どーこ行くんだよっ! 今日こそ猫カフェに付き合えって言ってんだろ!」
「……おまえ猫カフェに行きたいのか? それは初耳なんだが」
「おー、じゃあ行ってくれるか?」
「無理だって言ってんだろ。おれじゃないヤツを誘え」
「みーんな部活なんだよー!」
「それは残念だったな。おれも部活だ」
「ひどい! 部活もどきのくせに!」
「誰がもどきだ。一人で行け。もしくは別の日にしろ」
「きょうはモモちゃん(♀)の初デビューなんだよー!!」
「そうか、なら一人で存分に堪能してこい」
「可愛さを分かち合う相手が欲しいっ!!」
「あー、あれだ、おれは猫アレルギーなんだ。だから別のヤツにしとけ」
「うそこけっ、お前んち猫飼ってるだろ! こないだ遊びに行ったときキャットタワー見たぞ!!」
何でそんなことを知ってるんだ。目ざといな。
いい加減、面倒臭くなってきた幸也は、ダメ元で雑な嘘をつくことにした。
「あっ、校庭に猫がいる」
「えっ、どこどこ!? ねこちゃーん、ねこちゃーん! ねこちゃーん、どこー!?」
「(スタスタスタ………)」
♯♯
コンテストに出すにあたって、幸也は前々から考えていた題材があり、それを使ってエッセイを書くと決めていた。一方、佑の方でも前々から書きたいと思っていた話があるようで、それを使って小説を書くと言っていた。
作品が二人とも完成したとき、自分の話を読んで欲しい、と言ったのは佑からだった。
「おれ、小説なんて書くの、初めてだったからさ。幸也先輩に読んでもらって、変じゃないか見て欲しい」
「で、でも……おれには小説を見る目なんて無い。お前の内面がつまったものなんだし、まずはプロに見てもらった方が」
そう主張する幸也に、佑はニコリと笑った。
「おれの気持ちを、心を込めて書けたと思うからこそ、おれはまず幸也先輩に見てもらいたい。幸也先輩が読んで、どう思ったのか聞きたいんだ。
大丈夫、おれは幸也先輩が思ったことなら、どんな感想だって受け入れるから」
そう言うに押されて、幸也はしぶしぶ了承した。そして自分の原稿と引き換えに、佑の小説を受け取ったのだった。
その原稿を読むことで、幸也の運命が大きく動き出すことも知らずに。
さっ、と幸也はスマホを取り出し、あらかじめ開いておいたサイトのページを佑へ見せた。
「高校生文学コンテスト?」
「そう。これに、二人で応募してみるってのはどうだ?」
幸也が提案したのは、とある高校生限定のコンテストだ。それなりに有名で規模も大きく、締め切りがちょうど良い頃にある。
ジャンルも小説やエッセイ、詩・短歌・俳句など豊富で、自分の得意な分野で挑戦しやすい。
「へー、こういうのがあるんだ……。文芸部って、部内で雑誌作ったりするのが主な活動だと思ってたよ」
「あー、そういうところもあるかもな。でもうちは人数が少ないし、おれ自身が、こういう締め切りがあるほうがやり易いっていうか……」
そう言っていて、幸也はだんだん不安になってきた。よく考えてみれば、佑は、迷い混むようにこの部室にやって来て、そのまま流れで入部(実際は部活ではないが)しただけの一年生なのだ。
毎日、幸也とだらだらしたり本を読んだりするのはよくても、こうやって作品を書くのは、興味が無かったり、抵抗があったりするかもしれない。
「………えっとでも、もし興味無かったら──」
「──おもしろそう」
自分だけで参加する、そう言おうとしたとき佑が小さく呟いたので、幸也は「えっ」と声をあげた。
スマホを眺めていた佑は、真っ直ぐ幸也を見つめて笑っていた。
「おもしろそうだね、これ。幸也先輩、おれ、これ出てみたいな」
「そ、そうか」
なんだか、力が抜けたような感覚だった。それと同時に、こんなにも佑がコンテストを快諾したことが意外だった。
一つ上の先輩を驚かせる為に部室の本棚の隙間に隠れたりするような子供っぽい佑。そんな彼がいったいどんな作品を書くのか、全く想像ができず、幸也は戸惑いと同時に少しワクワクしてきたのだった。
♯♯
「ゆーきーやぁっ!! 待てこのヤロー!」
「わあっ! なんだよ、高濱!」
帰りのショートホームルームが終わるや否や教室を出ようとした幸也。そんな彼を、高濱は前回の反省からか荷物を放って捕まえた。英断である。
「どーこ行くんだよっ! 今日こそ猫カフェに付き合えって言ってんだろ!」
「……おまえ猫カフェに行きたいのか? それは初耳なんだが」
「おー、じゃあ行ってくれるか?」
「無理だって言ってんだろ。おれじゃないヤツを誘え」
「みーんな部活なんだよー!」
「それは残念だったな。おれも部活だ」
「ひどい! 部活もどきのくせに!」
「誰がもどきだ。一人で行け。もしくは別の日にしろ」
「きょうはモモちゃん(♀)の初デビューなんだよー!!」
「そうか、なら一人で存分に堪能してこい」
「可愛さを分かち合う相手が欲しいっ!!」
「あー、あれだ、おれは猫アレルギーなんだ。だから別のヤツにしとけ」
「うそこけっ、お前んち猫飼ってるだろ! こないだ遊びに行ったときキャットタワー見たぞ!!」
何でそんなことを知ってるんだ。目ざといな。
いい加減、面倒臭くなってきた幸也は、ダメ元で雑な嘘をつくことにした。
「あっ、校庭に猫がいる」
「えっ、どこどこ!? ねこちゃーん、ねこちゃーん! ねこちゃーん、どこー!?」
「(スタスタスタ………)」
♯♯
コンテストに出すにあたって、幸也は前々から考えていた題材があり、それを使ってエッセイを書くと決めていた。一方、佑の方でも前々から書きたいと思っていた話があるようで、それを使って小説を書くと言っていた。
作品が二人とも完成したとき、自分の話を読んで欲しい、と言ったのは佑からだった。
「おれ、小説なんて書くの、初めてだったからさ。幸也先輩に読んでもらって、変じゃないか見て欲しい」
「で、でも……おれには小説を見る目なんて無い。お前の内面がつまったものなんだし、まずはプロに見てもらった方が」
そう主張する幸也に、佑はニコリと笑った。
「おれの気持ちを、心を込めて書けたと思うからこそ、おれはまず幸也先輩に見てもらいたい。幸也先輩が読んで、どう思ったのか聞きたいんだ。
大丈夫、おれは幸也先輩が思ったことなら、どんな感想だって受け入れるから」
そう言うに押されて、幸也はしぶしぶ了承した。そして自分の原稿と引き換えに、佑の小説を受け取ったのだった。
その原稿を読むことで、幸也の運命が大きく動き出すことも知らずに。
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……と言う訳で、何を考えたのか陽翔の奴、俺に恋人のフリをしてくれと言う。
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……てなわけで、俺は今日もこいつに振り回されています……。
美形策士×純情平凡♪
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