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4章
第12話 じゃあね
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アステオはもう一度、消えそうな声で「ごめんね」と呟いた。まるで全て自分が悪いと言うように。
「でも、シエル。これだけは」
伝えさせて、とアステオはシエルに駆け寄って囁いた。
「すき………君のことが好きだ、シエル。
僕に二年間、付き合ってくれてありがとう」
低く落ち着いた声だった。離れていく瞬間、頬に唇が掠めた気がした。
はっとして振り向くと、アステオは笑っていた。満たされたように笑い、アステオは離れていく。
もう、手を伸ばしても、届かない。
シエルは消え入りそうな気持ちになった。何がしたかったのか、わからなくなってしまった。
「アステオ………」
「じゃあね」
♯♯
キィ、と玄関の戸が開く音がして、リーナは様子を出てきた。
「……どうしたの? シエル」
そして思わずぎょっとした。影を纏って戸に佇むその姿が、まるで泣いているように見えたからだ。
しかしそれも一瞬だった。
話しかけられたことに気づき、母の方を見たときには、もういつものシエルに戻っていた。
「………別に、なんでも。
ロイドさんいる? 今後のことについて話し合いたくて」
「見てないわねえ………そのうち来るんじゃないかしら」
「そっか」
用のあるときに限っていないからなー、あの人は。そんなふうにぼやくシエルを、リーナは改めてまじまじと見る。
玄関を一目見たとき、一瞬そこに夫が立っているのかと思った。
(………まさかね)
リーナは笑う。
たとえよく似ていても、あの人はもういないのだから。
「でも、シエル。これだけは」
伝えさせて、とアステオはシエルに駆け寄って囁いた。
「すき………君のことが好きだ、シエル。
僕に二年間、付き合ってくれてありがとう」
低く落ち着いた声だった。離れていく瞬間、頬に唇が掠めた気がした。
はっとして振り向くと、アステオは笑っていた。満たされたように笑い、アステオは離れていく。
もう、手を伸ばしても、届かない。
シエルは消え入りそうな気持ちになった。何がしたかったのか、わからなくなってしまった。
「アステオ………」
「じゃあね」
♯♯
キィ、と玄関の戸が開く音がして、リーナは様子を出てきた。
「……どうしたの? シエル」
そして思わずぎょっとした。影を纏って戸に佇むその姿が、まるで泣いているように見えたからだ。
しかしそれも一瞬だった。
話しかけられたことに気づき、母の方を見たときには、もういつものシエルに戻っていた。
「………別に、なんでも。
ロイドさんいる? 今後のことについて話し合いたくて」
「見てないわねえ………そのうち来るんじゃないかしら」
「そっか」
用のあるときに限っていないからなー、あの人は。そんなふうにぼやくシエルを、リーナは改めてまじまじと見る。
玄関を一目見たとき、一瞬そこに夫が立っているのかと思った。
(………まさかね)
リーナは笑う。
たとえよく似ていても、あの人はもういないのだから。
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