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二枚目 中編
しおりを挟むえっと...何時間寝てたんだ?確か午の一刻半くらいに帰ってきそこから意識は途切れた。僕は手探りでポケットから携帯を探し出す。
無機質な液晶版を見ると、亥の十刻じゃないか!?
まずい。と思ったのと同時に僕は部屋を飛び出していた。
当然途中休憩する暇もなく、一気に蠍座の天の川へと飛ばして行く。
これが結構きつい。約1時間半を全力で走るようなもんだから着いた頃には汗だくだった。
水辺に目をやると昨夜のように星屑と戯れる彼女を見つけた。
その唯一無二の美しさにぐっと惹き込まれそうになるのを我慢して僕は彼女を呼ぶ。
「来てくださったんですね!どうぞこちらに!」
彼女は小さくおいでおいでをしている。
しかしどうぞこちらにと言われても、僕は天の川に入る術を知らない。
「僕、そちらには行けません!」
彼女はハッとして、器用にスイッと水辺を滑り僕が居る河原に辿り着いた。
「忘れておりました、すみません」
ペコッと頭を下げる彼女の耳は少し赤くなったように見えた。
彼女、意外とおっちょこちょいなのかもしれない。
彼女は気を利かせて
「とりあえず、座りましょうか。」
と川辺りに並んで座るよう、促してくれた。
静寂が僕らを包み込み、二人だけの空間が出来上がる。
「あの、その」
本題の件について僕が言い渋っていると、
彼女は落ち着きを払うようにフーっと息を吐いて静かに語り始めた。
「昨日の夜、私には相手の素性を知る"能力"があると言いましたよね。」
僕は頷く。そこについて詳しく聞きたい。
「私は、"物体を見る"とその物の素性を知ることができます。人や動物は目を見れば、本質、つまりその人の芯の色などが見えてきます。物体は目がないので難しいですけれども」
彼女の瞳に月の反射光が映えハイライトを作り出していく。影と光の割合は3:7位だろうか。
「私は数秒間貴方の目を見つめ、感じ取りました。芯の色が透明に近い白だったこと。しかし黒い霧が芯をすっぽりと覆っていたこと。」
そこで彼女は目を伏せた。ハイライトが消え、影が戻る。
「私は昨夜、貴方を泣かせてしまいました。
その時の貴方の反応は今まで泣けなかったように見受けられました。つまり、泣けるような境遇に居なかった。」
僕を見る彼女の目は潤んで、縁に付いた雫は光を取り込みガラス玉のように輝いていた。
「貴方ももしかしたら私と同じかもしれない。勝手ながらにそう思いました。ですから私、貴方の記憶と今の現状に興味が湧いたのです。自分から相手を知りたいと思ったことは、初めてでした。」
「...」
「とは言っても貴方が私に話してもいい値があるかを判断してもらいたいのです。だから聞いて貰えますか?私の昔話を」
彼女は能力を持っていて、それにより僕の芯の色を覗いた。その芯の様子が綺麗だったから彼女は安心した。僕は泣いてしまい、その反応で僕が泣けるような境遇に一度も居なかったことを見破った。僕の姿に自分を重ねた。
二人とも涼やかな天の川を眺める。
彼女は僕の返事を待っていた。
答えはもう決まっている
「お願いします。」
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