Vulture's wish Swan's prayer

batter

文字の大きさ
4 / 9

二枚目 中編

しおりを挟む

えっと...何時間寝てたんだ?確か午の一刻半くらいに帰ってきそこから意識は途切れた。僕は手探りでポケットから携帯を探し出す。
無機質な液晶版を見ると、亥の十刻じゃないか!?
まずい。と思ったのと同時に僕は部屋を飛び出していた。

当然途中休憩する暇もなく、一気に蠍座の天の川へと飛ばして行く。
これが結構きつい。約1時間半を全力で走るようなもんだから着いた頃には汗だくだった。

水辺に目をやると昨夜のように星屑と戯れる彼女を見つけた。

その唯一無二の美しさにぐっと惹き込まれそうになるのを我慢して僕は彼女を呼ぶ。

「来てくださったんですね!どうぞこちらに!」

彼女は小さくおいでおいでをしている。
しかしどうぞこちらにと言われても、僕は天の川に入る術を知らない。
「僕、そちらには行けません!」

彼女はハッとして、器用にスイッと水辺を滑り僕が居る河原に辿り着いた。

「忘れておりました、すみません」
ペコッと頭を下げる彼女の耳は少し赤くなったように見えた。

彼女、意外とおっちょこちょいなのかもしれない。

彼女は気を利かせて
「とりあえず、座りましょうか。」
と川辺りに並んで座るよう、促してくれた。

静寂が僕らを包み込み、二人だけの空間が出来上がる。

「あの、その」
本題の件について僕が言い渋っていると、

彼女は落ち着きを払うようにフーっと息を吐いて静かに語り始めた。

「昨日の夜、私には相手の素性を知る"能力"があると言いましたよね。」

僕は頷く。そこについて詳しく聞きたい。

「私は、"物体を見る"とその物の素性を知ることができます。人や動物は目を見れば、本質、つまりその人の芯の色などが見えてきます。物体は目がないので難しいですけれども」

彼女の瞳に月の反射光が映えハイライトを作り出していく。影と光の割合は3:7位だろうか。

「私は数秒間貴方の目を見つめ、感じ取りました。芯の色が透明に近い白だったこと。しかし黒い霧が芯をすっぽりと覆っていたこと。」

そこで彼女は目を伏せた。ハイライトが消え、影が戻る。


「私は昨夜、貴方を泣かせてしまいました。
その時の貴方の反応は今まで泣けなかったように見受けられました。つまり、泣けるような境遇に居なかった。」

僕を見る彼女の目は潤んで、縁に付いた雫は光を取り込みガラス玉のように輝いていた。

「貴方ももしかしたら私と同じかもしれない。勝手ながらにそう思いました。ですから私、貴方の記憶と今の現状に興味が湧いたのです。自分から相手を知りたいと思ったことは、初めてでした。」

「...」

「とは言っても貴方が私に話してもいい値があるかを判断してもらいたいのです。だから聞いて貰えますか?私の昔話を」

彼女は能力を持っていて、それにより僕の芯の色を覗いた。その芯の様子が綺麗だったから彼女は安心した。僕は泣いてしまい、その反応で僕が泣けるような境遇に一度も居なかったことを見破った。僕の姿に自分を重ねた。

二人とも涼やかな天の川を眺める。

彼女は僕の返事を待っていた。
答えはもう決まっている


「お願いします。」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

N -Revolution

フロイライン
ライト文芸
プロレスラーを目指す桐生珀は、何度も入門試験をクリアできず、ひょんな事からニューハーフプロレスの団体への参加を持ちかけられるが…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

美味しいコーヒーの愉しみ方 Acidity and Bitterness

碧井夢夏
ライト文芸
<第五回ライト文芸大賞 最終選考・奨励賞> 住宅街とオフィスビルが共存するとある下町にある定食屋「まなべ」。 看板娘の利津(りつ)は毎日忙しくお店を手伝っている。 最近隣にできたコーヒーショップ「The Coffee Stand Natsu」。 どうやら、店長は有名なクリエイティブ・ディレクターで、脱サラして始めたお店らしく……? 神の舌を持つ定食屋の娘×クリエイティブ界の神と呼ばれた男 2人の出会いはやがて下町を変えていく――? 定食屋とコーヒーショップ、時々美容室、を中心に繰り広げられる出会いと挫折の物語。 過激表現はありませんが、重めの過去が出ることがあります。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...