これは報われない恋だ。

朝陽天満

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415、告知!

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【告知! 街間転移実装!】



 三日後、ADO公式ホームページが大々的に転移告知をした。

 内容は、街の冒険者ギルド間を自由に行き来できるようになったことと、獣人との交流が大幅に変化したこと。

 獣人との交流に関しては、あのクエストに加えて、『獣人を守る会』『獣人さんと交流しようの会』の力も実は大きかったというのは、あとでケインさんに聞いた。

 それはアリッサさんも確認したらしく、ヴィルさんの話によると、『獣人を守る会』には先に運営から直に連絡したとかなんとか。ジャル・ガーさんがずっとその人たちと交流してきたから、人柄は問題ないから、困ったときには『獣人を守る会』メンバーに助けを求めるみたいな取り決めもしたとかどうとか。

 転移に関しては、通行料と使用方法、登録方法などがホームページに載った。

 その三日の間にシステムに魔法陣登録の欄を組み込んで、登録完了した好きな街に跳べるようにしたとか。アリッサさんは不眠不休だったと、自らも無精ひげを生やしたヴィルさんがバイトの時に教えてくれた。確かに一度システムアップデートがあった。その時間はログインできなかったから、異邦人アバターが全員寝ているという非常事態に陥ったんじゃなかろうか。一応アップデートのお知らせも中と外で来ていて、その時間帯はログインできないよとは告知されてたけど。森の中で転がってるアバターもあるかもしれないってことかな。想像すると笑える。けど現地人にとっては笑えない事態なんだろうなあ。

 とにもかくにも、転移魔法陣がとうとう始動した。

 ログインしてみると、街はその話題で沸騰中だった。

 中にはクワットロからわざわざ馬を借りてトレに戻ってきて両方を登録して、朝一で跳んでみた人もいたらしい。

 学校があったので、俺は夕方に行ってみたんだけれど、結構広いはずの転移魔法陣設置室は、人であふれかえっていた。これ、登録するだけでも一苦労だよね。一応出てきた人用に通路は仕切られているけれど、それ以外の所が人でごった返している。その出てきた人用の通路にいる職員さんに料金を払って出てくるっていうシステムらしい。その窓口には魔道具が設置されていて、どこの街から跳んできたのかわかるようになってるとか。アリッサさんが不眠不休なのがよくわかるよ。だって向こうのシステムとこっちのシステムを一手に担ってるんだもん。魔道具職人増やせないのかな。





 俺は転移部屋も覗けずにそっとギルドの一角を離れた。

 実物を見てみたかったけど、今は無理。登録も無理そうな混雑具合。自分で跳んだ方が全然早い。でも登録さえすればウノから辺境まで跳べるっていうのはちょっと魅力的かも。ヴィデロさんと一緒に魔法陣登録に出かけるのもいいよね。俺の魔法陣とギルドの魔法陣を両方使って効率よくデートしないと。



 学校で雄太からは獣人さんたちの話を聞くから、それもついでに報告しようと思って、俺は門への道を歩き始めた。

 そしてふと、背の高い門番さんが新しく立っていることに気付いた俺。あんなにデカい門番さん、いなかったよね。

 と近付いてみると……。

 振り向いた鎧の門番さんは、閉められない面を上げっぱなしで振り向いた。

 そして、長い鼻をヒクっとさせてニヤリと笑う。

 人族用の兜を無理やり犬の頭に被せた様子で、得意げな顔をしたタタンさんがそこにいた。



「あれ……?! 何でタタンさんがここに?!」

「ようマック。中にはガレンもいるぜ。冒険者もいいけどよ、臨時で門番に雇い入れて貰ったんだ。ここの団長は話が分かる人族だな」

「じゃあ、今日高橋が『あいつらはここの常識をすげえスピードで学んで独り立ちした』って言ってたのは、ここに働き始めたってこと……?」

「おう。高橋には世話になった。あいつらにはちゃんと職が決まったって教えてきたんだぜ? 多分マックを驚かせたかったからそれしか言わなかったんじゃねえのか?」



 ニヤニヤとそういう報告をしてきた雄太の顔を思い出して、俺はそうかも、と納得した。

 驚いたよ。就職先がヴィデロさんの職場だなんて。なんか。



「俺のヴィデロさんだから」



 口をとがらせて小さく呟くと、タタンさんはぶはっと吹き出した。

 大笑いをして、「んなのわかってるって! 俺らの中に番の仲を引き裂くような卑劣漢はいねえよ」とバンと俺の背中を叩いた。力が強いから地味に痛い。



「そういやマックが来たらこの鐘を鳴らすんだっけ? お前VIP扱いだな。さすが番」



 そう言って笑いながら、いつも門番さんが鳴らす鐘を思いっきりガンガン鳴らした。



「今日はヴィデロは休みだから、裏でガレンと早速一戦やらかしてるぜ。それにしてもここは面白いな。結構強いのが揃ってる。まあ、ヴィデロに比べたらまだまだだけどな」



 比べちゃだめだよ。ヴィデロさんは限界突破もしてるしかなり凄い魔物とひたすら戦ってるから。それにタタンさんたちもヴィデロさんの腕を上げるのにかなり貢献してたよね。

 そう言うと、タタンさんは「そりゃあよ」と鼻の横を搔いた。



「あいつは……」



 何かを言いかけたところで、後ろのドアが開いてヴィデロさんが顔を出した。

 ちょっと汗をかいてるのは、虎の獣人ガレンさんと剣を交えていたからかな。胸元が大きく開いたシャツが色っぽいよヴィデロさん。

 タタンさんは止めた言葉を飲み込んで、そして、苦笑して出てきたヴィデロさんを捕獲した。

 がしっと肩に腕を回して、「次の休みは俺と勝負しろよ」とヴィデロさんの頭をわしわしと掻き混ぜた。



「おいタタン……! 髪の毛がぐちゃぐちゃになっただろ!」

「お前撫でられて嬉しくねえのかよ」

「タタンのは撫でてるとは言わないだろ」



 じゃれ合ってる二人は、とても気心が知れてる気がして、ちょっとだけ羨ましいななんて思った。でも髪の跳ねたヴィデロさんもまた最高です。

 ようやくタタンさんの腕から逃れたヴィデロさんは、口直し口直しと言いながら俺を抱きしめてきた。美形は頭がくちゃくちゃでも可愛いです最高です。好き。







 そのまま工房までヴィデロさんを拉致した俺は、エロっぽいヴィデロさんに汗を流すか訊いてみた。

 夜ご飯もまだ食べてなそうだから、ヴィデロさんがお風呂で汗を流してる間にご飯でも作ろうかと思って。

 そう言ったら、ヴィデロさんはすごく嬉しそうに「一緒に入るか」と表情を崩した。ああああ、可愛い。







 一緒にお風呂に入った後は、なし崩し的にそのまま隣の寝室で発情した俺たち。

 ご飯は運動のあとでね。

 一日ガレンさんに付き合ったはずのヴィデロさんのスタミナは底なしだった。

 今日も俺の方が音を上げるのが早かったよ。でも最高でした。ヴィデロさんと愛し合えるのほんと幸せ。



 まだけだるさを残したままご飯を作っていると、ピロンと長光さんからチャットメッセージが届いた。

 工房の甲冑台は今、空の状態。長光さんに修理を頼んでいたから。それと、新しい鎧。



『鎧の補修も新しい鎧製作も終わったから、そっちに行ってもいいか?』



 とのこと。

 長光さんのお宅訪問だ。

 ヴィデロさんに教えると、色よい返事を貰えたので、俺は了承のメッセージを送った。







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