これは報われない恋だ。

朝陽天満

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619、レベル上がってた!

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 魔大陸では皆一緒に薬草やその他の素材を採取していたから、皆結構薬草を持っていた。ディスペルポーションで穢れだけを落として、薬草の山を作る。

 他の素材はとりあえずそのままで、ケインさんが描いてくれた魔法陣の上で処理をして、調薬開始。

 作り方は同じだけど、ユイが魔法陣にやたらMPを分けてくれたせいか、滞りなくランクSのハイパーポーションが出来上がった。はいきた。

 効果はHP回復1800前後。



「さっきよりさらに100くらい回復量多いんだけど、ユイどれだけ魔法陣にMP入れたの……」

「上限なさそうだったから、1500くらい入れてみたよ。もっと入れる?」

「マジか……」



 俺がいつも入れる量の倍だった。インベントリから今度は穢れた魔大陸産月光草を取り出して、マジックハイパーポーション作りに取り掛かる。

 これもいつもよりも楽勝で出来上がり、ランクS。師匠、俺、師匠に追い付けましたか。MP回復は1500くらいです。

 出来上がった魔大陸産マジックハイパーポーションを全てユイに渡して、一本飲むように伝えた。

 ユイはありがとうと笑顔でお礼を言うと、一本飲み干した。



「あ、美味しい。すごいね。全回復した」

「それだけのMPを魔法陣につぎ込んでもまだMPが余ってるユイの方がすごいんだけど……」

「でもまだ半分くらいだよ? それを一回で全回復できるポーション作っちゃうマック君がすごいよ。いざというときに大事に使うね。あと、魔大陸に行ったときは素材もたくさん摘んでくるね」



 だからまた作ってねという副音声が付いた気がした。

 皆に魔大陸産ハイパーポーションを薬草分ずつ渡すと、皆、すごくキラキラした目でその瓶の中身を見つめた。



「簡単そうに作っちまったけど」

「だって作り方自体は同じだもん」

「そっちの穢れを落とすやつも」

「こっちは初級調薬だからね」

「っつかこれもったいなくて使えねえ」



 対魔王戦で使えばいいよ。何度も飲んでる隙なんてないだろうから。

 そう言うと、雄太たちは神妙に頷いた。

 調薬終わり、とカーテンを開けて、キッチンに行く。そろそろご飯作りでも始めようかな、と呟くと、雄太が真顔でお呼ばれしてくれと頼んできたので、笑って頷いた。



「今日はすごく助かったから。次もよろしくってことで」

「木が育つまでは付き合うよ。滅茶苦茶気になるし」

「私も。沢山素材摘んでこないとね。高橋が魔物倒してね。私、素材集めるから」

「俺が魔物退治かよ。ガンガン来い」

「じゃあ私も素材採取ね。高橋一人で魔物よろしくね」

「ちょ、え、マジ?」



 笑いながら一人戦闘を決められてしまった雄太は、キッと顔を上げて、「仕方ねえから倒してやるよ!」と男前発言をした。

 ワイワイとテーブルを囲む雄太たちの話を聞きながらキッチンに立っていると、玄関のドアが開いた。



「ただいま」

「おかえりヴィデロさん」



 雄太たちに視線を巡らせて、その後俺を見たヴィデロさんは、フッと顔を和ませた。

 無事を確認してたみたいだった。



「どこもなんともなかったか。高橋たちも、今日はありがとう。大丈夫だったか?」

「もちろん。っつうか収穫ありまくりで、こっちこそお礼言いたいくらいっすよ」

「収穫?」



 ヴィデロさんが首を傾げたので、俺は一番最初に作った魔大陸産ハイパーポーションを取り出して、ヴィデロさんの腰のカバンに入れた。



「今までで一番回復量の高いやつが出来たんだ。普段俺が作るやつの1.5倍の効果」

「……それは、俺よりマックが持ってた方がいいんじゃないか? 何でそこに入れるんだ」

「俺の場合は、HPがそんなに高くないから、今までのやつでも十分回復するんだよ。でもヴィデロさんは絶対もっと体力あるだろうから、絶対ヴィデロさんが持ってた方がいいと思って。諦めて貰っといて」

「諦めろって、マック」

「それと、魔大陸の魔物の素材をたんまりゲットできたから、何かヴィデロさんの装備に出来そうなもの、あとで一緒に検証しよ」



 ね、と見上げると、ヴィデロさんは呆れたような顔をして、溜め息を吐いた。

 薬師と結婚した人だけの特典だから、諦めてね。ガンガン入れるよ。補充する物はないかな。



「そうだ、マックにちょっと頼みたいことがあったんだ」



 ヴィデロさんが思い出したように、カバンから何かを取り出した。



「今日森を回っていて、見たことのないものがあったから、採取してきたんだ。鑑定して貰えないか? もし毒でもあったら駆除する方向で動くから」



 そう言って渡されたのは、茎の部分が一か所ぽこっと丸くなっていて、その上に真っ赤な花が咲いた植物だった。

 ずっとトレで活動してきた門番さんたちも初めて見るものらしく、詳しく鑑定できる人に見てもらうことにしたらしい。

 俺はその変な植物を受け取ると、鑑定眼を使った。



「ええと『球状花グローボフィオレ:ランクC 茎の球状になったところに栄養が詰まっている。肥沃な土壌でのみ育成可。調薬素材。37』だって。毒はないみたいだから大丈夫」

「37?」

「うん。魔力含有量だった気がする……ってあれ、何で俺、カーテン閉めなくても見えてるんだろ」



 手にその球状花を持ったままスキル欄をスクロールすると、『鑑定眼』のレベルがとうとう50になっていた。ってことは、50過ぎたから魔力含有量が見えたってことか。そっか。そっか。



「やった!」



 思わず抱き着いて喜ぶと、破顔したヴィデロさんに持ち上げられた。

 足がプラプラの状態で顔を緩める。



「俺魔力含有量、カーテン閉めなくても見えるようになった!」

「おめでとう。マックはいつも頑張ってるからな」

「まだまだだけど、嬉しいなあ。嬉しいからヴィデロさんを鑑定眼で見ていい?」

「俺を? 好きなだけ見ろよ」



 許可を得たのでヴィデロさんを鑑定眼で見てみると。



「あ、腰のあたりに打ち身あるでしょ。放っておいたの? あと、ちょっと体力減ってるから、ハイパーポーション飲んで飲んで」

「そこまでわかるのか……すごいな、鑑定眼」



 鑑定眼で見ても、ヴィデロさんのHPとかMPは見えなかった。でも『腰部分打撲あり。体力減少中』とかそういうのは出てくるから、だから病気の時にわかるんだとは思う。

 視線を動かして、雄太を鑑定してみると、『2013/304 状態良好』と出てるし、魔物は残りHPとMPが出てくるから、首を傾げる。もしかして、魔素的身体じゃないとHPとか見えないとか。ヴィデロさんの身体は生身だから。

 ってそんなことを考えている場合じゃなかった。

 下ろしてもらうと、俺は早速ヴィデロさんの腹を出させて、赤くなっていたところにハイパーポーションを掛けた。ズボンが少し濡れたけど、すぐに蒸発するのがありがたい。

 皆がヴィデロさんの腹筋をガン見してたけど、カッコいいだろ。自慢の腹筋だよ。俺自身の身体じゃないけど。



 ヴィデロさんが奥で着替えてくる間に、俺はご飯の仕上げをして、雄太たちに手伝ってもらってテーブルを料理で埋めた。さすがに6人だと大量のご飯で楽しい。テーブル一杯に美味しい物を並べるのって嬉しくなるよね。

 皆でワイワイ話しながら食べる夕食は、すごく美味しかった。

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