622 / 830
619、レベル上がってた!
しおりを挟む魔大陸では皆一緒に薬草やその他の素材を採取していたから、皆結構薬草を持っていた。ディスペルポーションで穢れだけを落として、薬草の山を作る。
他の素材はとりあえずそのままで、ケインさんが描いてくれた魔法陣の上で処理をして、調薬開始。
作り方は同じだけど、ユイが魔法陣にやたらMPを分けてくれたせいか、滞りなくランクSのハイパーポーションが出来上がった。はいきた。
効果はHP回復1800前後。
「さっきよりさらに100くらい回復量多いんだけど、ユイどれだけ魔法陣にMP入れたの……」
「上限なさそうだったから、1500くらい入れてみたよ。もっと入れる?」
「マジか……」
俺がいつも入れる量の倍だった。インベントリから今度は穢れた魔大陸産月光草を取り出して、マジックハイパーポーション作りに取り掛かる。
これもいつもよりも楽勝で出来上がり、ランクS。師匠、俺、師匠に追い付けましたか。MP回復は1500くらいです。
出来上がった魔大陸産マジックハイパーポーションを全てユイに渡して、一本飲むように伝えた。
ユイはありがとうと笑顔でお礼を言うと、一本飲み干した。
「あ、美味しい。すごいね。全回復した」
「それだけのMPを魔法陣につぎ込んでもまだMPが余ってるユイの方がすごいんだけど……」
「でもまだ半分くらいだよ? それを一回で全回復できるポーション作っちゃうマック君がすごいよ。いざというときに大事に使うね。あと、魔大陸に行ったときは素材もたくさん摘んでくるね」
だからまた作ってねという副音声が付いた気がした。
皆に魔大陸産ハイパーポーションを薬草分ずつ渡すと、皆、すごくキラキラした目でその瓶の中身を見つめた。
「簡単そうに作っちまったけど」
「だって作り方自体は同じだもん」
「そっちの穢れを落とすやつも」
「こっちは初級調薬だからね」
「っつかこれもったいなくて使えねえ」
対魔王戦で使えばいいよ。何度も飲んでる隙なんてないだろうから。
そう言うと、雄太たちは神妙に頷いた。
調薬終わり、とカーテンを開けて、キッチンに行く。そろそろご飯作りでも始めようかな、と呟くと、雄太が真顔でお呼ばれしてくれと頼んできたので、笑って頷いた。
「今日はすごく助かったから。次もよろしくってことで」
「木が育つまでは付き合うよ。滅茶苦茶気になるし」
「私も。沢山素材摘んでこないとね。高橋が魔物倒してね。私、素材集めるから」
「俺が魔物退治かよ。ガンガン来い」
「じゃあ私も素材採取ね。高橋一人で魔物よろしくね」
「ちょ、え、マジ?」
笑いながら一人戦闘を決められてしまった雄太は、キッと顔を上げて、「仕方ねえから倒してやるよ!」と男前発言をした。
ワイワイとテーブルを囲む雄太たちの話を聞きながらキッチンに立っていると、玄関のドアが開いた。
「ただいま」
「おかえりヴィデロさん」
雄太たちに視線を巡らせて、その後俺を見たヴィデロさんは、フッと顔を和ませた。
無事を確認してたみたいだった。
「どこもなんともなかったか。高橋たちも、今日はありがとう。大丈夫だったか?」
「もちろん。っつうか収穫ありまくりで、こっちこそお礼言いたいくらいっすよ」
「収穫?」
ヴィデロさんが首を傾げたので、俺は一番最初に作った魔大陸産ハイパーポーションを取り出して、ヴィデロさんの腰のカバンに入れた。
「今までで一番回復量の高いやつが出来たんだ。普段俺が作るやつの1.5倍の効果」
「……それは、俺よりマックが持ってた方がいいんじゃないか? 何でそこに入れるんだ」
「俺の場合は、HPがそんなに高くないから、今までのやつでも十分回復するんだよ。でもヴィデロさんは絶対もっと体力あるだろうから、絶対ヴィデロさんが持ってた方がいいと思って。諦めて貰っといて」
「諦めろって、マック」
「それと、魔大陸の魔物の素材をたんまりゲットできたから、何かヴィデロさんの装備に出来そうなもの、あとで一緒に検証しよ」
ね、と見上げると、ヴィデロさんは呆れたような顔をして、溜め息を吐いた。
薬師と結婚した人だけの特典だから、諦めてね。ガンガン入れるよ。補充する物はないかな。
「そうだ、マックにちょっと頼みたいことがあったんだ」
ヴィデロさんが思い出したように、カバンから何かを取り出した。
「今日森を回っていて、見たことのないものがあったから、採取してきたんだ。鑑定して貰えないか? もし毒でもあったら駆除する方向で動くから」
そう言って渡されたのは、茎の部分が一か所ぽこっと丸くなっていて、その上に真っ赤な花が咲いた植物だった。
ずっとトレで活動してきた門番さんたちも初めて見るものらしく、詳しく鑑定できる人に見てもらうことにしたらしい。
俺はその変な植物を受け取ると、鑑定眼を使った。
「ええと『球状花グローボフィオレ:ランクC 茎の球状になったところに栄養が詰まっている。肥沃な土壌でのみ育成可。調薬素材。37』だって。毒はないみたいだから大丈夫」
「37?」
「うん。魔力含有量だった気がする……ってあれ、何で俺、カーテン閉めなくても見えてるんだろ」
手にその球状花を持ったままスキル欄をスクロールすると、『鑑定眼』のレベルがとうとう50になっていた。ってことは、50過ぎたから魔力含有量が見えたってことか。そっか。そっか。
「やった!」
思わず抱き着いて喜ぶと、破顔したヴィデロさんに持ち上げられた。
足がプラプラの状態で顔を緩める。
「俺魔力含有量、カーテン閉めなくても見えるようになった!」
「おめでとう。マックはいつも頑張ってるからな」
「まだまだだけど、嬉しいなあ。嬉しいからヴィデロさんを鑑定眼で見ていい?」
「俺を? 好きなだけ見ろよ」
許可を得たのでヴィデロさんを鑑定眼で見てみると。
「あ、腰のあたりに打ち身あるでしょ。放っておいたの? あと、ちょっと体力減ってるから、ハイパーポーション飲んで飲んで」
「そこまでわかるのか……すごいな、鑑定眼」
鑑定眼で見ても、ヴィデロさんのHPとかMPは見えなかった。でも『腰部分打撲あり。体力減少中』とかそういうのは出てくるから、だから病気の時にわかるんだとは思う。
視線を動かして、雄太を鑑定してみると、『2013/304 状態良好』と出てるし、魔物は残りHPとMPが出てくるから、首を傾げる。もしかして、魔素的身体じゃないとHPとか見えないとか。ヴィデロさんの身体は生身だから。
ってそんなことを考えている場合じゃなかった。
下ろしてもらうと、俺は早速ヴィデロさんの腹を出させて、赤くなっていたところにハイパーポーションを掛けた。ズボンが少し濡れたけど、すぐに蒸発するのがありがたい。
皆がヴィデロさんの腹筋をガン見してたけど、カッコいいだろ。自慢の腹筋だよ。俺自身の身体じゃないけど。
ヴィデロさんが奥で着替えてくる間に、俺はご飯の仕上げをして、雄太たちに手伝ってもらってテーブルを料理で埋めた。さすがに6人だと大量のご飯で楽しい。テーブル一杯に美味しい物を並べるのって嬉しくなるよね。
皆でワイワイ話しながら食べる夕食は、すごく美味しかった。
応援ありがとうございます!
122
お気に入りに追加
8,367
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる