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732、ヴィルさんの手伝い内容
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仕事を全て終えて、言われた通りにヴィルさんの部屋に行くと、ヴィデロさんとヴィルさんが揃っていた。
向かい合ってソファーに座る二人がすごくイケメンで、あの二人の間に俺みたいなちまっとしたのが入って行っていいのかな、なんてふと思う。
ヴィデロさんが自分の横をポンポンとしてくれたので早速そこに座ると、二人が囲んでいたテーブルの上に載ってる物が目に入った。
「手伝ってほしいことというのはこれだ」
そう言ってヴィルさんは、テーブルの上の一枚に手を伸ばして、俺に差し出した。
「これ、観光地ですか?」
「正しくは、観光地の更に奥、と言ったところだな。あと、ここと、ここ」
次々渡される神社の資料に、俺はわけがわからなくて首をひねった。
手元に渡された資料には、有名どころの神社から、パワースポットと呼ばれる場所、そして、見たこともない秘境の様な古ぼけた場所などが載っていた。
「知っての通り、俺たちが今住んでいるここの地は向こうの英雄の間と繋がってる。でも、じゃあなぜここが繋がっているのか。本当にここだけが繋がっているのか、実は他にも縁付いている場所や、それ相応の場所がないのかをちょっと調べていてな。最近は向こうとこちらを繋ぐ研究も少しだけ躓いているし、別の観点から見ようと思ったんだ。で、だ。俺と健吾には、実際の身体に魔力を扱う器官というかそんなものがない。でもな、ヴィデロにはそれがあることが判明した」
「え、じゃあ、俺たちと身体の作りが違うんですか? 何か病気をしたら、もしかして、こっちの病院に通えないとか」
「いや、作り自体は変わりない。が、母の傘下の機関で調べたところ、ヴィデロは問題なく魔力を持っている様なんだ。それは生身で向こうに渡って、向こうで人生の半分近くを過ごした母にも育っていたらしく、母にもわずかながらあるようだ。魔力と言ってもはっきりとどこででも向こうでの様に魔法が使えるとかそういうことではないし、こちらで魔力を調べること自体が異例のことで判断は難しいからはっきりとしたことは言えないんだが」
ヴィルさんはそこで一旦言葉を止めると、更に俺の手に資料を乗せた。
「多分ヴィデロは条件を絞って、しっかりと魔素を使うという意識をすればこちらでも魔法は使えるんじゃないかと思う」
「えええ、かっこいい!」
ヴィルさんの言葉に、俺は思わず歓声を上げた。
だって、こっちでも魔法が使えるとか。すごい。
興奮してひとしきりスゴイスゴイ! と繰り返したあと、ふと気付く。
二人が口元を覆って笑いを堪えていた。
「第一声がかっこいい……ふは、健吾……さすがだな」
何が流石なのかわからなかったけれど、二人に笑われたことで、ようやくテンションが落ち着いた。俺、なんかした? アホみたいに興奮したから笑われたのかな。
「喜んでいるところに水を差すようで悪いが、さっきも言ったように、魔法を使うにはかなり条件が絞られるんだ」
「条件?」
「そう。基本、こちらの大気には魔力なんて物は含まれておらず、窒素、酸素、水素、その他の物質が組み合わさって出来ている。そこに魔素、なんて物はないだろ。科学では解明されないものが、魔素になるから、こちらで魔素を調べるのは骨が折れるんだが、多分向こうで普通に大気中にあると言われている魔素はない。だからこそ魔素だまりから魔物が出てくるなんてことも起きないんだが、特殊な器具を使わないとそういう特殊物質を調べることは出来ないし、その器具は個人が所有できるようなしろものじゃない。でも、案外魔素の存在自体は簡単にわかることが判明した。母とヴィデロにしか出来ないことだけれども」
何を言いたいのかわからずにただじっと話を聞いていると、つまりだ、とヴィルさんは口角を上げた。
「魔素があると思われる場所で、ヴィデロが魔法を使ってみればいい。そこで魔法が使えれば、そこには魔素があり、向こうと繋がる可能性も出てくるわけだ」
「なるほど! でも、それじゃ俺が手伝えることなんて何もないんですけど!」
ようやく理解できたけど、そうなると今度はなんで俺がここに呼ばれたのかわからなくて、更に混乱した。
「ははは、そんなことはないよ、健吾。考えてもみろ。ヴィデロはこちらの地理にはまだ疎い。そこまでの移動方法もわからない。行ってもらいたいが、行く手段がないんだ。だから、二人で婚前旅行はどうかと思ってな。一週間ほど、二人で遺跡巡りに行かないか。俺が気になる遺跡を全てピックアップしてみた資料がここに全て揃ってる」
「あ、それでこれなんですね。でも、ヴィルさんは確かにADO内では探知能力おかしいくらいだったですけど、でも」
「言いたいことはわかる。こっちの生身の俺にそんな能力あるのかってことだろ。ただの勘と言っても差し支えない。でも、昔から俺は勘が良かった。だからこそ、ここでこうしている、と言ったら信じるか?」
「ヴィルさんならありな気がします」
真顔で頷くと、ヴィルさんはまたも声を出して笑った。
ヴィルさんの探知機能、生まれつきだったのか。流石ヴィデロさんのお兄さんだ。
改めて尊敬のまなざしでヴィルさんを見ると、ヴィルさんはまだ肩を震わせていた。
「じゃあ、仕事内容を調整しておく。母にはこれを最優先にしていいと言われているから、ヴィデロもそう思ってくれ。休暇じゃなく、出張扱いにするんだそうだ。旅費が経費で落ちるぞ。母からのプレゼントと思っていてくれ」
ということで、会食が終わり次第、俺とヴィデロさんは国内旅行に出かけることになってしまった。
しかもアリッサさんからのプレゼント婚前旅行。経費で。
なんていうか、俺とヴィデロさんが何もしていないのに、いつの間にやら周りが俺たちの結婚に向けて突き進んでるみたいだった。しかもそれを率先して行ってるのが超が付く優秀なアリッサさんとヴィルさんっていうのが不思議だった。
ちょっとついていくのにやっとだけど、でも、俺がちゃんと歓迎されてるってことが感じられて、嬉しかった。
前にヴィルさんに贈られたスーツに身を固めて、鏡の前でネクタイのチェックをする。
ヴィデロさんは前に着たスーツとはまた別の色のスーツを身に着けていた。う、その色もかっこいい。俺のスーツもヴィデロさんのスーツも吊るしの物じゃないせいか、鏡に映る俺の男振りが一割か二割増してる気がする。と考えてアホみたいな自画自賛に渇いた笑いが出てくる。
ヴィデロさんは何を着てもかっこいいけれど、スーツは白い鎧の次くらいに、俺の中のかっこいい姿のヴィデロさん上位ランキングに君臨している。
思わず鏡越しにチラ見して、ヴィルさんに「健吾、挙動不審で怪しいぞ」と苦笑されてしまった。だってほんとにかっこいい。正面から見ると正気を保っていられる自信がないくらい。
顔はそっくりなのに、二人がスーツを着ると、二人の差がはっきりとわかる。普段着の時はそこまでじゃないんだけど。
「さ、時間だ。行くぞ。母は現地で集合らしい」
ヴィルさんに声を掛けられて、俺はいまいちちゃんと結べていないネクタイを諦めつつ振り返った。
今日は二家族顔合わせの食事会。ヴィルさんは母さんと仲良しだし、ヴィデロさんは父さんと仲良くなったからそこまで心配はしてないけど。
緊張するのは仕方ない。
こっそりと深呼吸すると、気合を入れてピカピカの革靴を履いた。
向かい合ってソファーに座る二人がすごくイケメンで、あの二人の間に俺みたいなちまっとしたのが入って行っていいのかな、なんてふと思う。
ヴィデロさんが自分の横をポンポンとしてくれたので早速そこに座ると、二人が囲んでいたテーブルの上に載ってる物が目に入った。
「手伝ってほしいことというのはこれだ」
そう言ってヴィルさんは、テーブルの上の一枚に手を伸ばして、俺に差し出した。
「これ、観光地ですか?」
「正しくは、観光地の更に奥、と言ったところだな。あと、ここと、ここ」
次々渡される神社の資料に、俺はわけがわからなくて首をひねった。
手元に渡された資料には、有名どころの神社から、パワースポットと呼ばれる場所、そして、見たこともない秘境の様な古ぼけた場所などが載っていた。
「知っての通り、俺たちが今住んでいるここの地は向こうの英雄の間と繋がってる。でも、じゃあなぜここが繋がっているのか。本当にここだけが繋がっているのか、実は他にも縁付いている場所や、それ相応の場所がないのかをちょっと調べていてな。最近は向こうとこちらを繋ぐ研究も少しだけ躓いているし、別の観点から見ようと思ったんだ。で、だ。俺と健吾には、実際の身体に魔力を扱う器官というかそんなものがない。でもな、ヴィデロにはそれがあることが判明した」
「え、じゃあ、俺たちと身体の作りが違うんですか? 何か病気をしたら、もしかして、こっちの病院に通えないとか」
「いや、作り自体は変わりない。が、母の傘下の機関で調べたところ、ヴィデロは問題なく魔力を持っている様なんだ。それは生身で向こうに渡って、向こうで人生の半分近くを過ごした母にも育っていたらしく、母にもわずかながらあるようだ。魔力と言ってもはっきりとどこででも向こうでの様に魔法が使えるとかそういうことではないし、こちらで魔力を調べること自体が異例のことで判断は難しいからはっきりとしたことは言えないんだが」
ヴィルさんはそこで一旦言葉を止めると、更に俺の手に資料を乗せた。
「多分ヴィデロは条件を絞って、しっかりと魔素を使うという意識をすればこちらでも魔法は使えるんじゃないかと思う」
「えええ、かっこいい!」
ヴィルさんの言葉に、俺は思わず歓声を上げた。
だって、こっちでも魔法が使えるとか。すごい。
興奮してひとしきりスゴイスゴイ! と繰り返したあと、ふと気付く。
二人が口元を覆って笑いを堪えていた。
「第一声がかっこいい……ふは、健吾……さすがだな」
何が流石なのかわからなかったけれど、二人に笑われたことで、ようやくテンションが落ち着いた。俺、なんかした? アホみたいに興奮したから笑われたのかな。
「喜んでいるところに水を差すようで悪いが、さっきも言ったように、魔法を使うにはかなり条件が絞られるんだ」
「条件?」
「そう。基本、こちらの大気には魔力なんて物は含まれておらず、窒素、酸素、水素、その他の物質が組み合わさって出来ている。そこに魔素、なんて物はないだろ。科学では解明されないものが、魔素になるから、こちらで魔素を調べるのは骨が折れるんだが、多分向こうで普通に大気中にあると言われている魔素はない。だからこそ魔素だまりから魔物が出てくるなんてことも起きないんだが、特殊な器具を使わないとそういう特殊物質を調べることは出来ないし、その器具は個人が所有できるようなしろものじゃない。でも、案外魔素の存在自体は簡単にわかることが判明した。母とヴィデロにしか出来ないことだけれども」
何を言いたいのかわからずにただじっと話を聞いていると、つまりだ、とヴィルさんは口角を上げた。
「魔素があると思われる場所で、ヴィデロが魔法を使ってみればいい。そこで魔法が使えれば、そこには魔素があり、向こうと繋がる可能性も出てくるわけだ」
「なるほど! でも、それじゃ俺が手伝えることなんて何もないんですけど!」
ようやく理解できたけど、そうなると今度はなんで俺がここに呼ばれたのかわからなくて、更に混乱した。
「ははは、そんなことはないよ、健吾。考えてもみろ。ヴィデロはこちらの地理にはまだ疎い。そこまでの移動方法もわからない。行ってもらいたいが、行く手段がないんだ。だから、二人で婚前旅行はどうかと思ってな。一週間ほど、二人で遺跡巡りに行かないか。俺が気になる遺跡を全てピックアップしてみた資料がここに全て揃ってる」
「あ、それでこれなんですね。でも、ヴィルさんは確かにADO内では探知能力おかしいくらいだったですけど、でも」
「言いたいことはわかる。こっちの生身の俺にそんな能力あるのかってことだろ。ただの勘と言っても差し支えない。でも、昔から俺は勘が良かった。だからこそ、ここでこうしている、と言ったら信じるか?」
「ヴィルさんならありな気がします」
真顔で頷くと、ヴィルさんはまたも声を出して笑った。
ヴィルさんの探知機能、生まれつきだったのか。流石ヴィデロさんのお兄さんだ。
改めて尊敬のまなざしでヴィルさんを見ると、ヴィルさんはまだ肩を震わせていた。
「じゃあ、仕事内容を調整しておく。母にはこれを最優先にしていいと言われているから、ヴィデロもそう思ってくれ。休暇じゃなく、出張扱いにするんだそうだ。旅費が経費で落ちるぞ。母からのプレゼントと思っていてくれ」
ということで、会食が終わり次第、俺とヴィデロさんは国内旅行に出かけることになってしまった。
しかもアリッサさんからのプレゼント婚前旅行。経費で。
なんていうか、俺とヴィデロさんが何もしていないのに、いつの間にやら周りが俺たちの結婚に向けて突き進んでるみたいだった。しかもそれを率先して行ってるのが超が付く優秀なアリッサさんとヴィルさんっていうのが不思議だった。
ちょっとついていくのにやっとだけど、でも、俺がちゃんと歓迎されてるってことが感じられて、嬉しかった。
前にヴィルさんに贈られたスーツに身を固めて、鏡の前でネクタイのチェックをする。
ヴィデロさんは前に着たスーツとはまた別の色のスーツを身に着けていた。う、その色もかっこいい。俺のスーツもヴィデロさんのスーツも吊るしの物じゃないせいか、鏡に映る俺の男振りが一割か二割増してる気がする。と考えてアホみたいな自画自賛に渇いた笑いが出てくる。
ヴィデロさんは何を着てもかっこいいけれど、スーツは白い鎧の次くらいに、俺の中のかっこいい姿のヴィデロさん上位ランキングに君臨している。
思わず鏡越しにチラ見して、ヴィルさんに「健吾、挙動不審で怪しいぞ」と苦笑されてしまった。だってほんとにかっこいい。正面から見ると正気を保っていられる自信がないくらい。
顔はそっくりなのに、二人がスーツを着ると、二人の差がはっきりとわかる。普段着の時はそこまでじゃないんだけど。
「さ、時間だ。行くぞ。母は現地で集合らしい」
ヴィルさんに声を掛けられて、俺はいまいちちゃんと結べていないネクタイを諦めつつ振り返った。
今日は二家族顔合わせの食事会。ヴィルさんは母さんと仲良しだし、ヴィデロさんは父さんと仲良くなったからそこまで心配はしてないけど。
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