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アルバの高等学園編
セドリック君と同じクラスでした
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兄様からもらった属性魔石と竜の鱗を首からさげて制服を身に着ける。
やっぱり少しぶかぶかだけれど、中等学園に入学したときの制服を横に並べると、ちゃんと大きくなっているのがわかって、ちょっと嬉しい。
なにより、あのアプリでも最推しが着ていた、そして兄様が着ていた制服を身に着けることができるというのはもうそれだけで夢が叶ったわけで。
高等学園に向かう馬車の中で、俺はにっこにこで一人座席に座っていた。
中等学園で俺に反発していた生徒たちは、高等学園に上がる前にしっかりと話し合いをして和解(``)した。ので、なんとかぼっちになることなく高等学園に上がった。皆も改革中の王宮内部の大変さをきっとわかってくれたと思う。
中等学園のときから変わりない御者さんに連れられて学園に向かうと、まあまあ馬車止まりは混雑していた。
混まない時間ってどれくらいなんだろう。朝早くかギリギリってところかな。セドリック君は朝の挨拶とかが煩わしくてギリギリに来ているみたいだけれど。
セドリック君は同じクラスになった。ジュール君は隣のクラスだ。
どうやらセドリック君、中等学園高等学園の理事長が同じ人なのをいいことに、中等部のうちに俺を一人にするなと盛大に噛みついたらしい。中等学園最後にクラスメイトがやらかしてから、もうずっとことあるごとに直談判をしたらしく、無事今年はセドリック君と同じクラスになった。お疲れ様。
そんな高等学園の新しいクラスだけれど、担任になった人は、どこかで見たことがある人だった。
よろしく頼むと淡々と話す先生の声で、ハッと思い出す。前に最推し聖地巡礼をした時に兄様の授業を受け持っていた魔法力学の担任の先生だった。淡々と喋るのが特徴で、話を聞いているとまるでアルファ波が出ているのではと思うくらいに安らかな心になり、瞼が重力に負ける先生だ。
リコル先生もとうとう中等学園から高等学園に戻ってきた。
スチルにあった養護室の椅子に座るリコル先生が見れるのかと思うと、それもまた感慨深い。
教室の割り振られた椅子に座りながら、すっかり最近では思い出さなかった『光凛夢幻∞デスティニー』のことを思い出していると、教室の入り口からリコル先生が顔を出した。
そういえば放課後に教室にいるとこうやってリコル先生が顔を出す放課後イベントとかもあったな。今は放課後じゃなくて朝だけれど。
「アルバ君おはよう。ぼーっとしていたけれど、具合でも悪いんですか? もし何かあればすぐに養護室に来て下さいね」
「おはようございますリコル先生。大丈夫です。何やらとても感慨深くて一人感動してました」
だって高等学園に通えるんだよ、と呟くと、それも聞こえてしまったらしく、リコル先生の目がスッと細められた。
そっと頭にリコル先生の手が置かれたと思ったら、優しく撫でられた。
「私も、アルバ君がその制服を着て、この教室のいるのをみると、とても感慨深いですよ」
慈愛の目は、スチルの表情ととても似ていて。けれど今ここにいるリコル先生はあのゲーム内よりもとても落ち着いた雰囲気を醸し出していた。そっか。兄様たちはもう卒業して丸一年経ってるから、あのアプリよりも皆年上なんだ。
なんだか校舎に入ったことで廊下を歩けば攻略対象者にばったり会ったりするイベントとかありそうな気分になっていたけれど、それはもう無理で。嬉しいけど、ちょっと寂しいな、なんて思いながら視線を巡らせたら、制服のセドリック君が教室に入ってくるところが目に入った。
「セドリック君おはようございます」
「おはようアルバ。あ、リコル先生もおはようございます。もしかしてアルバの調子悪かったりします?」
「いいえ、ちょうど通りがかりに見かけたから朝のご挨拶をしていました」
リコル先生のにこやかな笑顔に、セドリック君が大げさに「よかったあ~」と胸をなで下ろしていた。
「ついこの間、アルバの『ラオネン病』が完治したって発表があったじゃないですか。最初快哉を叫んだんですけど、特効薬を使ったとしても、体調はすぐに本調子になるのかなってふと思って心配してたんですよ」
で、どうなんだ? とセドリック君に顔を覗き込まれて、俺は苦笑した。
そこまで心配してくれるのが、本当に嬉しい。持つべき者は友人だよね。こうやって学校で友達とわいわいすることがこんなに楽しいなんて、セドリック君とジュール君がいなかったらわからなかったもん。
「まだ全然本調子じゃないですよ。アルバ君は今自力では魔力をほぼ回復できない状態です。少しずつは回復するのですが、全快にはほど遠い状態です」
「まじか。じゃあ一緒に魔法の授業受けられると思ったけど、受けちゃいけないヤツじゃないですか」
「それよりも、まだアルバ君は魔法の基礎もやっていない状態なんです。なので、しばらくは私とマンツーマンで中等学園初期の魔法から始めることになります。皆と一緒に出来るのは……いつになるかは、ちょっと」
あー、とセドリック君の眉がへにょっと下がった。
やっぱり少しぶかぶかだけれど、中等学園に入学したときの制服を横に並べると、ちゃんと大きくなっているのがわかって、ちょっと嬉しい。
なにより、あのアプリでも最推しが着ていた、そして兄様が着ていた制服を身に着けることができるというのはもうそれだけで夢が叶ったわけで。
高等学園に向かう馬車の中で、俺はにっこにこで一人座席に座っていた。
中等学園で俺に反発していた生徒たちは、高等学園に上がる前にしっかりと話し合いをして和解(``)した。ので、なんとかぼっちになることなく高等学園に上がった。皆も改革中の王宮内部の大変さをきっとわかってくれたと思う。
中等学園のときから変わりない御者さんに連れられて学園に向かうと、まあまあ馬車止まりは混雑していた。
混まない時間ってどれくらいなんだろう。朝早くかギリギリってところかな。セドリック君は朝の挨拶とかが煩わしくてギリギリに来ているみたいだけれど。
セドリック君は同じクラスになった。ジュール君は隣のクラスだ。
どうやらセドリック君、中等学園高等学園の理事長が同じ人なのをいいことに、中等部のうちに俺を一人にするなと盛大に噛みついたらしい。中等学園最後にクラスメイトがやらかしてから、もうずっとことあるごとに直談判をしたらしく、無事今年はセドリック君と同じクラスになった。お疲れ様。
そんな高等学園の新しいクラスだけれど、担任になった人は、どこかで見たことがある人だった。
よろしく頼むと淡々と話す先生の声で、ハッと思い出す。前に最推し聖地巡礼をした時に兄様の授業を受け持っていた魔法力学の担任の先生だった。淡々と喋るのが特徴で、話を聞いているとまるでアルファ波が出ているのではと思うくらいに安らかな心になり、瞼が重力に負ける先生だ。
リコル先生もとうとう中等学園から高等学園に戻ってきた。
スチルにあった養護室の椅子に座るリコル先生が見れるのかと思うと、それもまた感慨深い。
教室の割り振られた椅子に座りながら、すっかり最近では思い出さなかった『光凛夢幻∞デスティニー』のことを思い出していると、教室の入り口からリコル先生が顔を出した。
そういえば放課後に教室にいるとこうやってリコル先生が顔を出す放課後イベントとかもあったな。今は放課後じゃなくて朝だけれど。
「アルバ君おはよう。ぼーっとしていたけれど、具合でも悪いんですか? もし何かあればすぐに養護室に来て下さいね」
「おはようございますリコル先生。大丈夫です。何やらとても感慨深くて一人感動してました」
だって高等学園に通えるんだよ、と呟くと、それも聞こえてしまったらしく、リコル先生の目がスッと細められた。
そっと頭にリコル先生の手が置かれたと思ったら、優しく撫でられた。
「私も、アルバ君がその制服を着て、この教室のいるのをみると、とても感慨深いですよ」
慈愛の目は、スチルの表情ととても似ていて。けれど今ここにいるリコル先生はあのゲーム内よりもとても落ち着いた雰囲気を醸し出していた。そっか。兄様たちはもう卒業して丸一年経ってるから、あのアプリよりも皆年上なんだ。
なんだか校舎に入ったことで廊下を歩けば攻略対象者にばったり会ったりするイベントとかありそうな気分になっていたけれど、それはもう無理で。嬉しいけど、ちょっと寂しいな、なんて思いながら視線を巡らせたら、制服のセドリック君が教室に入ってくるところが目に入った。
「セドリック君おはようございます」
「おはようアルバ。あ、リコル先生もおはようございます。もしかしてアルバの調子悪かったりします?」
「いいえ、ちょうど通りがかりに見かけたから朝のご挨拶をしていました」
リコル先生のにこやかな笑顔に、セドリック君が大げさに「よかったあ~」と胸をなで下ろしていた。
「ついこの間、アルバの『ラオネン病』が完治したって発表があったじゃないですか。最初快哉を叫んだんですけど、特効薬を使ったとしても、体調はすぐに本調子になるのかなってふと思って心配してたんですよ」
で、どうなんだ? とセドリック君に顔を覗き込まれて、俺は苦笑した。
そこまで心配してくれるのが、本当に嬉しい。持つべき者は友人だよね。こうやって学校で友達とわいわいすることがこんなに楽しいなんて、セドリック君とジュール君がいなかったらわからなかったもん。
「まだ全然本調子じゃないですよ。アルバ君は今自力では魔力をほぼ回復できない状態です。少しずつは回復するのですが、全快にはほど遠い状態です」
「まじか。じゃあ一緒に魔法の授業受けられると思ったけど、受けちゃいけないヤツじゃないですか」
「それよりも、まだアルバ君は魔法の基礎もやっていない状態なんです。なので、しばらくは私とマンツーマンで中等学園初期の魔法から始めることになります。皆と一緒に出来るのは……いつになるかは、ちょっと」
あー、とセドリック君の眉がへにょっと下がった。
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