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2章
2-47 忙しい方がいっそ気がまぎれる
しおりを挟む本局に帰り、フィラさんを先に帰してから、事後処理に追われた。
既に何が起こったのかの報告はされていたようで、何人かは本局に出てきていたのである。
この報告、どうもカサブランカ様の従者である、ウィリアムさんとライリーさんがしたようなのだ。精術師という事で、精霊からいち早く情報を貰い、ある程度話を通していてくれたのは、幸いだったが……。
いや、いい。忙しい方がいっそ気がまぎれる。
俺は仕事に勤しみ、ようやっと寮の部屋に帰った後は、泥のように眠るだけだ。
何も考えたくなかった。辛かった。
求められる管理官としての俺は、冷静沈着である俺だ。弱みなど見せてはいけない。
例え、父であるバンクシアさんに「もう少し上手く立ち回れるようにしておけ」と苦言を呈されたとしても。例え、彼からは労いの言葉一つ無かったとしても。
悲しくなんてない。バンクシアさんを父だと思った事は無いのだ。
傷つく事は何もない。大丈夫だ。
苦しいのは、目の前で人を助けられなかったから。俺が不甲斐ないから。
強くならなければならない。
感情を飲み込んで、一生吐き出す事が無いくらい、深く、深くに沈めて。
これでいい。しっかりしろ。
俺は長く息を吐きだすと、目を閉じた。瞼の裏に赤い光景がこびりついているが、それもやがて眠気と共に、溶けていった。
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