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〚プロローグ〛

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 これは、ある一人の少女が異世界へ転生する少し前のお話。




 私は、何故こんな家庭に生まれてきてしまったのだろう…。

 少女は一人、血塗れな自分の手を見てそう思った。家では無視され、ご飯はなく、風呂なんて入った事は無かった。

 学校なんて行った事ない、ただ…遠くから見えた校庭を走る少年達が楽しそうで…羨ましかった。

 でもこの窓から見える景色はテレビと一緒。何も無い、意味がないのだ、見えるだけで触れられない。

 無視はいつも…でも偶に蹴られる。冷蔵庫の中から食べ物を食べると怒られて蹴られるのだ。

 ……無視してくれれば良かったのに。いつものように。

 テレビで、生まれる家庭は選べないけど、生き方は好きなように選べる。そう言ってた。

 私は…何も選べない、だってほら。

 父親が…部屋に入ってくる。気持ちの悪い笑みを浮かべながら。

 「い…嫌、止めて……!」

 セックスレスだったのだろう。女である私は父親と力で勝てない。なので簡単に組み伏せられ、脱がされてゆく。泣き叫んだ、やめてと、でも止まらない。
 この時間は、母親は居ない、そして近所の人は運悪く授業参観で居なかった。私は…泣く事しか出来なかった。
 こんな事されるぐらいならもう死にたいと、そう思っていた。そして…事後…私は壊れていた。

 死にたいと、ただひたすら願う人形へと。死にたい…でも死ぬ勇気がない。そんなぐちゃぐちゃな思いがただひたすら巡っていた。

 気が付けばご飯を食べなかったせいでガリガリにやせ細って、髪はおばけみたいに伸び切って。

 そのおかげか、父親が部屋に来ることはなくなっていた。でも私の死にたがりは止まらなかった。

 ガリガリと自分の手首を伸びた爪で引っ掻いて、そこら辺の紐状の物で首を締めてみたりと。

 そして……夜。

 私は外に出た。初めてなのか、何年ぶり…なのだろうか。とにかく、外の空気は、私の中の悪いものを出してくれるような錯覚がする。

 家の中では死ねない…そう思うようになり、気が付けば外へと出ていた。靴は無い、なので裸足だ。

 歩道を歩いて、なんとなしに山が見える方へ向かっていった。辺りは誰も居ない。あの赤色の機械は何だろう、そんな考えをしながら白いしましまの線を渡っていく。

 車がクラクションを鳴らしながら私のスレスレを通ってゆく。……ああ、これが信号か。テレビで見た事ある…気がする。

 信号を渡り切ると、お腹が鳴った。もう何日も食べてない事に、気がついた。でもどうも出来ない、そのまま進んで行く。

 そして変な道に着いた。これは見た事がない。テレビもっと見ておけば分かったかもしれない。

 長い鉄の鉄骨が二本並んで伸びている。上には電線が通っていて、かなり向こうに光が見える。

 すると、カンカンと音を鳴らし、黄色と黒の棒が降りてきた。これは中に居ちゃいけない…のかな。

 そんな考えをしながらしましまの棒の外に出た。そのまま少しすると、何か乗り物?が走ってきた。

 そして凄いスピードで目の前を通ってゆく、ゴオゴオと風が過ぎてゆき、走り去って行った。

 ………。

 ………これ…なら死ねる…?
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