16 / 79
16-体温
しおりを挟む
「スー…スー…」
ラルクの寝息が首にあたる。剣の稽古が今日は長かったからか、寝るのが早い。
くすぐったい。ラルクの体温が温かい。
僕はこの時間が苦手だ。僕の駄目なところが出そうになる。
僕が前世で死ぬほど欲しくて、死ぬまで手に入らなかったものだから。
心が揺らぎそうになる。気持ちをさらけ出したくなる。
僕ってこんなんでブレるほど弱かったっけな。やっぱりラルクと初めてあった日、失敗した日。
あの日、僕は抱きしめてきたラルクに縋ってしまった。ラルクなら受け入れてくれるかもと、一瞬気持ちを開いてしまったのだ。そこからだ。今みたいに脆くなったのは。
他人に嫌われて傷ついたら嫌だから、ずっと人を避けてきた。何年も。
ずっと、ずっと独りでも平気だったのに。
僕を受け入れてくれる人なんて、いなくても良かったのに。それなのにこの体たらくだ。僕は駄目な人間だ。
僕の気持ちのガードが脆くなったからなのか、ラルクの押しを振り切ることも出来ない。今こうして寝ているのも最初は抵抗した。酷い言葉を何度も投げかたが、結局押し切られこうなっている。
「ンン…」
寝惚けているのか、ただの寝相なのか。ラルクは僕の首筋に頭を擦りつけてくる。
気持ちがソワソワして仕方がない。
ダメだ、違うこと、違うことを考えよう。
自分の事じゃなくて、ラルクのことを。
…ラルクも、ラルクも1人だったのかな。
父から聞いた話だと、ラルクは父の弟と愛人の間に産まれた子どもだと聞いた。
ラルクが小さい頃に母親が死んでしまい、そこからラルクは異母兄弟や実父から酷い扱いを受けていたそうだ。
歳が近いのに華奢な僕より体が小さかったのも、身体の至る所に切り傷…?のような皮膚が裂けた跡があるのもきっとそういう扱いをされてきたのだ。
僕もラルクも似たもの同士なのかもね。
結局愛人の子ども等この家には必要ないと言われ、僕の父がどうせ捨てるならと僕の見張り役として引き取った。
ラルクは今しあわせ、なのかな。
それともここじゃなくて、そのまま捨てられて平民として生きた方がラルクはもっと良い人達に出会って、良い人生を送れていたのだろうか。
平民になれば少なくともこの先ルークの断罪を手伝わされることも無くなるわけだ。
僕のお腹にあるラルクの手に、僕の手を覆い被せてみる。
僕は今一人じゃない…ラルクの手、温かい…。
でもいずれ、この手も後ろにある温かさもぼくのものではなくなる。
ラルクもいずれ僕を断罪する。
その時僕は耐えきれるのだろうか。
孤独になる辛さに、独りの絶望に。
色々考えているうちに僕は意識を手放した。
ラルクの寝息が首にあたる。剣の稽古が今日は長かったからか、寝るのが早い。
くすぐったい。ラルクの体温が温かい。
僕はこの時間が苦手だ。僕の駄目なところが出そうになる。
僕が前世で死ぬほど欲しくて、死ぬまで手に入らなかったものだから。
心が揺らぎそうになる。気持ちをさらけ出したくなる。
僕ってこんなんでブレるほど弱かったっけな。やっぱりラルクと初めてあった日、失敗した日。
あの日、僕は抱きしめてきたラルクに縋ってしまった。ラルクなら受け入れてくれるかもと、一瞬気持ちを開いてしまったのだ。そこからだ。今みたいに脆くなったのは。
他人に嫌われて傷ついたら嫌だから、ずっと人を避けてきた。何年も。
ずっと、ずっと独りでも平気だったのに。
僕を受け入れてくれる人なんて、いなくても良かったのに。それなのにこの体たらくだ。僕は駄目な人間だ。
僕の気持ちのガードが脆くなったからなのか、ラルクの押しを振り切ることも出来ない。今こうして寝ているのも最初は抵抗した。酷い言葉を何度も投げかたが、結局押し切られこうなっている。
「ンン…」
寝惚けているのか、ただの寝相なのか。ラルクは僕の首筋に頭を擦りつけてくる。
気持ちがソワソワして仕方がない。
ダメだ、違うこと、違うことを考えよう。
自分の事じゃなくて、ラルクのことを。
…ラルクも、ラルクも1人だったのかな。
父から聞いた話だと、ラルクは父の弟と愛人の間に産まれた子どもだと聞いた。
ラルクが小さい頃に母親が死んでしまい、そこからラルクは異母兄弟や実父から酷い扱いを受けていたそうだ。
歳が近いのに華奢な僕より体が小さかったのも、身体の至る所に切り傷…?のような皮膚が裂けた跡があるのもきっとそういう扱いをされてきたのだ。
僕もラルクも似たもの同士なのかもね。
結局愛人の子ども等この家には必要ないと言われ、僕の父がどうせ捨てるならと僕の見張り役として引き取った。
ラルクは今しあわせ、なのかな。
それともここじゃなくて、そのまま捨てられて平民として生きた方がラルクはもっと良い人達に出会って、良い人生を送れていたのだろうか。
平民になれば少なくともこの先ルークの断罪を手伝わされることも無くなるわけだ。
僕のお腹にあるラルクの手に、僕の手を覆い被せてみる。
僕は今一人じゃない…ラルクの手、温かい…。
でもいずれ、この手も後ろにある温かさもぼくのものではなくなる。
ラルクもいずれ僕を断罪する。
その時僕は耐えきれるのだろうか。
孤独になる辛さに、独りの絶望に。
色々考えているうちに僕は意識を手放した。
116
あなたにおすすめの小説
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
弟勇者と保護した魔王に狙われているので家出します。
あじ/Jio
BL
父親に殴られた時、俺は前世を思い出した。
だが、前世を思い出したところで、俺が腹違いの弟を嫌うことに変わりはない。
よくある漫画や小説のように、断罪されるのを回避するために、弟と仲良くする気は毛頭なかった。
弟は600年の眠りから醒めた魔王を退治する英雄だ。
そして俺は、そんな弟に嫉妬して何かと邪魔をしようとするモブ悪役。
どうせ互いに相容れない存在だと、大嫌いな弟から離れて辺境の地で過ごしていた幼少期。
俺は眠りから醒めたばかりの魔王を見つけた。
そして時が過ぎた今、なぜか弟と魔王に執着されてケツ穴を狙われている。
◎1話完結型になります
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
人気俳優に拾われてペットにされた件
米山のら
BL
地味で平凡な社畜、オレ――三池豆太郎。
そんなオレを拾ったのは、超絶人気俳優・白瀬洸だった。
「ミケ」って呼ばれて、なぜか猫扱いされて、執着されて。
「ミケにはそろそろ“躾”が必要かな」――洸の優しい笑顔の裏には、底なしの狂気が潜んでいた。
これは、オレが洸の変態的な愛情と執着に、容赦なく絡め取られて、逃げ道を失っていく話。
異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました
ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる