死にたがり(愛されたがり)の悪役令息

たまも。

文字の大きさ
18 / 79

18-悪役復活

しおりを挟む
「婚約を無かったことに…?」


この王子は急に何を言い出すのだろう。


「そ、それはどう言う…」


「婚約を無かったことにして欲しいんだ。2度も言わせるなよ、ルーク」


先程まで何を考えているか分からなかった瞳は偽るのを辞めたのか、冷たい瞳で僕を見ている。


あぁ、そうだ。これだ。僕はずっとこの目に見られてきた。この目に慣れて生きてきた。ラルクがおかしいのだ、アーノルドが普通だ。


「…ふっ…ふふ」


思わず笑いが漏れる。

そう…これだ!僕が求めていたもの…
断罪、救いへの道標…僕がルークである意味だ!!


自分で死ねなくなった今、アーノルドのこの瞳が僕を殺す。アーノルドが僕をこの瞳で射抜く限り、僕は断罪ルートを走っていられる。


「何がおかしいんだい?ルーク。…それに君は覚えていないかもしれないが、僕たちは1度きりしか会ったことがない。

君と親しくなった覚えもない。この婚約は父上たちが勝手に決め…」


「何を仰っているのです?アーノルド王子」


僕はアーノルド王子を真っ直ぐ見る。


「婚約をなかったことになど出来ませんよ王子。確かに私たちの婚約を決めたのは父上たち。

だからと言って王子は自分のお父上が決めたことに逆らうと言うのですか。

この先国王となるお方に、逆らう自由がお在りになると?」


今ここで婚約を解消されれば、ルークが断罪されなくなる。アーノルドにとって婚約者でもない奴を断罪する意味などない、ましてや公開処刑でギロチンなんて尚更だ。今ここでの破棄など絶対にあってはならない。

僕は向かいに座るアーノルド王子の元に向かう。

そのまま目を見開いている王子をソファの背もたれに手を付き王子の耳元に顔を近づける。

「貴方がそんな頭がお花畑で能天気だとは思いませんでしたよ。アーノルド王子」


「…っなに…!?」


にやりと悪役さながらの笑顔で王子に続ける。


「所詮俺らは父上たちの都合のいい玩具。
俺は貴方の子どもを産むだけの雌。貴方はシュバルツ家の子どもを作るだけの雄。

俺たちに選択出来る権利などない。


生まれた時から分かっていたことでしょ?俺たち貴族はそういう運命さだめではありませんか」


「ッ…僕はそんなの望んでいない!そんな運命さだめなど認めない…!」


可哀想に。嫌だよね。親に縛られる人生なんて。
でも安心して、僕と婚約さえしていればアーノルドは救われる。主人公と素敵な恋をして幸せになれる。

だから僕が断罪されるまでは我慢してもらわないと。


「王子が認めなくたって関係ないのですよ。だって貴方自身に価値なんてないんだもの」


僕は顔を青くして固まっているアーノルドの頬に手を添える。


「可哀想なアーノルド」


大丈夫だよ。僕が君を幸せにしてあげる。
だからどうか今は…


「どうせ自由などないなら、今だけでもこの馬鹿みたいな婚約おあそびを楽しみましょう?ね、アーノルド様」
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

弟勇者と保護した魔王に狙われているので家出します。

あじ/Jio
BL
父親に殴られた時、俺は前世を思い出した。 だが、前世を思い出したところで、俺が腹違いの弟を嫌うことに変わりはない。 よくある漫画や小説のように、断罪されるのを回避するために、弟と仲良くする気は毛頭なかった。 弟は600年の眠りから醒めた魔王を退治する英雄だ。 そして俺は、そんな弟に嫉妬して何かと邪魔をしようとするモブ悪役。 どうせ互いに相容れない存在だと、大嫌いな弟から離れて辺境の地で過ごしていた幼少期。 俺は眠りから醒めたばかりの魔王を見つけた。 そして時が過ぎた今、なぜか弟と魔王に執着されてケツ穴を狙われている。 ◎1話完結型になります

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

人気俳優に拾われてペットにされた件

米山のら
BL
地味で平凡な社畜、オレ――三池豆太郎。 そんなオレを拾ったのは、超絶人気俳優・白瀬洸だった。 「ミケ」って呼ばれて、なぜか猫扱いされて、執着されて。 「ミケにはそろそろ“躾”が必要かな」――洸の優しい笑顔の裏には、底なしの狂気が潜んでいた。 これは、オレが洸の変態的な愛情と執着に、容赦なく絡め取られて、逃げ道を失っていく話。

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました

ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載

ヤバい奴に好かれてます。

たいら
BL
主人公の野坂はある日、上司である久保田に呼び出された。その日から久保田による偏狭的な愛を一身に受ける日々が始まった。 他サイトにも掲載しています。

処理中です...