死にたがり(愛されたがり)の悪役令息

たまも。

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フォンルージュ家編

??‐夢3

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くまさん。

ぬいぐるみのくまさん。


今日も怒られちゃった。
僕が出来ない子どもだから、
僕がここにいるから、お母さん大変なんだって。
そうだよね、僕がいるからお仕事頑張らないと、いけないんだもんね。

毎日お仕事で【つかえない部下】と【無能な上司】に挟まれて【仕事が出来るお母さん】は大変なんだって。


せめてなにか出来たらいいなって、料理してみたんだ。いつも作ってくれて、大変そうだから。

でもね、うまく作れなかった。砂糖の量多く入れすぎちゃった。
美味しくないって、食材ムダにしちゃって怒られちゃった。

本当になにも出来ない子って、何もするなって怒られちゃった。


…バカだね、僕。本当にどうしようもないや。


学校でもね、転校したばかりだし、あたらしい友だちできるかなって、ダメだったみたい。

何考えてるかわからないから、気持ち悪いんだって。


席替えしても隣の女の子が最悪~って、言うくらい、僕嫌われてるんだ。


くまさん。

でもね、僕が悪いんだ。

僕わからないんだ。なんでみんなあんなに笑顔なの?どうやってあんなに感情豊かでいられるんだろう。

なんであんなにちがう世界で生きてるように、感じるんだろ。

なんとか皆みたいに笑おうとしてもね、上手くいかないの。

僕下手くそなんだ。皆みたいに出来る子じゃないんだ。


だからね、上手くやれない僕が悪いの。

何考えてるか分からないなんて、くまさんだってこわいよね。ごめんね、でも一人はさみしいから、離してあげられない。

僕にはくまさんしかいないから、ごめんね。



一番まずかったのはお母さんに学校でのこと言っちゃったんだ。

そしたら、お母さん怒って学校に電話かけちゃって、先生や隣の席の子や、僕に気持ち悪いって言ってきた男の子に迷惑かけちゃった。


え?よかったって?なにも良くないよ。くまさん。


お母さんが怒鳴り込みに行ったから、先生困っちゃったし、隣の子もあの男の子も怖がってた。怯えてた。

次の日からね、僕空気になっちゃったんだ。先生も僕のことめんどくさそうに見てた。僕に関わったらろくな目にあわないから、仕方ないね。

お母さんに言った僕が悪いから。


お母さんにはもう言わない。言えない。

仕事の話とか、昔ばあちゃんにいじめられた話しかしないから、たまには僕の話を聞いてほしいって思っただけなんだ。

迷惑かけちゃって、みんなごめんなさい。



だからね、くまさんだけだよ。

僕の話聞いてくれるの。

僕を見てくれるの。



ね、撫でて、くまさん。

僕撫でられるの好きなんだ。


昔お母さんがね、撫でてくれたんだ。
お父さんがまだいた時にね、お母さんがまだ前の仕事してた時ね。

仕事に行くお母さんを見送りに玄関に行ってね、そしたらね、仕事いってくるからいい子で待っててねって、僕の頭を撫でてくれたんだ。


うれしかった。うれしかったんだ。


でもあの後からお父さんとお母さん揉めるようになっちゃって、離婚しちゃった。

離婚してからお母さん優しい時がなくなっちゃった。
お父さんを愛してたみたいで、僕を車に乗せて、冬の道で一緒に心中されかけたこともある。

お母さんに僕がいるから大丈夫って、泣いてるお母さんを抱き締めて止めたけど、僕じゃダメだった。


そこからは今みたいになっちゃった。



ね、くまさん。…くまさん。


愛ってなんだろ。僕わからないや。

でもね、きっと、あの時お母さんに撫でられた時みたいに、きっと、うれしくて、きもちよくて、いいものなんだきっと。



ね、ぼくをあいして。くまさん。


あいして。おねがい。


おねがい。


ぼくをあいして。
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